網羅的なゲノム異常解析と詳細な臨床情報に基づく、ヒトがんの多様な多段階発がん過程の分子基盤の解明とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
201118018A
報告書区分
総括
研究課題名
網羅的なゲノム異常解析と詳細な臨床情報に基づく、ヒトがんの多様な多段階発がん過程の分子基盤の解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
H22-3次がん・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
横田 淳(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 多段階発がん研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 誠司(東京大学医学部)
  • 柴田 龍弘(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所)
  • 稲澤 譲治(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
  • 野口 雅之(筑波大学大学院)
  • 森下 和広(宮崎大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
43,877,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんは細胞内に遺伝子異常が蓄積することにより発生、進展していく病気なので、がんの罹患率・死亡率を減少させるためには、ゲノム異常を中心とした発がんの分子基盤を明らかにし、得られた情報を臨床へ導入していく必要がある。本研究の目的は、多段階発がん過程でがん細胞内に蓄積するゲノム異常を明らかにし、その分子基盤を解明して、個々のがんに最適の治療法を提供する個別化医療・予知医療の実現へ向けて、がんの診断や分子標的療法に有用な新たな情報を集約することである。
研究方法
様々な高精度なゲノム解析技術を駆使して、死亡率の高い肺がん、肝がん、腎臓がん、白血病などのゲノム異常に関して網羅的解析を行い、がんのゲノム異常の全容を明らかにする。更に、整備された臨床検体を用いた解析から臨床病理学的所見との関連性を明らかにし、診断法の開発に結び付ける。
結果と考察
がんの診断法や治療法の改善を目指す上で貴重な情報が様々なゲノム網羅的解析によって得られた。肺腺がんでは、EGFR/KRAS/ALKに変異のないがんの中に極めて予後不良な一群が存在すること、KIF5B-RET融合遺伝子が約2%に存在し、それらの症例はチロシンキナーゼ阻害剤を用いた分子標的治療によって予後の改善が期待できることが明らかになった。腎細胞がんに関しては、次世代シークエンサーを用いてクロマチン制御ならびにヒストン修飾に関する82遺伝子の変異解析を行い、予後や転移と関連する遺伝子変異を見出した。EVI1高発現難治性白血病の骨髄ニッチ接着性に関与するCD52、Integrin a6、GPR56を、細胞周期を停止させるAngiopoietin 1を同定した。眼付属器MALTリンパ腫19例の全エクソン解読を進め、2例以上で変異を認めた遺伝子としてA20/TNFAIP3 に加えてNFkB活性化に関与する遺伝子とエピゲノム関連遺伝子を同定した。独自開発の高精度ゲノムアレイと高スループットmiRNA機能アッセイにより複数のがん抑制型マイクロRNAを同定した。ヒト腫瘍収集保存のモデルシステムとして「つくばヒト組織バイオバンク」を立ち上げた。
結論
肺がん、腎細胞がん、白血病、リンパ腫などの診断法や治療法の改善を目指す上で貴重な情報が様々なゲノム網羅的解析によって得られた。がん個別化医療のバイオマーカーや分子標的治療法のシーズとして期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201118018Z