文献情報
文献番号
201118017A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトがんにおけるエピジェネティックな異常の解明と応用に関する研究
課題番号
H22-3次がん・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
牛島 俊和(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 エピゲノム解析分野)
研究分担者(所属機関)
- 金井 弥栄(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 分子病理分野)
- 鈴木 拓(札幌医科大学 医学部 分子生物学講座)
- 伊東 文生(聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科)
- 山田 泰広(京都大学 iPS細胞研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
53,279,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
DNAメチル化異常は、ヒト発がんに深く関与する。本研究では、DNAメチル化異常誘発の要因や分子機構を明らかにすること、ゲノム網羅的な解析によりDNAメチル化異常を解明、がんの本態を明らかにすること、臨床的に有用な診断方法の開発を行うこと、エピジェネティック治療の基盤を確立することを目的としている。
研究方法
ゲノム領域特異的なDNAメチル化解析は、重亜硫酸処理の後、シークエンス法、methylation-specific PCR (MSP)法、定量的MSP法、及び、pyrosequencing法により解析した。DNAメチル化の網羅的解析では、CpG island array やBeadArrayなどの異なる網羅的解析手法を適切に使い分けた。
結果と考察
本年度は、dextran sodium sulfate投与マウス大腸炎モデルを用いて、慢性炎症によるDNAメチル化異常誘発にリンパ球は不要であり、単球・マクロファージがEffectorとして重要である可能性が高いことを明らかにした。マウス大腸腫瘍細胞からNanog陽性の初期化細胞を樹立した。今後のエピゲノム解析に有用なツールとなることが期待される。大腸前がん病変におけるメチル化異常の網羅的解析を行い、臨床病理像との相関を検証した結果、CpGアイランドメチル化形質 (CIMP) 陽性大腸腺腫に特徴的な形態(ピットパターン)を明らかにした。腎細胞がんの予後診断の指標と成り得るCIMPマーカーとして、18個のCpG部位を同定した。現在、臨床検査としての最適化を進めている。胃洗浄廃液でのDNAメチル化解析による胃がんの存在診断について、前向き多施設臨床試験を進めた(1年目・症例エントリー中)。神経芽細胞腫の予後診断を継続して実施している。DNAメチル化されたプロモーターの下流にマーカー遺伝子を導入した細胞株を樹立することにより、DNA脱メチル化剤のハイスループットスクリーニングを可能にした。
結論
公衆衛生上重要なDNAメチル化異常の誘発機構の解明を進めた。がんでの各種遺伝子のDNAメチル化異常の解明は、本態解明に加えて、がんの検出、病態、及び、予後の診断に有用である。
公開日・更新日
公開日
2015-05-19
更新日
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