疾患モデル動物を用いた環境発がん初期過程の分子機構および感受性要因の解明とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
201118016A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患モデル動物を用いた環境発がん初期過程の分子機構および感受性要因の解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
H22-3次がん・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
筆宝 義隆(国立がん研究センター(研究所及び東病院臨床開発センター) 研究所 発がんシステム研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 益谷 美都子(国立がん研究センター研究所(ゲノム安定性研究分野))
  • 竹下 文隆(国立がん研究センター研究所(分子細胞治療研究分野))
  • 木南 凌(新潟大学教育研究院 医歯学系)
  • 中島 淳(横浜市立大学付属病院 消化器内科)
  • 大島 正伸(金沢大学がん進展制御研究所 腫瘍遺伝学研究分野)
  • 青木 正博(愛知県がんセンター研究所(分子病態学部))
  • 庫本 高志(京都大学大学院医学研究科 付属動物実験施設)
  • 續 輝久(九州大学大学院医学研究院 生体制御学講座基礎放射線医学分野)
  • 山下 克美(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
58,764,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学物質、炎症、酸化ストレス、放射線、高脂肪食などの環境因子により、DNAへの付加体形成および障害応答反応、遺伝子発現変動、アポトーシス、内臓肥満蓄積など様々な変化が引き起こされる。ラット・マウスなどの動物モデルを用いて、これらの現象が発がん初期過程に寄与する分子機構を詳細に解析し、ヒトがんの早期診断やテーラーメイドながん予防・治療の確立に資する知見を集積させることを本研究の目的とする。
研究方法
化学発がんや遺伝子改変動物を用いた消化管の発がんモデルにおいて、種々の環境因子の負荷による発がんの促進、あるいは薬剤投与により発がんやがん進展が抑制される系を用いて、個体レベルで発がん過程において重要な遺伝因子、環境因子、およびその相互作用を明らかにする。また、細胞レベルでの発がん系を開発し、迅速かつ簡便な発がん研究を実現する。こうして得られた知見をもとにヒトでの臨床応用可能性を検討する。
結果と考察
マウス腸管細胞によるin vitro発がん再構成系では、RNAiを用いることで遺伝子改変マウスの作成を介さずにAPCの不活性化に他の遺伝子の抑制や活性化を組み合わせて腫瘍が短期間に作成可能であり、さらに環境要因も組み合わせて検討可能であることを示した。APC変異動物での検討では、マウスにおいてはJNKが複数のシグナル経路を介して腸管腫瘍形成促進することを示し、ラットではDSS誘発大腸炎遷延の機構を明らかにした。ゲノムの不安定性に関与するMSH2やPARP-1がそれぞれ酸化ストレスとエピゲノム修飾の制御を介して発がんに関与することを示した。炎症が特定のmiRNAの抑制を介して胃発がんを促進していることを動物モデルで明らかにした。内蔵脂肪がAMPKの抑制を介して大腸がんを促進する機構の詳細を明らかにすると同時に、それを標的にした予防が可能であることをヒトで示した。p53ノックアウトラットの作成に成功し、発がん研究におけるラットの使用拡大に道を開いた。
結論
遺伝要因と環境要因を組み合わせた発がん過程の解析が容易である動物モデルの利点を最大限に生かして発がんの分子機構を明らかにしつつ、それを補完する細胞レベルでの発がん系も新たに確立し、個体レベルと同様の結果が得られることを確認した。ヒト発がん機構の解析と予防・治療への展開という二方向について着実に成果をあげている。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201118016Z