たばこ規制枠組条約に基づく有害化学物質等の国際標準化試験法及び受動喫煙対策を主軸とした革新的ながん予防に関する研究

文献情報

文献番号
201118005A
報告書区分
総括
研究課題名
たばこ規制枠組条約に基づく有害化学物質等の国際標準化試験法及び受動喫煙対策を主軸とした革新的ながん予防に関する研究
課題番号
H21-3次がん・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部 衛生環境管理研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 治(麻布大学 生命・ 環境科学部)
  • 後藤 純雄(麻布大学 生命・ 環境科学部)
  • 鈴木 元(国際医療福祉大学 クリニック)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 緒方 裕光(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター )
  • 内山 茂久(国立保健医療科学院 生活環境研究部 衛生環境管理研究分野)
  • 井埜 利博(群馬パース大学 保健科学部)
  • 三觜 雄(札幌市衛生研究所)
  • 竹田 真由(天理医療大学 臨床検査学科)
  • 大庭 志野(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,喫煙者及び受動喫煙者へのたばこ煙による影響を評価するため,生体試料中に含有されるたばこ由来の曝露マーカー及び影響マーカーの測定法を開発するとともに,たばこ煙中の粒子・ガスに含有される有害化学物質の測定法開発及び定量を行う。また,世界保健機関(WHO)のたばこ研究室ネットワーク(TobLabNet)に参加することにより学術的な国際協力に貢献するのと同時に,国内のたばこ対策・がん予防に資する有益な科学的情報の提供可能な総合的たばこ研究の推進を行なうことを目的とした。
研究方法
喫煙者及び禁煙外来患者の尿中バイオマーカー測定を行った。また,たばこ主流煙中カルボニル類の測定法を開発した。さらに近年,有害性が懸念されているメンソールたばこや社会問題となった個人輸入たばこのタール,ニコチン,一酸化炭素と変異原性など各種成分測定を行った。
結果と考察
固体捕集法を用いた新しいカルボニル化合物の測定法を開発し,今年度5月にウクライナで開催された第5回WHO TobLabNet会議において報告したことろ,TobLabNetの手法として検討されることになった。メンソールたばこ11銘柄の主流煙中タール,ニコチン,一酸化炭素量は,これまでに報告した国産たばこ銘柄と同様の傾向が得られた。また,個人輸入たばこ6銘柄は,同じ銘柄であっても販売国によって化学物質の含有量が変化したことから,化学物質の曝露量に注意する必要があった。さらに国産たばこ10銘柄の主流煙に含まれる重金属11成分を測定したところ,Cdをはじめとする6成分が検出された。喫煙者特有のバイオマーカーである尿中ニコチン,コチニン,3-ハイドロキシコチニンとそれらのグルクロン酸抱合体の測定法を開発し,喫煙者及び禁煙外来患者へ適用した。さらに尿中変異原性,尿中重金属についても測定を行った。最後に地域の受動喫煙の実態調査,喫煙環境の評価も行い喫煙について総合的に研究を推進した。今後,これらの結果をもとに喫煙のよる健康影響について広く伝える必要があると考えている。
結論
たばこ主流煙中のカルボニル類の簡便な測定法を開発し,WHOの標準法として評価が始まった。また,メンソールたばこ,個人輸入たばこなどの有害性や喫煙者の生体影響,受動喫煙者の生活環境について評価を行った。今後は,これまでの成果に基づくたばこ対策と更なる調査研究を同時に進めていく必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

文献情報

文献番号
201118005B
報告書区分
総合
研究課題名
たばこ規制枠組条約に基づく有害化学物質等の国際標準化試験法及び受動喫煙対策を主軸とした革新的ながん予防に関する研究
課題番号
H21-3次がん・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部 衛生環境管理研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 治(麻布大学 生命・環境科学部)
  • 後藤 純雄(麻布大学 生命・環境科学部)
  • 鈴木 元(国際医療福祉大学 クリニック)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 緒方 裕光(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
  • 内山 茂久(国立保健医療科学院 生活環境研究部 衛生環境管理研究分野)
  • 井埜 利博(群馬パース大学 保健科学部)
  • 三觜 雄(札幌市衛生研究所)
  • 竹田 真由(天理医療大学 臨床検査学科)
  • 大庭 志野(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,喫煙者及び受動喫煙者へのたばこ煙による影響を評価するため,生体試料中に含有されるたばこ由来の曝露マーカー及び影響マーカーの測定法を開発するとともに,たばこ煙中の粒子・ガスに含有される有害化学物質の測定法開発及び定量を行う。また,世界保健機関(WHO)のたばこ研究室ネットワーク(TobLabNet)に参加することにより学術的な国際協力に貢献するのと同時に,国内のたばこ対策・がん予防に資する有益な科学的情報の提供可能な総合的たばこ研究の推進を行なうことを目的とした。
研究方法
1. たばこに関連する有害化学物質の測定,2. バイオマーカーによる喫煙の曝露・影響評価,3. たばこ類似製品の評価,4. 地域における効果的な普及啓発の検討(受動喫煙,がん予防に着目)の4項目について化学分析を中心に研究を行った。
結果と考察
本研究班は,3年間を通してTobLabNetに参加し,たばこ製品の有害化学物質について測定を行い,FCTC第9,10条に関する研究を推進してきた。特に,新たなカルボニル化合物の分析法としてCX-DNPH法を開発し,TobLabNetの手法として検討されている。また,それ以外にもメンソールたばこ11銘柄,社会問題となった電子たばこ,個人輸入たばこ,そして薬用吸煙剤であるネオシーダーの有害化学物質の分析も行った。さらに,ニコチン代謝物等の測定法の確立を行なった。加えて,受動喫煙評価の一環として,「分煙施設の室内環境と受動喫煙状況」「受動喫煙が両親の喫煙状況に与える影響」についての検討も行った。全研究から,TobLabNetでの活動は高く評価され,ホルムアルデヒド等の測定においてはリーダーラボとしての活動が求められた。たばこ主流煙には,各種有害化学物質が発生することが確認され,その曝露量は,喫煙行動,たばこ銘柄によって変動することが分かった。
結論
FCTC第9,10条に基づいたたばこ製品に関連する有害化学物質測定は,これまで規制の対象となっていなかった国内で流通するたばこ製品に発がん性物質や毒性のある化学物質が含有されていることを明らかにした。今後,たばこ外箱表示に有害化学物質量を表示義務化などの対応が必要であると考えられた。このようにFCTC第9,10条に基づいたたばこ対策研究の更なる推進が喫煙者の喫煙率低下及び国民のがん予防につがると考えている。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201118005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまでのたばこ主流煙中のカルボニル化合物測定は,DNPH溶液を用いた液体捕集法であり,操作が煩雑であるばかりでなく,低濃度の測定は困難であった。そこで,カルボニル化合物をカーボンモレキュラーシーブを充填したカートリッジで捕集し,DNPHで誘導体化する方法を開発した。また,喫煙の生体指標となる尿中ニコチン,コチニン,3-ハイドロキシコチニンとそのグルクロン酸抱合体の固相抽出とGC/MSを組合せたニコチン代謝物の測定法を開発した。
臨床的観点からの成果
本研究は,臨床研究を含まないが,たばこ煙の代謝物であるニコチン,コチニン,3-ハイドロキシコチニンとこれら化合物のグルクロン酸抱合体,酸化ストレスマーカーである8-ハイドロキシデオキシグアノシンの測定法を確立している。今後,これらバイオマーカーがたばこ煙の曝露指標として臨床研究に適用されることが可能となった。
ガイドライン等の開発
たばこ規制枠組条約の第9,10条のガイドライン作成のため組織されたワーキンググループの「たばこ研究室ネットワーク」は,たばこ煙の有害成分を規制するためにたばこ煙成分の分析法の開発を行っている。本研究班で開発したガス成分の分析法が,今後,WHOの標準分析法として検討されることとなった(第5回 WHOたばこ研究室ネットワーク会議,ウクライナ,2011年5月)。
その他行政的観点からの成果
FCTC第9,10条(たばこ製品の有害化学物質の規制等)に基づいたWHOとの連携,国産たばこの有害化学物質の測定法の確立と運用を推進した。これにより本研究成果が,今後,我が国においてもたばこ製品の規制等を進めるための基礎資料として寄与する。
その他のインパクト
現在も販売されている国産たばこ銘柄の主流煙とたばこ葉に含まれる有害化学物質を測定した。これを学術論文,ホームページ,講演会等で公開することによってたばこ製品の有害性が広く伝えられた。これにより国民のがん予防につながると考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
111件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shigehisa Uchiyama,Yohei Inaba,Naoki Kunugita
Ozone removal in the collection of carbonyl compounds in air
Journal of Chromatography A , 1229 , 293-297  (2012)
原著論文2
Shigehisa Uchiyama,Yohei Inaba,Naoki Kunugita
Determination of acrolein and other carbonyls in cigarette smoke using coupled silica cartridges imprernated with hydroquinone and 2,4-dinitrophenylhydrazine
Journal of Chromatography A , 1217 , 4383-4388  (2010)
原著論文3
太田 和司,内山 茂久,稲葉 洋平,他
ハイドロキノンと2,4-ジニトロフェニルヒドラジンを含浸させた二連シリカカートリッジを用いる電子タバコから発生するカルボニル化合物の分析
分析化学 , 60 (10) , 791-797  (2011)
原著論文4
Osamu Endo,Mariko Matsumoto,Yohei Inaba,et al.
Nicotine,Tar,and Mutagenicity of Mainstream Smoke Generated by Machine Smoking with International Organization for Standardization and Health Canada Intense Regimens of Major Japanese Cigarette Brands
Journal of Health Science , 55 (3) , 421-427  (2009)
原著論文5
Shigehisa Uchiyama,Suekazu Naito,Mariko Matsumoto,et al.
Improved Measurement of Ozone and Carbonyls Using a Dual-Bed Sampling Cartridge Containingtrans-1,2-Bis(2-pyridyl)ethulene and 2,4-Dinitrophenylhydrazine-Impregnated Silica
ANALYTICAL CHEMISTRY , 81 (15) , 6552-6557  (2009)
原著論文6
Shigehisa Uchiyama,Yohei Inaba,Naoki Kunugita
A diffusive sampling device for simultaneous determination of ozone and carbonyls
Analytica Chimica Acta , 691 , 119-124  (2011)
原著論文7
後藤 純雄,遠藤 治,内山 茂久,他
たばこ煙中の成分測定
臨床化学 , 39 (2) , 123-129  (2010)
原著論文8
稲葉 洋平,鈴木 元,欅田 尚樹
たばこ煙の暴露評価法
臨床化学 , 39 (2) , 117-122  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201118005Z