ヒトT細胞白血病ウイルス1型関連疾患における感受性遺伝子多型の同定と発症危険群へのアプローチ

文献情報

文献番号
201118004A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトT細胞白血病ウイルス1型関連疾患における感受性遺伝子多型の同定と発症危険群へのアプローチ
課題番号
H21-3次がん・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 雅雄(京都大学 ウイルス研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 文彦(京都大学医学研究科)
  • 齊藤 峰輝(琉球大学大学院医学研究科)
  • 野坂 生郷(熊本大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
26,640,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人T細胞白血病(ATL)、HTLV-1関連脊髄症(HAM)発症には遺伝的素因の関与が示唆されているが、詳細は明らかでない。本研究では感受性遺伝子多型を解析し発症危険群の同定を目的としている。
研究方法
1) ATL、HAM感受性SNPの探索
ATL、HAM患者、無症候性キャリアの検体を対象とし、イルミナ社のHuman610k-Quad BeadChipを用いて全ゲノム関連解析(GWAS)を行った。
2) HTLV-1プロウイルス量関連SNPの探索
プロウイルス量情報とGWAS結果が揃っている検体に絞り、プロウイルス量と関連する遺伝子座の有無を調べた。
結果と考察
GWASを用いて、ATL検体、HAM検体、無症候性感染者における遺伝子多型に関し、1次スクリーニング(熊本県、鹿児島県由来検体)と2次スクリーニング(長崎県、鹿児島県、東京都、沖縄県由来検体)を実施した。ATL患者415検体、HAM患者429検体と無症候性HTLV-1感染者308検体を用いて、アリル頻度、ジェノタイプ分布を統計解析し、ATLに関しては、p<1x10-5のSNPが4個、HAMに関してはp<1x10-5のSNPが15個得られた。今年度は、患者を病態で分類した複数のサブグループ間での比較解析に着手した。プロウイルス量と関連するローカスの有無を調べた結果、有意差を示すローカスが1番染色体に確認された (p=2.68x10-8)。
 ATLやHAMの発症に関わる遺伝子群の同定は、これらの早期治療を可能にし、治療成績を向上させると期待される。今年度の解析により、HTLV-1プロウイルス量と相関するSNPの候補が検出された。プロウイルス量はATL発症の危険因子であり、当該SNPの解析はATL発症の高危険群同定法に繋がるのみならず、生体内におけるHTLV-1感染動態の分子基盤の理解にも貢献すると予想される。
結論
ATL患者415検体、HAM患者429検体と無症候性HTLV-1感染者308検体を用い、ATLに関しては、p<1x10-5のSNPを4個、HAMに関してはp<1x10-5のSNPを15個同定した。さらにプロウイルス量と関連するローカスが1番染色体に確認された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

文献情報

文献番号
201118004B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒトT細胞白血病ウイルス1型関連疾患における感受性遺伝子多型の同定と発症危険群へのアプローチ
課題番号
H21-3次がん・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 雅雄(京都大学 ウイルス研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 文彦(京都大学医学研究科)
  • 齊藤 峰輝(琉球大学大学院医学研究科)
  • 野坂 生郷(熊本大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-1感染により成人T細胞白血病(ATL)、HTLV-1関連脊髄症(HAM)が惹起されるが、その発症には遺伝的背景が深く関連している。本研究では、全ゲノムを対象とした大規模な網羅的ジェノタイピングを多数の症例を用いて遂行し、ATLおよびHAM感受性SNPの同定を試みる。さらには各々の発症危険群の特定、発症予測・予防法確立を目指す。
研究方法
1) 臨床検体の収集、管理
ATL患者、HAM患者、無症候性感染者の検体を収集した。
2) 全ゲノム関連解析(GWAS)
イルミナ社のHuman610k-Quad BeadChipを用いてGWASを行い、疾患感受性多型の特定を試みた。
3) 各疾患における病態関連SNPの探索
患者と感染者の全体比較のみならず、患者を病態で分類した複数のサブグループ間でのQTL解析を行った。
結果と考察
1) 検体の収集、管理
1次スクリーニング:ATL患者258検体、無症候性感染者182検体(熊本県)、HAM患者296検体、無症候性感染者100検体(鹿児島県)
2次スクリーニング:ATL患者200検体、HAM患者13検体(長崎県)、HAM患者82検体(鹿児島県)、HAM患者61検体、無症候性感染者42検体(東京都)、HAM患者8検体(沖縄県)
2) 全ゲノム関連解析(GWAS)
最終的にATL患者415検体、HAM患者429検体と無症候性感染者308検体を用いて、患者と対照群の間で、アリル頻度、ジェノタイプ分布を統計解析した。その結果、ATLに関しては、p<1x10-5のSNPが4個、HAMに関してはp<1x10-5のSNPが15個得られた。
3)プロウイルス量関連SNPの検出
プロウイルス量と関連する多型を調べ、1番染色体に確認された(p=2.68x10-8)。
 ATLおよびHAMの発症に関わる多型の同定により、発症危険群の同定を可能にし、早期発見と治療成績の向上が期待される。本課題のような多数例のATL、HAM、感染者を対象とした網羅的解析は報告が無く、新規の疾患感受性多型も今回の解析により同定され、臨床への応用が期待される。
結論
本研究班による大規模なGWAS解析により、ATLに関しては、p<1x10-5のSNPが4個、HAMに関してはp<1x10-5のSNPが15個得られた。さらにHTLV-1高プロウイルス量に有意に相関する遺伝子座を1番染色体に見出した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201118004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本課題では、現在までに報告された中で、最も多数例のATL、HAMを対象としており、新規の疾患感受性多型も同定された。さらにATL発症の危険因子とされる高プロウイルス量に関連する遺伝子領域も同定した。本研究にて得られた結果は、未だ明らかになっていないATLおよびHAMの分子機序の理解に繋がると期待される。加えて、宿主における感染動態や感染制御の分子基盤における遺伝子多型の役割に関して、遺伝学的見地から新たな関連遺伝子を提示することが可能であると考えられる。
臨床的観点からの成果
現在約108万人のHTLV-1感染者が本邦に存在する。その5%がATLを発症し、極めて予後不良である。HAMは慢性進行性の経過をたどり難治性である。これらの治療法開発が必要であることは言うまでもないが、全てのHTLV-1感染者は発症のリスクのため多大な精神的負担を余儀なくされており、発症および感染予防法の早期確立が望まれている。本課題は危険因子同定と早期発見・治療効果改善に貢献するものであり、更なる解析は、HTLV-1関連疾患患者のみならず、無症候性感染者に希望をもたらすと考えられる。
ガイドライン等の開発
今回の解析結果を基盤として、さらに精度の高い発症危険群の特定法や発症予測法の確立が期待される。将来、ガイドラインの開発には貢献できると期待される。
その他行政的観点からの成果
特記事項無し
その他のインパクト
特記事項無し

発表件数

原著論文(和文)
43件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Terao. C., Yamada, R., Ohmura, K. et al.
The human AIRE gene at chromosome 21q22 is a genetic determinant for the predisposition to rheumatoid arthritis in Japanese population.
Hum. Mol. Genet.  (2011)
原著論文2
Terao, C., Ohmura, K., Katayama, M. et al.
Myelin basic protein as a novel genetic risk factor in rheumatoid arthritis - A genome-wide study combined with immunological analyses.
PLoS One.  (2011)
原著論文3
Saito M.
Immunogenetics and the pathological mechanisms of human T-cell leukemia virus type 1- (HTLV-1)-associated myelopathy/tropical spastic paraparesis (HAM/TSP).
Interdisciplinary Perspectives on Infectious Diseases.  (2010)
原著論文4
Matsuoka M
HTLV-1 bZIP factor gene' its role in hTLV-1 pathogenesis
Molecular Aspects of Medicine  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2016-06-07

収支報告書

文献番号
201118004Z