小児慢性特定疾患のキャリーオーバー患者の実態とニーズに関する研究

文献情報

文献番号
201117022A
報告書区分
総括
研究課題名
小児慢性特定疾患のキャリーオーバー患者の実態とニーズに関する研究
課題番号
H23-次世代・指定-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院医学工学総合研究部社会医学講座)
  • 谷原 真一(福岡大学医学部衛生学教室)
  • 西連地 利己(獨協医科大学・公衆衛生学)
  • 上原 里程(自治医科大学地域医療学センター公衆衛生部門)
  • 野田 龍也(浜松医科大学医学部健康社会医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国における小児慢性特定疾患のキャリーオーバー患者の実態とニーズを明らかにし、今後の保健医療福祉施策の検討に資することを目的とした。
研究方法
(1) キャリーオーバー患者家族調査、(2) 49歳以下の国保被保険者における小児慢性特定疾患受診状況分析、(3) キャリーオーバー患者の医療費負担把握のためのレセプト情報の活用と小児慢性特定疾患助成の対象外となる直前の医療費の状況、(4) 患者調査個票によるキャリーオーバー患者数推計、(5) 年齢階級別受給者数からの外挿によるキャリーオーバー患者数の推計の各分担研究を実施した。
結果と考察
研究の結果、キャリーオーバー患者の医療費自己負担(年額)は、中央値3万6千円であったが、20万円以上の患者が10.5%に見られた。また医療費自己負担(年額)が20万円以上で、所得(等価所得、年額)が150~250万円の患者では経済的に苦しいとの回答が84.2%に達した。国保レセプトによる受診者一人あたり点数では、血液及び免疫、循環器系の疾患、尿路生殖器系疾患で平均値が高額であった。小児慢性特定疾患受給者の年齢別医療費の回帰分析によると、その他の酵素欠損で年齢が上がるにつれて医療費が高くなる一方で、先天性代謝異常、膠原病は低くなる傾向が見られた。キャリーオーバー患者のストレスや悩みの原因として自分の仕事に関するものが47.5%と最も多かった。また、退職・転職した患者において、雇用先に必要であった配慮として、休暇・短時間勤務、職務内容、医療、職場内における相談支援体制などの意見が多かった。
結論
以上の結果から、疾患名を指定したキャリーオーバー患者全てへの一律の医療費助成の必要性は必ずしも高くないが、高額療養費制度等の充実・制度の啓発、また就職及びその後の職場での支援の強化が重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2012-12-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201117022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
小児慢性特定疾患に関する研究としては、これまで疾患毎の研究や、20歳未満の患者に関する治療研究事業の給付データによる研究、また20歳以降の患者について特定の地域において行われた研究等がある。一方で、この研究は、20歳以上のキャリーオーバー患者についての、傷病群別の状況などを含めて全国的な実態とニーズを初めて明らかにした研究である。また、複数の方法により全国のキャリーオーバー患者数を推計するという成果も得られた。
臨床的観点からの成果
小児慢性特定疾患のキャリーオーバー患者について、傷病群別に日常生活でのストレスや悩みの種類別の状況を明らかにし、QOL向上のための医療及びその他の支援の焦点を明らかにした。また、患者数、医療費を始めとして、通院している診療科、受診頻度、通院方法の実態を明らかにし、今後の医療体制の検討のための基礎資料となる成果を得ることができた。
ガイドライン等の開発
厚生労働省による特定疾患患者への施策の検討の一環としての、小児慢性特定疾患のキャリーオーバー患者への施策を検討するための中核的な基礎資料となる成果を得ることができた。今後の施策の立案等において活用されることが期待できる。なお、本研究は、単年度の研究であり、患者の実態とニーズを明らかにすることを目的として実施したものであり、ガイドラインの開発を目指したものではない。
その他行政的観点からの成果
傷病群別の医療費自己負担金額の実態や、また患者の経済的な苦しさについて分析したところ、医療費助成の必要性は傷病名だけで決まるのではなくその患者の所得やその他の状況によっても大きく左右されることが明らかとなり、医療費助成の制度設計上の参考となる知見が得られた。また、現在、検討が進められている、高額療養費制度等の充実の妥当性が示された。さらに、就労や職場での支援等の、医療以外の側面からの支援の重要性が明らかとなった。
その他のインパクト
この研究の成果は、直接的に患者の療養方法や医療機関での治療方針等にインパクトを与えるというよりは、主として施策の企画立案を通じてインパクトを与える性格の研究である。一方で、キャリーオーバー患者の勤務する職場の関係者等、患者の周辺の人々が研究成果を参考にして頂くことによって、患者の状況改善に寄与する側面もある。そこで、この研究班の成果は、研究班ホームページ(http://carry.umin.jp)や学会発表等により広く社会に公表を行っている。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
尾島俊之、他.小児慢性特定疾患キャリーオーバー患者数の検討.日本公衆衛生学会,2011. 上原里程、他.小児慢性特定疾患キャリーオーバー患者の就労の現状と課題.日本公衆衛生学会、2012.
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shinichi Tanihara
The proportion of uncoded diagnoses in computerized health insurance claims in Japan in May 2010 according to ICD-10 disease categories
J Epidemiol  (2014)
原著論文2
Shinichi Tanihara
Assesment of text documentation accompanying uncoded diagnoses in computerized health insurance claims in Japan
J Epidemiolg  (2015)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2015-06-11

収支報告書

文献番号
201117022Z