子どもの心の診療拠点病院における診療とそのシステムの効果的あり方、および多職種人材育成に関する研究

文献情報

文献番号
201117021A
報告書区分
総括
研究課題名
子どもの心の診療拠点病院における診療とそのシステムの効果的あり方、および多職種人材育成に関する研究
課題番号
H23-次世代・指定-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 眞紀子(独立行政法人 国立成育医療研究センター病院 こころの診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤原 武男(独立行政法人 国立成育医療研究センター研究所 成育社会医学研究部)
  • 植田 紀美子(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター 企画調査部)
  • 本村 陽一(独立行政法人産業技術総合研究所 サービス工学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
子どもの心の診療ネットワーク事業を有効に活用するため、子どもの心の問題への気づきから受診までが平均2年と長い要因を質的に検討し、それを支える情報システムを提案すること、事業に係るコストを明らかにすること事業評価に繋がるベンチマークを検討すること、子どもの心の診療に係るコメディカルの養成に重要な到達目標の作成を目的に研究を行った。
研究方法
受療行動に関しては、3地域の3歳児健診に訪れた保護者に質問紙を配布して気になる症状と相談の有無について回答をもらい、許可あった保護者に電話調査した。また、子どもの発達や心の問題への心配と機関利用、情報システム利用に関しインターネットアンケートを行い1707人からの回答と428人の自由記載を分析した。事業参加11自治体18か所の拠点病院に対して電子メールで、事業に参加していない19自治体48か所の対照病院に対して郵送で、人的費用と効果に関する調査を行った。子どもの心の診療を専門に行える病院の医師が集まり、そこで推薦されたコメディカルの方に、到達目標の作成を依頼し、養成の課題を探った。
結果と考察
3歳児健診における調査では気になる症状は1割にあり、その6割が相談していなかったが、相談できる親族や友人、ネットの利用などの影響は有意でなかった。ネット調査では約4割が心配ありと答え、その約半数が相談先を見つける困難を感じていたが、ネット利用で解決してなかった。情報推薦技術の応用が必要と考えられた。事業費用の問題には①小児科であるか精神科であるかで診療報酬に多くの差がある、②拠点病院を持っていない自治体では専門の医師の不足が問題、③診療報酬の対象とならない業務にも医師が係る必要があり対価が必要、④アウトリーチは効果的で需要があっても診療報酬での対価を望むことが困難、⑤事業費で賄えない持ち出し経費が総額約1千万円と推計できた、⑥ベンチマークは目標と言うより、追跡することで、効果を見ることが重要と考えられた。コメディカルとして、子どもの心の診療に係る精神科看護、小児科看護、心理士、精神保健福祉士、医療福祉士、作業療法士の到達目標案が提示され、トレーニングの課題が明らかになった。
結論
受療行動に関し、現在のネット利用ではその推進が難しく新しい技術が必要である。事業費用に関しては持ち出しが多い。コメディカルの育成を進める第一歩を提供できた。

公開日・更新日

公開日
2012-12-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201117021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成21ー23年度に行った受療行動に関する全国疫学調査で、マクロレベルでの結果(症状に気づいてから受診までが長い)を補完する質的研究を行い、結果を得ることができた。情報科学的に子どもの心の支援に必要なネットワークのあり方を示唆できた。事業を経済的な立場から評価するという社会科学的観点からのエビデンスを示し、科学的な評価が可能になった。
臨床的観点からの成果
子どもの心の問題に気づいた親がどこに相談してよいかわからないことが多いことが改めて浮き彫りになり、臨床におけるネットワークに必要性が明らかになった。医療へのアクセスを高めるソーシャルネットワークのあり方が示された。子どもの心の診療に係るコメディカルスタッフのトレーニングの到達目標が提示され、トレーニングに関しての課題が明らかになり、コメディカルスタッフの質の均一化による臨床レベルの向上に資することができた。
ガイドライン等の開発
子どもの心の診療に係るコメディカルスタッフとして、心理士、小児科看護師、精神科看護師、精神保健福祉士、医療ソーシャルワーカー、作業療法士に関しての到達目標を提示した。これらのコメディカルスタッフに関し、子どもの心の診療に関する到達目標が作成されたのは始めてである。
その他行政的観点からの成果
子どもの心の診療ネットワーク事業の経済的評価を行うことができた。その結果は子どもの心の診療ネットワーク事業の会議で報告され、今後、同事業に関する有識者会議で報告予定である。また、今後の事業の成果をみるためのベンチマークを提供できた。子どもの心の診療に係るコメディカルスタッフの育成を検討する基礎ができた。
その他のインパクト
現在のところ特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
17件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
植田紀美子、奥山眞紀子
子どもの心の診療拠点病院機構推進事業にかかる人的費用推計
厚生の指標 , 60 , 27-34  (2013)
原著論文2
Yuko Yamauchi,Takeo Fujiwara & Makiko Okuyama
Factors Influencing Time Lag Between Initial Parental Concern and First Visit to Child Psychiatric Services Among ADHD Children in Japan
Community Mental Health Journal , 51 , 857-861  (2015)
10.1007/s10597-014-9803-y

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2016-10-03

収支報告書

文献番号
201117021Z