乳幼児身体発育調査の統計学的解析とその手法及び利活用に関する研究

文献情報

文献番号
201117020A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児身体発育調査の統計学的解析とその手法及び利活用に関する研究
課題番号
H23-次世代・指定-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 則子(国立保健医療科学院)
  • 瀧本 秀美(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 藤原 武男((独)国立成育医療研究センター研究所育成社会医学研究部)
  • 吉池 信男(公立大学法人青森県立保健大学健康科学部栄養学科)
  • 衞藤 隆(日本子ども家庭総合研究所副所長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、諸外国では公的調査データおよびその統計解析手法を公開するなど、データの利活用を促進する動きがあるが、わが国においてはまだそのような取り組みは進んでおらず、乳幼児の保健水準のさらなる向上のために大いに調査データの利活用を図るための環境整備が望まれる。本研究では、平成22年乳幼児身体発育調査の調査設計と統計学的解析手法の詳細を整理・記録して発信することで、公表されたデータをより科学的に解釈・活用しやすくするとともに、今後行われる乳幼児身体発育調査の調査設計及び統計処理に関する方法論の標準化を図ることで経時的な調査データの比較可能性を高めるなど、調査精度の向上ならびに調査結果の利活用の推進に資することを目的とする。
研究方法
(1)平成22年乳幼児身体発育調査により乳幼児身体発育曲線および発育値を定めるための統計学的方法を整理し、(2)調査結果の利活用の例として、10年毎に行われている同調査に基づいて長期間の身体発育の状態の推移を分析するための分析方法等の詳細などを整理する。これらの統計学的手法を、調査設計理論、データ整理の方法、身体発育値を定めるための統計学的手法、発育値の活用のあり方のそれぞれの観点から整理、詳細に記述し、国内外に向けて情報発信して情報の利活用および乳幼児身体発育に関する研究の推進に寄与する。
結果と考察
身体発育値を定めるための統計学的手法の整理と解析プログラムを開発し、身体発育曲線等を作成し、「平成22年乳幼児身体発育調査の概況について」で厚生労働省より公表された。また、自治体担当者が乳幼児身体発育値および発育曲線を活用しやすいように、発育値の活用のための「乳幼児身体発育評価マニュアル」、「母子健康手帳の交付・活用の手引き」を作成した。一連の統計学的解析方法は、解析プログラムとともに公表した。平成12年乳幼児身体発育調査と比較して平均出生体重の減少が認められ、その影響要因として妊娠期間(早産)、胎児数(多胎)、母親の喫煙、母親のやせ等が示唆された。
結論
平成22年乳幼児身体発育調査の統計学的解析方法を整理して公表した。作成した身体発育曲線等は平成24年度から使用される母子健康手帳に掲載される。「乳幼児身体発育評価マニュアル」と「母子健康手帳の交付・活用の手引き」は、発育値の活用のために全国で用いられると期待される。

公開日・更新日

公開日
2012-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201117020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで詳細が公表されていなかった乳幼児身体発育調査の統計解析手法を整理して公表した。これにより、調査結果の活用と理解が深まり、今後の調査での経時的比較可能性が高まることが期待される。平成12年乳幼児身体発育調査と比べて平成22年同調査で出生児体重が減少した理由の半分弱は妊娠期間の短縮で説明できることを示した。また、母のふだんのBMIが小さいこと、妊娠中体重増加が少ないこと、妊娠中の喫煙などが、出生時の体重が低いことと関連していることを示した。
臨床的観点からの成果
平成22年乳幼児身体発育調査に基づいて作成した身体発育曲線等は「平成22年乳幼児身体発育調査の概況について」(H23/10/27)で厚生労働省より公表され、平成24年度からは母子健康手帳に掲載されており、我が国の乳幼児の身体発育の基準値として今後10年間、広く臨床および一般国民の間で用いられる。
ガイドライン等の開発
「第2回乳幼児身体発育調査企画・評価研究会」(H23/10/24)の要望に応えて、主に自治体等で乳幼児の発育の評価や保健指導を行う方々を対象に「乳幼児身体発育評価マニュアル」を作成・公表した。また、「平成23年度母子健康手帳に関する検討会」(H23/9/14-10/31)の指摘に応えて、母子健康手帳交付時の望ましい対応を記した「母子健康手帳の交付・活用の手引き」を作成・公表した。
その他行政的観点からの成果
乳幼児の身長、体重データから得られる低栄養に関わる指標は、各国の基本的な衛生統計として国際的に広く活用されている。WHOは2006年に国際比較のための新しい基準を作成し、その基準によるデータが多くの国から登録されている。わが国ではこれまで、国内の独自基準に基づく判定が個人及び集団に対して適用され、国際的に比較可能なデータの提示が遅れていた。そこで、平成22年乳幼児発育調査データを用いて、WHOの新基準に基づく低体重等の割合について算出した。
その他のインパクト
平成24年4月29日の朝日新聞朝刊一面トップ記事として、出生時体重の低下の理由を分析をした本研究班の研究成果が報道された。その後、NHK、毎日新聞などの報道機関からも取材を受けている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
身体発育曲線等は、我が国の乳幼児の身体発育の基準値として用いられている。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kato N,Takimoto H, Sudo N.
The cubic functions for spline smoothed L,S and M values for BMI reference data of Japanese chidren.
Clin Pediatr Endocrinol , 20 (2) , 47-49  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201117020Z