タンデムマス導入による新生児マススクリーニング体制の整備と質的向上に関する研究

文献情報

文献番号
201117010A
報告書区分
総括
研究課題名
タンデムマス導入による新生児マススクリーニング体制の整備と質的向上に関する研究
課題番号
H22-次世代・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
山口 清次(国立大学法人島根大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 重松 陽介(福井大学 医学部)
  • 松原 洋一(東北大学大学院医学系研究科)
  • 大浦 敏博(東北大学大学院医学系研究科)
  • 宮崎 徹(東京大学大学院医学系研究科)
  • 原田 正平(国立成育医療研究センター研究所)
  • 大日 康史(国立感染症研究所)
  • 平原史樹(横浜市立大学医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
14,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 タンデムマス導入を機に新生児マススクリーニング(新生児MS)を効率よく福祉向上に役立てるために、発見頻度と予後調査、診療体制の整備、患者家族のQOL向上のための活動、診断、治療技術の開発、費用対効果解析をおこなった。
研究方法
 タンデムマス試験研究を進めながら、対象疾患の頻度と自然歴を調査した。また稀少疾患の診療支援ネットワーク体制を作るために全国医療機関にアンケート調査を行った。またナノテク技術を応用した新思考の治療法の開発研究、費用対効果について検討した。精度管理を目的として、検体の安定性、施設間の測定値のばらつきを調査し、大災害を教訓に検査機関の情報共有体制を検討した。医療機関を含む一般社会に向けた新生児MSの啓発活動を行うため、医療者の意識調査等を行った。
結果と考察
1)患者の予後調査は、研究班と小児慢性特定疾患事業のデータには乖離があり、患者の追跡体制には工夫が必要であることがわかった。新生児MSで発見される軽症患者の扱いについてはしばらく検討が必要である。
2)血液、尿などの液体試料を分析する際、室温に放置された試料のアシルカルニチンは1週間以内に約半分が分解することがわかった。試料は冷凍保存が望ましい。
3)アシルカルニチンの測定値は機器、前処理が同じでも施設間でばらつきがあることがわかった。偽陽性率、見逃し率にも関係するので検討が必要である。
4)産科医師、助産師を対象にタンデムマスへの理解をアンケート調査したが、言葉を知っていたのは51%であった。産科医療機関に対しても啓発活動が必要である。
5)ナノ・ミセルベクターを応用した遺伝子導入をプロピオン酸血症モデルマウスで実験したところ、20%酵素活性が上昇した。効果は不十分でありさらに検討が必要である。
6)患者QOLについて家族会を通じて実態調査したところ、成人後の医療費、治療用ミルクの安定的供給が最も不安な問題であることがわかった。
7)費用対効果解析を、検査費用500円と仮定してシミュレーションすると17倍の便益、1万円と仮定しても1.2倍の便益効果があることがわかった。今後疾患ごと、重症度ごとに解析する必要がある。
結論
 タンデムマス導入は費用対効果はよく政策的に重要であるが、稀少疾患の診療ネットワーク、患者家族のQOL向上について検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2012-12-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201117010Z