生殖補助医療により生まれた児の長期予後の検証と生殖補助医療技術の標準化に関する研究

文献情報

文献番号
201117009A
報告書区分
総括
研究課題名
生殖補助医療により生まれた児の長期予後の検証と生殖補助医療技術の標準化に関する研究
課題番号
H22-次世代・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 泰典(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 苛原 稔(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 梅澤 明弘(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 生殖・細胞医療研究部)
  • 竹下 俊行(日本医科大学 医学部)
  • 齊藤 英和(独立行政法人国立成育医療研究センター 母性医療診療部)
  • 緒方 勤(浜松医科大学 医学部)
  • 久慈 直昭(慶應義塾大学 医学部)
  • 有馬 隆博(東北大学環境遺伝医学総合研究センター 情報遺伝学分野)
  • 宇津宮 隆史(医療法人セント・ルカ産婦人科)
  • 田中 温(セントマザー産婦人科医院)
  • 末岡 浩(慶應義塾大学 医学部)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院 医学工学総合研究部)
  • 橋本 圭司(独立行政法人国立成育医療研究センター 外科系専門診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では第一に生殖補助医療(以下ART)由来児長期予後調査、第二にARTの次世代への影響の検証、第三に生殖医療の新たな枠組み構築、の三つの課題実現を目的とした。
研究方法
第一にART児長期予後調査については、2007-2008年の我が国ART全出生児データをもとに解析した。また、2008年度ART治療由来児のボランティアベースによる発育・発達調査を行った。第二にインプリンティング疾患の臨床的罹患状況、およびメチル化異常について解析した。第三に配偶子提供については、我が国における告知の動向と、海外に於ける動向調査を行った。
結果と考察
第一に、ART新鮮胚移植由来児の出生体重は3009.77gと日本全体の平均に比して小さく、一方凍結胚移植由来児では逆に大きい。自然周期と比してクロミフェン周期、GnRHアゴニストおよびアンタゴニスト周期ART由来児では低出生体重児になるリスクは高いが、胚盤胞由来児ではリスクは減少した。2008年度のART治療由来児調査(ART児1879例、非ART不妊夫婦由来児629例、一般産科例671例)では、一般産科例・非ART児・ART新鮮胚由来児に比較してART凍結胚由来児で出生体重は有意に大きかったが、1.6歳時のBMIは各群間に差を認めなかった。また1.6歳時の精神運動発達には4群間で差を認めない。
第二に、高齢出産が父性ダイソミータイプのインプリンティング疾患発症のリスク因子であることがUpd(14)pat症候群の解析から示された。またインプリント領域のメチル化パターン分析の結果、ARTにより発症したインプリンティング異常症では受精以降のメチル化維持に病因が多いと推測される。
第三に配偶子提供において、告知を考慮している夫婦は増加しており、また海外の研究より、子どもの考え方が結婚を機に変わる可能性や、知りたい情報が提供者のみならず異母兄弟姉妹にも拡がること、また実際に子どもに提供者・同胞の情報を伝える上で留意点があることが明らかとなっている。
結論
ART由来児は自然妊娠由来児と出生体重に有意差がみられ、凍結保存や胚盤胞移植で異なる影響が見られた。インプリンティング異常については出産年齢の高齢化と併せて考察する必要があるが、培養によるメチル化異常増加の可能性は否定できない。配偶子提供に於ける告知と出自を知る権利については継続的な検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2012-12-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201117009Z