地域における周産期医療システムの充実と医療資源の適正配置に関する研究

文献情報

文献番号
201117002A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における周産期医療システムの充実と医療資源の適正配置に関する研究
課題番号
H21-子ども・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
海野 信也(北里大学 医学部産婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 州博(東北大学大学院医学系研究科発生・発達医学講座周産期医学分野)
  • 遠藤 俊子(京都橘大学看護学部)
  • 松田 義雄(東京女子医科大学母子総合医療センター)
  • 村上 節(滋賀医科大学産科学婦人科学講座)
  • 寺田 幸弘(秋田大学大学院医学系研究科学講座)
  • 木下 勝之(成城木下病院)
  • 江口 成美(日本医師会総合政策研究機構)
  • 小笠原 敏浩(岩手県立大船渡病院 産婦人科)
  • 菅原 準一(東北大学病院周産期母子センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
19,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ここ数年産科医の減少、女性医師の増加、地域による偏在がますます顕著となり、現在の医療システムの改革なしにわが国の周産期医療、特にハイリスクを扱う病院の診療を維持できない状態となってきている。特に地方における病院勤務医はリスクの高い産婦の診療に携わり、労務環境は改善せず離職するという傾向にある。そのため分娩施設と産科医の集約化が必須のことと考え、これを標準化した医療システムにするための暫定的施策と恒常的な施策を検討提言することが本研究の目的である。
研究方法
1本研究ではわが国の周産期医療体制の構築の緊急性を鑑み、日本産科婦人科学会との協力を図る。
2わが国における産科医療提供体制のなかで、国の施策として分娩施設の集約化が掲げられ、都道府県の医療整備計画にも掲げられている。また、総合母子医療センターが全国に設置され、地域周産期医療センターも設置されている。これらを診療所と共に有機的に連携を図り、更なるシステム構築と役割の分散化を図る。
結果と考察
1) 地域における院内助産システム普及推進のためには、医師や妊産婦に信頼される助産師の質維持のための卒後研修プログラムが必要であり、本研究班で作成し提言した。
 2) 病院勤務医不足対策として、以下のような結論が導かれた
3) 周産期医療及び母子保健情報を適切に提供する方法について以下の検討を行った。
結論
周産期医療情報提供方法の検討
分娩取扱医療機関情報提供システムには、非常に大きなニーズがある。
産婦人科医の確保に関する検討
新規産婦人科専攻医の増加は大都市圏に限定的であり、地方の産婦人科医療体制確保のための、新たな施策が必要産婦人科専門医の勤務先マッチング制度検討の必要性大都市圏における産科診療所の役割の再評価
院内助産システムの推進:「助産師実践能力強化研修 標準プログラム」の作成と研修の実
地域産婦人科医療提供確保のための施策地域の実情に応じて、優先すべき施策は異なる
診療所分娩が少ない地域:病院勤務医の勤務環境の改善・総合医養成の必要性
診療所分娩が多い地域:高次周産期医療体制の合理的整備
大規模災害時の周産期医療
都道府県単位の施設間連携を中心とする周産期医療システムは災害時にも有効に機能することが期待できる。周産期情報を共有するシステム構築の必要性地域周産期医療システムに災害時の対策を組み込んでおく必要性他地域からの物的、人的支援体制整備の必要性

公開日・更新日

公開日
2012-12-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201117002B
報告書区分
総合
研究課題名
地域における周産期医療システムの充実と医療資源の適正配置に関する研究
課題番号
H21-子ども・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
海野 信也(北里大学 医学部産婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 州博(東北大学大学院医学系研究科発生・発達医学講座周産期医学分野)
  • 遠藤 俊子(京都橘大学看護学部)
  • 松田 義雄(東京女子医科大学)
  • 村上 節(滋賀医科大学産科学婦人科学講座)
  • 寺田 幸弘(秋田大学大学院医学系研究科産婦人科学講座)
  • 木下 勝之(成城木下病院)
  • 江口 成美(日本医師会総合政策研究機構)
  • 小笠原 敏浩(岩手医科大学大船渡病院)
  • 菅原 準一(東北大学病院周産期母子センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
産科医の減少、女性医師の増加、地域による偏在がますます顕著となり、医療システムの改革なしにわが国の周産期医療を維持できない状態となってきている。特に地方の病院勤務医は、過酷な勤務条件のために離職する傾向にある。これまでに分娩取扱病院の集約化等様々な対策が進められてきている。本研究の目的はこれらの多様な施策を標準化につなげていくための方策を検討提言することである。
研究方法
産婦人科病院勤務医の絶対的必要数をモデル地域から算定する方法を考案し不足数を算定したところ、一日10時間勤務と仮定して約3,500人の不足、9時間勤務では4,400人の不足という結果がえられた。このような病院勤務医不足への対策として、1) 助産師の教育と活用方法を、院内助産の面から検討して提言した。そして2)各地域で必要な施策について検討した。また3)周産期医療及び母子保健情報を適切に提供する方法について検討した。
結果と考察
1) 地域における院内助産システム普及推進のためには、医師や妊産婦に信頼される助産師の質維持のための卒後研修プログラムが必要であり、本研究班で作成し提言した。
2) 病院勤務医不足対策として、以下のような結論が導かれた。
3) 周産期医療及び母子保健情報を適切に提供する方法について以下の検討を行った
結論
1)周産期医療提供体制に関する情報提供方法を開発し、情報提供を行った。
2)地域産科医療を安定化させるために必要な病院・診療所の産婦人科医師数を試算した。
3)院内助産システムを推進するための必要な方策を検討し、「助産師実践能力強化研修標準プログラム」を作成した。
4)地域周産期医療体制の実情について精査し、安定的確保のための施策を提言した。
5)東日本大震災における周産期医療の状況について調査を行い、災害対策における周産期医療システムの重要性を明らかにした。
6)周産期医療提供体制の安定化と持続的発展のための提言を行った。周産期医療システムのすべての構成員が、同一の目標をもって、自らを見直し、向上のために以下の点についてさらに努力を続ける必要がある。

公開日・更新日

公開日
2012-12-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201117002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
東日本大震災時の周産期医療の状況の分析により、地域周産期医療体制について以下のようなきわめて貴重な知見が得られた。
1)岩手県の周産期医療情報システム「いーはとーぶ」は被災地における妊産婦支援に極めて有効に機能した。このような情報システムの重要性が災害対策の面からも明確に示された。
2)宮城県仙台地域のように集約化とセミオープンシステムによってネットワーク化された地域では大震災後、組織化した対応が可能だった。地域周産期医療ネットワークは災害時においても有効に機能する可能性が示された。
臨床的観点からの成果
産婦人科病院勤務医不足対策として、以下のような結論が導かれた。
1.産婦人科専攻医増加のためのさらなる施策の必要性、
2.各県における合理的な周産期医療圏の再構築とそれに基づいた分娩取扱病院の集約化、
3.これ以上の集約化が不可能で有床診療所経営が困難な地域の病院勤務医に対する有効な支援策の必要性
4.都市部で新規分娩取扱診療所の開業が認められるようになっており、分娩数が見込める地域では診療所が産婦人科医療体制再建の一翼を担う可能性が示唆された。

ガイドライン等の開発
1) 平成21年11月6日 中央社会保険医療協議会(診療報酬基本問題小委員会)において「産科医療の現況と平成22年度診療報酬改定への要望」という意見陳述を行い、勤務医の処遇改善が診療報酬における加算要件として加えられる際の参考とされた。
4) 平成22年7月ー12月 社会保障審議会医療保険部会専門委員として参加し、出産育児一時金の制度改革に関する提言を行い、平成23年度の新たな制度導入に活用された。

その他行政的観点からの成果
周産期医療情報を適切に提供する方法を開発する目的で「周産期医療の広場」というサイトを開設し、周産期医療関連情報及び分娩施設情報を提供したところ月間40,000件程度のアクセスがあり、周産期医療情報に関するニーズの存在が示された。
「周産期医療の広場」を通じて、厚生労働省からの母子保健・周産期医療に関する情報の一般への周知をはかった。特に東日本大震災直後には、アクセスが急増し、被災地への情報提供に効果があったと考えられる。
その他のインパクト
以下の様な公開フォーラムを開催し、研究成果の周知をはかった。
1) 平成22年1月24日「産婦人科医療改革公開フォーラム」東京都
2) 平成22年10月23日市民フォーラム「地域とチームでお産をまもる」仙台市
3) 平成22年10月24日「すこやかいわてフォーラム2010」盛岡市
4) 平成23年1月30日「産婦人科医療改革公開フォーラム」東京都
5) 平成23年11月6日「すこやかフォーラムいわて2011」盛岡市
6) 平成24年1月29日「産婦人科医療改革公開フォーラム」東京都

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
43件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
102件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
4件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
江口成美 木下勝之
「医師の必要数に関するパイロット調査 -仙台地域の産婦人科医調査結果より」
日本医師会総合政策研究機構ワーキングペーパー , 222-  (2010)
原著論文2
Kamoshita E, Amano K, Unno N, et al..
Effect of the interval between onset of sustained fetal bradycardia and cesarean delivery on long-term neonatal neurologic prognosis.
Int J Gynaecol Obstet. , 111 (1) , 23-27  (2010)
原著論文3
遠藤俊子、池ノ上克、岡村州博、中林正雄、加藤尚美
院内助産システムガイドブック―産科医と助産師の連携・協働の実際
医歯薬出版  (2010)
原著論文4
片桐麻州美,井本寛子,遠藤俊子 他
総合周産期母子医療センターにおける助産ケア必要量に関する調査
第42回日本看護学会論文集  (2011)
原著論文5
Yuji Kanai, Kan Amano, Nobuya Unno, et al..
Intracranial hemorrhage in full-term infants following vaginal delivery in a Japanese perinatal center.
The Kitasato Medical Journal , 41 (2) , 123-126  (2011)
原著論文6
金井雄二, 天野完, 海野信也
正常妊婦における妊娠中期および後期の子宮動脈血流抵抗指数(resistance index)基準値作成のための後方視的検討
北里医学 , 41 (1) , 15-22  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2016-10-03

収支報告書

文献番号
201117002Z