妊産婦死亡及び乳幼児死亡の原因究明と予防策に関する研究

文献情報

文献番号
201117001A
報告書区分
総括
研究課題名
妊産婦死亡及び乳幼児死亡の原因究明と予防策に関する研究
課題番号
H21-子ども・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
池田 智明(国立循環器病研究センター 周産期・婦人科部)
研究分担者(所属機関)
  • 池ノ上 克(宮崎大学医学部)
  • 岡村 州博(東北大学医学部 産婦人科)
  • 木村 正(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 中林 正雄(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 総合母子保健センター愛育病院)
  • 照井 克生(埼玉医科大学 総合医療センター 産科麻酔科)
  • 金山 尚裕(浜松医科大学 産婦人科学)
  • 藤村 正哲(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 楠田 聡(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
  • 阪井 裕一(国立成育医療研究センター 総合診療部)
  • 山中 龍宏(緑園こどもクリニック 小児科)
  • 渡辺 博(帝京大学医学部附属溝口病院 小児科)
  • 的場 梁次(大阪大学大学院 医学系研究科 社会環境医学講座 法医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界的にトップである周産期死亡率と新生児死亡率に比較して、1-4歳の乳児死亡率は10万人当たり22.3(平成22年)と、19の先進諸国中17位と高い。妊産婦死亡率も、平成17年に10万出産当たり3.1と世界のトップクラスになったものの、昨今の「産科医師不足」によって再度悪化傾向がある。本研究班は、妊産婦死亡と乳幼児死亡の原因究明と予防策に関して、多角的に検討することを目的としている。
研究方法
【妊産婦死亡班】「わが国の妊産婦死亡の調査と評価に関するモデル事業」として、日本産婦人科医会と協力して、平成22年から全例登録し、評価する体制が整った。妊産婦死亡に対する剖検マニュアル、全国の分娩取扱い施設における麻酔科診療実態調査、救命救急医療との連携モデル研究、周産期医療従事者のスキルミックスに関する研究も行った。【乳幼児死亡班】2005、6年の2年間の1?4歳児死亡小票、全2245例を対象に、分析を進めていった。また、各死因についての国際比較も行った。
結果と考察
【妊産婦死亡班】平成22年は51例、23年40例、24年9例、計100例の妊産婦死亡が届けられ、検討会を毎月1回以上開催した。それをもとに「母体安全の提言2011」を全国、約3000の施設に配布した。また、妊産婦死亡に対する剖検マニュアルポケット版、羊水塞栓症に対する診断基準を作った。全国の2758施設を対象にアンケートし、麻酔科医は帝王切開の麻酔の42%しか担当していないことがわかった。大阪府における重症妊婦は、149例に1例の割合で発生していることを明らかにした。【乳幼児死亡班】中核病院へ収容された児は、そうでない児よりも生存期間が長いことなど事故死の死亡場所との解析にて、患者のニードに医療提供者側の能力が対応できていないことが明らかとなった。諸外国との比較で、我が国に著名に高い、肺炎による死亡について解析し、ワクチンの遅れ、周産期因子の重要性が浮かび上がった。
結論
妊産婦死亡の全例を登録し評価するシステムと剖検マニュアルが整備され、重要なインフラが整った。また、法医学、救急医療、および周産期医療者のスキルミックスが発展した。1-4歳の死亡小票の詳細な解析と、諸外国との比較によって、小児救急医療の整備と、ワクチンなどの小児医療に改善する余地が多いことがわかった。

公開日・更新日

公開日
2012-12-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201117001B
報告書区分
総合
研究課題名
妊産婦死亡及び乳幼児死亡の原因究明と予防策に関する研究
課題番号
H21-子ども・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
池田 智明(国立循環器病研究センター 周産期・婦人科部)
研究分担者(所属機関)
  • 池ノ上 克(宮崎大学医学部)
  • 岡村 州博(東北大学医学部 産婦人科)
  • 木村 正(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 中林 正雄(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 総合母子保健センター愛育病院)
  • 照井 克生(埼玉医科大学 総合医療センター 産科麻酔科)
  • 金山 尚裕(浜松医科大学 産婦人科学)
  • 藤村 正哲(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 楠田 聡(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
  • 阪井 裕一(国立成育医療研究センター 総合診療部)
  • 山中 龍宏(緑園こどもクリニック 小児科)
  • 渡辺 博(帝京大学医学部附属溝口病院 小児科)
  • 的場 梁次(大阪大学大学院 医学系研究科 社会環境医学講座 法医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界的にトップである周産期死亡率と新生児死亡率に比較して、1~4歳の乳児死亡率は10万人当たり22.3(平成22年)と、19の先進諸国中17位と高い。妊産婦死亡率も、平成17年に10万出産当たり3.1と世界のトップクラスになったものの、昨今の「産科医師不足」によって再度悪化傾向がある。本研究班は、妊産婦死亡と乳幼児死亡の原因究明と予防策に関して、多角的に検討することを目的としている。
研究方法
【妊産婦死亡班】「わが国の妊産婦死亡の調査と評価に関するモデル事業」として、日本産婦人科医会と協力して、平成22年から全例登録し、評価する体制が整った。妊産婦死亡に対する剖検方法、法医解剖との連携、分娩取扱施設における麻酔科診療実態調査、救命救急医療との連携モデル研究、周産期医療従事者のスキルミックスに関する研究も行った。【乳幼児死亡班】2005、6年の2年間の1~4歳児死亡小票、全2245例を対象に、分析を進めていった。また、各死因についての国際比較も行った。
結果と考察
【妊産婦死亡班】平成22年は51例、23年40例、24年9例、計100例の妊産婦死亡が届けられ、検討会を毎月1回以上開催した。平成23年から毎年、「母体安全の提言」を全国、約3000の施設に配布した。妊産婦死亡に対する剖検マニュアルも配布した。妊産婦死亡の法医解剖は過去7年間65例あり、増加していること、麻酔科医は帝王切開の麻酔の42%しか担当していないこと、重症妊婦は、149例に1例の割合で発生していることを明らかにした。【乳幼児死亡班】中核病院へ収容された児は、そうでない児よりも生存期間が長いことなど事故死の死亡場所との解析にて、患者のニーズに医療提供者側の能力が対応できていないことが明らかとなった。諸外国との比較で、我が国に著名に高い、肺炎による死亡について解析し、ワクチンの遅れ、周産期因子の重要性が浮かび上がった。
結論
妊産婦死亡の全例を登録し評価するシステムと剖検マニュアルが整備され、重要なインフラが整った。また、法医学、救急医療、および周産期医療者のスキルミックスが発展した。1-4歳の死亡小票の詳細な解析と、諸外国との比較によって、小児救急医療の整備と、ワクチンなどの小児医療に改善する余地が多いことがわかった。

公開日・更新日

公開日
2012-12-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-03-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201117001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)妊産婦死亡全例登録と評価事業によって、わが国で起こった妊産婦死亡の正確な数が把握できるようになった。(2)妊産婦死亡につながる、重要疾患の発生状態などが明らかとなり、それに対する行政的対策を立てることが可能となった(3)妊産婦死亡発生時の剖検を中心とした行政的取扱いが明確となった。(4)小児救急医療を地域事情を考慮して、早急に整備する必要性が認識された。
臨床的観点からの成果
(1)妊産婦死亡の評価することで、予防策を医療と行政の立場から、策定できるようになった。(2)羊水塞栓症に「子宮型羊水塞栓症」という限局型の病態があることを明らかにした。(3)1-4歳の幼児死亡が多い原因分析から、呼吸器、神経、循環器、先天異常が内因死の重要疾患であることが分かったが、これらの疾患に対する行政的対策の必要性が認識された。
ガイドライン等の開発
(1)「母体安全への提言」を平成23年と24年にそれぞれ発刊し、全国の産婦人科医に配布した。(2)「妊産婦死亡剖検マニュアル」を発刊し、全国の病理、法医関連部署に配布した。(3)日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会の産科診療ガイドラインに本研究のデータが使われた。
その他行政的観点からの成果
(1)わが国で発生した妊産婦死亡の全例が登録され、詳細を評価検討でき、予防策を短期間に策定できるという、世界にも類をみない体制が確立した。この活動が、新聞等で報道された。(2)1-4歳の幼児死亡が、先進諸国の中で最下位に近いことは、意外と知られておらず、推定原因とともにメディア報道された。
その他のインパクト
パンフレット作成・監修:14件
講演:59回
シンポジウム11回

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
22件
その他論文(和文)
42件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
42件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kanayama N, Inori J, Ishibashi-Ueda H, et al.
Maternal death analysis from the Japanese autopsy registry for recent 16 years: significance of amniotic fluid embolism.
J Obstet Gynaecol Res. , 37 (1) , 58-63  (2011)
原著論文2
Kamiya CA, Kitakaze M, Ishibashi-Ueda H, et al.
Different characteristics of peripartum cardiomyopathy between patients complicated with and without hypertensive disorders. -Results from the Japanese Nationwide survey of peripartum cardiomyopathy-.
Circ J. , 75 (8) , 1975-1981  (2011)
原著論文3
Neki R, Fujita T, Kokame K, et al.
Genetic analysis of patients with deep vein thrombosis during pregnancy and postpartum.
Int J Hematol. , 94 (2) , 150-155  (2011)
原著論文4
Katsuragi S, Ueda K, Yamanaka K, et al.
Pregnancy-associated aortic dilatation or dissection in Japanese women with marfan syndrome.
Circ J. , 75 (11) , 2545-2551  (2011)
原著論文5
櫻井淑男、阪井裕一、藤村正哲
1-4歳児死亡小票調査からみた原因不明で死亡した児の特徴
小児科学会誌 , 114 , 1708-1712  (2010)
原著論文6
岡井 崇、藤村 正哲
母体救命を目的とした総合周産期母子医療センターの将来展望
日本未熟児新生児学会雑誌 , 22 , 208-210  (2010)
原著論文7
櫻井淑男、藤村正哲
重篤な小児への初期対応―幼児死亡小票調査からみたわが国の小児三次救急患者の集約化
小児科臨床 , 78 , 887-891  (2010)
原著論文8
藤村正哲
新生児集中治療の質と評価を考える
日本未熟児新生児学会雑誌 , 23 , 6-12  (2010)
原著論文9
Okai T, Ikeda T, Kawarabayashi T, et al.
Intrapartum management guidelines based on fetal heart rate pattern classification.
J Obstet Gynecol Res. , 36 (5) , 925-928  (2010)
原著論文10
Kaneko M, Tokunaga S, Mukai M, et al.
Application of a fetal scalp electrode for continuous fetal heart rate monitoring during an ex utero intrapartum treatment
Journal of Pediatric Surgery , 46 , 37-40  (2010)
原著論文11
Kawagoe Y, Sameshima H, Ikenoue T, et al.
Magnesium Sulfate as a Second-Line Tocolytic Agent for Preterm Labor: A Randomized Controlled Trial in Kyushu Island
Journal of Pregnancy , 2011 , 1-6  (2010)
原著論文12
Furukawa S, Sameshim H, Ikenoue T, et al.
Is the Perinatal Outcome of Placental Abruption Modified by Clinical Presentation?
Journal of Pregnancy , 2011 , 1-5  (2010)
原著論文13
Tokunaga S, Sameshima H, Ikenoue T.
Applying the Ecology Model to Prinatal Medicine: Form a Regional Population-Based Study
Journal of Pregnancy , 2011 , 1-4  (2010)
原著論文14
Ueda K, Ikeda T, Katsuragi S, Parer JT.
Spontaneous in utero recovery of a fetus in a brain death-like state.
J Obstet Gynaecol Res , 393-396  (2010)
原著論文15
Kodama Y, Sameshima H, Ikenoue T, Ikeda T, Kawagoe Y.
Successful fresh whole ovarian autotransplantation without vascular anastomosis.
Fertil Steril. , 11-12  (2010)
原著論文16
Katsuragi S, Ohga S, Horiuchi H, et al.
Neonatal onset hemophagocytic lymphohistiocytosis in a premature infant.
Pediatr Blood Cancer , 53 (2) , 259-264  (2009)
原著論文17
Kodama Y, Sameshima H, Ikeda T, et al.
Intrapartum fetal heart rate patterns in infants (> or =34 weeks) with poor neurological outcome.
Early Hum Dev , 85 (4) , 235-238  (2009)
原著論文18
Ueda K, Ikeda T, Iwanaga N, et al.
Intrapartum fetal heart rate monitoring in cases of congenital heart disease
Am J Obstet Gynecol. , 201 (1) , 1-6  (2009)
原著論文19
池田智明
産科医と麻酔科医のさらなる連携の為に:母体死亡研究班の成果と新しい胎児心拍数パターン評価法
麻酔 , 58 , 21-31  (2009)
原著論文20
池田智明
周産期医療システムの再構築 産科救命救急への対応
産婦人科の実際 , 58 (6) , 875-880  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201117001Z