文献情報
文献番号
201116022A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の新規治療法開発に向けた硫化水素の動態に関する研究
課題番号
H23-認知症・若手-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 典広(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所神経薬理研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
1,484,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、神経変性疾患の治療を目的とした生理活性物質硫化水素の応用研究が進行している。認知症に対する利用が期待される一方で、内在性硫化水素の慢性的なクリアランス異常が脳障害を引き起こすとの報告がある。硫化水素を用いた治療法を開発するためには脳内のクリアランス評価が不可欠であると考え、アルツハイマー型認知症患者の死後脳を用いて硫化水素の動態に関する研究を行った。
研究方法
生体内で生産された硫化水素はタンパク質と結合し貯蔵される。硫化水素の貯蔵量を調べるため、アルツハイマー病脳(神経原繊維変化ステージ6、老人斑ステージC、平均年齢:83.1、N=14)及び健常脳(神経原繊維変化ステージ1-2、老人斑ステージ0-A、平均年齢:82.2、N=16)における結合状態の硫化水素(結合型硫黄)を測定した。
硫化水素の貯蔵量は、生産経路及び代謝経路によって規定される。クリアランス能を評価するため、脳内の生産酵素及び代謝酵素を定量した。
本研究では死後脳検体が対象となるため、死の尊厳への配慮と篤志ご遺族への敬意を前提に取り扱うとともに、研究結果が篤志ご遺族へ不利益と危険性を及ぼす可能性について十分な配慮を払い遂行した。
硫化水素の貯蔵量は、生産経路及び代謝経路によって規定される。クリアランス能を評価するため、脳内の生産酵素及び代謝酵素を定量した。
本研究では死後脳検体が対象となるため、死の尊厳への配慮と篤志ご遺族への敬意を前提に取り扱うとともに、研究結果が篤志ご遺族へ不利益と危険性を及ぼす可能性について十分な配慮を払い遂行した。
結果と考察
アルツハイマー病脳の結合型硫黄含量を健常脳と比較した結果、両群間の差は有意ではなく、硫化水素の貯蔵量に異常は認められなかった。硫化水素の生産酵素及び代謝酵素についても有意差は認められず、アルツハイマー型認知症においては健常脳と同等のクリアランス能が維持されていると判明した。
認知障害の発症原因としては、初期段階における酸化ストレス及び炎症反応が指摘されている。硫化水素には酸化ストレスや炎症反応を抑制するはたらきが知られており、アミロイドβタンパク質による細胞障害を抑制する作用がin vitroにおいて確認されている。生体に投与した硫化水素の濃度を制御できれば、発症の予防や認知障害の軽減を目的とした利用が可能と思われる。硫化水素の実効性をin vivoにおいて検証していくことが今後の課題である。
認知障害の発症原因としては、初期段階における酸化ストレス及び炎症反応が指摘されている。硫化水素には酸化ストレスや炎症反応を抑制するはたらきが知られており、アミロイドβタンパク質による細胞障害を抑制する作用がin vitroにおいて確認されている。生体に投与した硫化水素の濃度を制御できれば、発症の予防や認知障害の軽減を目的とした利用が可能と思われる。硫化水素の実効性をin vivoにおいて検証していくことが今後の課題である。
結論
アルツハイマー型認知症患者に対して硫化水素を適用できる可能性が示唆されたことから、この物質を利用した新規治療法の開発を支持する結論に至った。生体への影響や投与形態の検討など臨床応用を指向した研究・開発が求められる。
公開日・更新日
公開日
2012-08-21
更新日
-