アルツハイマー病の根本的治療薬開発に関する研究

文献情報

文献番号
201116021A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病の根本的治療薬開発に関する研究
課題番号
H23-認知症・指定-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
道川 誠(公立大学法人 名古屋市立大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 富田泰輔(東京大学大学院薬学系研究科臨床薬学教室)
  • 西道隆臣(理化学研究所脳科学総合研究センター)
  • 長谷川成人((公財)東京都医学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
31,552,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者数が激増している我が国では認知症患者数も増加の一途を辿っており、認知症の半数以上を占めるアルツハイマー病(AD)の制圧は急務である。本研究班は、AD発症機構と考えられているアミロイドカスケードの複数の標的を攻略し、真に有効なADの治療法開発を目指す。複数の標的とは、(1) Aβ産生機構の解明と調節法の開発、(2) Aβ分解調節法の開発、(3) Aβ除去とコレステロール代謝恒常性維持を目的としたHDL療法の開発、(4) タウ病変の伝播制御である。
研究方法
血液脳関門培養モデルの使用、低分子化合物ライブラリーによるAbeta代謝に影響する化合物の探索、ネプリライシンのリン酸化制御によるAbeta分解活性の検討、不溶性タウ誘導における患者脳タウの影響を検討した。
結果と考察
(1)Aβは血液脳関門(BBB)を介して排出される。BBB培養モデルの解析から、ApoE4型モデルはApoE3に比してBBB形成が不良であり、ApoE3マウス脳では、ApoE4マウスに比べ、BBB透過性亢進が認められた。 (ii) 脳内に存在するリポタンパクリパーゼが、新規Aβ結合分子であり、Aβの細胞内取り込みと分解を促進することを発見した(治療標的の発見)。
(2)Aβ産生機構の解明と調節法の開発:スフィンゴシン1リン酸およびセラミド代謝経路に関与する低分子化合物の探索を行い、既存薬がAβ産生を特異的に低下させることを発見した。また複数のGPCR型受容体をAβ産生特異的創薬標的分子として同定した。
(3)Aβ分解調節法の開発:ネプリライシンは、細胞質領域に幾つかのリン酸化サイトがある。リン酸化によるネプリライシンの細胞表面局在制御機構を明らかにした。タウ病変の伝播制御
(4)タウ発現細胞に患者脳不溶性画分を導入によりタウ凝集が誘導され、界面活性剤不溶性画分にリン酸化タウの増加が認められた。患者脳不溶性画分に含まれる異常タウがシードとなって細胞内の正常タウが構造変化して蓄積したと考えられた。
結論
ApoE4はApoE3に比してBBB形成が不良であり、BBB機能の1つ脳内Abeta排出機能について検討する必要がある。BBB機能調節は血液側からの薬剤でできる可能性がある。Aβ産生を特異的に低下させる化合物を同定した。Aβ分解を司るネプリライシン活性調節機構を明らかにした。タウ凝集を促進させるシードの存在を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2012-08-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201116021Z