文献情報
文献番号
201116016A
報告書区分
総括
研究課題名
新しいアッセイ法による認知症治療薬の効果判定
課題番号
H22-認知症・若手-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
二井 勇人(東北大学 大学院農学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 石浦章一(東京大学 大学院総合文化研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,023,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
アルツハイマー病の原因となる、アミロイドβ蛋白質(Aβ)の生成には、β、γセクレターゼの2つのプロテアーゼが関与する。私たちは、酵素機能が依然として不明なヒトγセクレターゼ複合体を酵母に再構成し、試験管内でγセクレターゼ活性を測定できる系を世界で初めて開発した。また、βセクレターゼ(BACE1)について、活性化機構の知見を積み重ねて阻害剤を開発してきた。本研究の目的は、β、γセクレターゼの酵素機能を解明し、私たちが明らかにした特徴から新たな治療法を提案することである。
研究方法
ヒトγセクレターゼを構成する4つの遺伝子(プレセニリン、ニカストリン、Aph-1、Pen2)とヒトアミロイド前駆体(APP)断片を酵母細胞内に導入した。これにより、①酵母の膜画分を調製し、試験管内でAβ生成活性を測定する。②酵母の生育を指標にγセクレターゼ活性を評価する。以上の2つの評価系を使って、Aβの生成に影響を及ぼす①反応条件、②サブユニットのアイソフォーム、③家族性アルツハイマー病プレセニリン変異体、④天然物由来の薬剤を解析した。
結果と考察
①アルツハイマー病患者脳において減少するリン脂質プラズマローゲンによって、γセクレターゼが阻害された。また、プロリン異性化酵素Pin1により、毒性の強いAβ分子種(Aβ42とAβ43。数字はアミノ酸の長さ。)が増加した。本研究により、Aβ生成へのプラズマローゲンとPin1の直接的な関与が証明された。
②プレセニリン2は、γセクレターゼ複合体の形成効率が著しく低く、プレセニリン1と比較して10分の1程度のAβ生成活性しかもたない事、③家族性アルツハイマー病のプレセニリン変異体は、野生型に比べて低いAβ生成活性しかもたないが毒性の高いAβ分子種の割合は上昇する事が明らかになった。④天然物ライブラリーをスクリーニングして、γセクレターゼ阻害効果を示すとみられる薬剤を5個同定している。
②プレセニリン2は、γセクレターゼ複合体の形成効率が著しく低く、プレセニリン1と比較して10分の1程度のAβ生成活性しかもたない事、③家族性アルツハイマー病のプレセニリン変異体は、野生型に比べて低いAβ生成活性しかもたないが毒性の高いAβ分子種の割合は上昇する事が明らかになった。④天然物ライブラリーをスクリーニングして、γセクレターゼ阻害効果を示すとみられる薬剤を5個同定している。
結論
酵母Aβ生成系を用いて、γセクレターゼの酵素学的な性質を解明した。プラズマローゲンやプロリン異性化酵素Pin1との関連は、全く新しい治療への方向性を生み出した。研究代表者等は、これまでの研究から、アルツハイマー病の治療法として、アミロイド米を用いた食物免疫療法、BACE1阻害剤やγセクレターゼ阻害剤に効果を見出してきた。来年度は、治療法の併用によるモデルマウスの治療実験を行いたい。
公開日・更新日
公開日
2012-08-20
更新日
-