アルツハイマー病の新規細胞医薬開発に関する臨床応用研究

文献情報

文献番号
201116015A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病の新規細胞医薬開発に関する臨床応用研究
課題番号
H22-認知症・若手-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
内村 健治(名古屋大学大学院医学研究科 生物化学講座 分子生物学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
1,291,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病(AD)病態に伴って骨髄由来ミクログリア前駆細胞が脳内へ移行し、神経毒性アミロイドβタンパク(Aβ)を積極的に除去していることがADモデルマウスを用いて明らかにされた。しかしながらその脳内移行のメカニズムは未だ不明である。申請者は当該脳移行性細胞の脳内浸潤におけるセレクチン-糖鎖の分子メカニズムの重要性をADモデルマウスにより以前明らかにした。本申請研究はADモデルマウスで得られた知見および結果をヒト臨床サンプルの使用による臨床研究へ応用するために立案された。AD治療法開発における問題の一つは遺伝子等の効率的な脳内動員法が確立していないことである。本申請研究は脳移行性細胞を利用した細胞医薬によりこの問題を解決し、AD新規治療法開発の技術基盤の提供を目的とする。
研究方法
本研究者らはヒト骨髄由来細胞株を入手しそのセレクチン認識糖鎖の発現を確認した。AD病態脳における当該細胞の動態を生体内ビデオ蛍光顕微鏡技術で解析した。 研究協力者より提供された非認知症およびADヒト剖検脳サンプルにおけるセレクチンおよびリガンド糖鎖の発現変動を解析した。認知機能の中枢である海馬と共に提供を受けた嗅内皮質に関して発現解析を行った。
結果と考察
ヒト骨髄由来細胞株のモデルマウス脳血管内におけるローリングおよび接着を観察した。一方、非認知症対照群に比べAD脳嗅内皮質でセレクチン分子の発現上昇が観察された。さらに、神経毒性重合Aβの除去を亢進させることが期待される細胞外スルファターゼ遺伝子をヒト細胞で発現し得るレンチウィルスベクターに組み込み、ウィルスを使用した遺伝子発現システムの開発に成功した。当該遺伝子を脳移行性細胞に導入しAD病態個体に投与後、脳病理変化を観察する研究への応用が期待された。ヒト臨床サンプルを用いた本申請研究は人権保護および個人情報保護に最大限の注意を払い、当該機関の倫理委員会による厳正中立な審査・承認を受けた。
結論
本研究の技術基盤により認知症を最小限に抑える研究成果が予想されその波及効果として、付随する介護負担の軽減が社会的に期待された。

公開日・更新日

公開日
2012-08-21
更新日
-

文献情報

文献番号
201116015B
報告書区分
総合
研究課題名
アルツハイマー病の新規細胞医薬開発に関する臨床応用研究
課題番号
H22-認知症・若手-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
内村 健治(名古屋大学大学院医学研究科 生物化学講座 分子生物学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病(AD)の病態に伴ってある種の骨髄由来細胞が脳内へ移行することが明らかにされた。当該移行細胞が脳内の神経毒性アミロイドβタンパク(Aβ)を積極的に除去していることがADモデルマウスで明らかにされた。一方、その移行のメカニズムは未だ不明である。申請者は当該脳移行性細胞の脳内移入におけるセレクチン-糖鎖の分子メカニズムの重要性をADモデルマウスにより以前明らかにした。本申請研究はADモデルマウスで得られた知見および結果をヒト臨床サンプルの使用による臨床研究へ応用するために立案された。AD治療法開発における問題の一つは遺伝子等の効率的な脳内動員法が確立していないことである。本申請研究は脳移行性細胞を利用した技術によりこの問題を解決することである。また、AD新規細胞医薬開発の基盤確立を目的とする。
研究方法
本研究者らはヒト骨髄由来細胞株を入手しその細胞表面におけるセレクチン認識糖鎖の発現を解析した。また、AD病態における当該細胞の動態を生体内ビデオ蛍光顕微鏡技術で解析した。一方、研究協力者より提供された非認知症、ADのヒト剖検脳サンプルを用いてセレクチンおよびリガンド糖鎖のAD病態における発現変動をウェスタンブロット法により解析した。認知機能の中枢である海馬と嗅内皮質に関して発現解析を行った。神経毒性重合Aβの除去を亢進させることが期待される細胞外スルファターゼ遺伝子をヒト細胞で発現し得るレンチウィルスベクターへの組み込みを行った。
結果と考察
ヒト骨髄由来細胞株の細胞表面セレクチン認識糖鎖の発現を確認した。モデルマウス脳血管内における当該細胞のローリングおよび接着を観察した。非認知症対照群に比べAD脳嗅内皮質でセレクチン分子の発現上昇が観察された。細胞外スルファターゼ遺伝子をヒト細胞で発現し得るレンチウィルスベクターへの組み込みに成功した。ウィルスを使用した遺伝子発現システムの開発に成功した。当該遺伝子を脳移行性細胞に導入しAD病態脳へ動員する細胞医薬開発への応用が期待された。ヒト臨床サンプルを用いた本申請研究は人権保護および個人情報保護に最大限の注意を払い、当該機関の倫理委員会による厳正中立な審査・承認を受けた。
結論
本研究により確立された技術基盤により認知症を最小限に抑える細胞医薬の開発が強く期待された。その波及効果として付随する介護負担の軽減が社会的に期待された。

公開日・更新日

公開日
2012-08-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201116015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アルツハイマー病の病態進行に伴ってある種の細胞が脳内へ移行することが明らかになりました。脳内細胞をイメージングする生体内ビデオ蛍光顕微鏡によりセレクチンと呼ばれる分子とその認識糖鎖が脳内移行する細胞にとって重要であることがわかりました。脳内移行細胞とこれら分子の発現調節による新しい細胞医薬開発の技術が確立されました。
臨床的観点からの成果
本研究により確立された技術によりアルツハイマー病治療薬の効果的な投与法や効果の増大が期待されました。
ガイドライン等の開発
特記事項無し。
その他行政的観点からの成果
アルツハイマー病は超高齢化社会を迎えた我が国において増加の一途をたどっています。本研究成果は将来、アルツハイマー病患者のQOL向上および認知症を最小限に抑えることに貢献します。
その他のインパクト
アルツハイマー病の予防治療法開発を糖鎖研究の観点から推進し、当該分野をリードする形に発展している。一部の成果については広く国民に発信された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hosono-Fukao T, Ohtake-Niimi S, Nishitsuji K, et al
RB4CD12 epitope expression and heparan sulfate disaccharide composition in brain vasculature
J Neurosci Res , 89 (11) , 1840-1848  (2011)
原著論文2
Hosono-Fukao T, Ohtake-Niimi S, Hoshino H, et al
Heparan Sulfate Subdomains that are Degraded by Sulf Accumulate in Cerebral Amyloid Beta Plaques of Alzheimer's Disease: Evidence from Mouse Models and Patients
Am J Pathol , 180 (5) , 2056-2067  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201116015Z