若年認知症の社会参加を支援するアセスメント手法およびコーディネート手法の開発

文献情報

文献番号
201116013A
報告書区分
総括
研究課題名
若年認知症の社会参加を支援するアセスメント手法およびコーディネート手法の開発
課題番号
H22-認知症・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 さをり(甲南女子大学 看護リハビリテーション学部)
研究分担者(所属機関)
  • 沖田 裕子(特定非営利活動法人認知症の人とみんなのサポートセンター)
  • 中西 亜紀(大阪市弘済院付属病院 神経内科兼精神科)
  • 塩見 美抄(兵庫県立大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
959,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、若年認知症の人の社会参加を支援する方法を体系的に明らかにし,支援がどこの地域でも行えるようにすることを目的とする.そのために,若年認知症の人と家族の支援に必要なアセスメント項目,コーディネートについて検討し,一定の手法を示す.
研究方法
2010年度には、若年認知症者とその家族に対するアセスメント,プランの立案,支援を実施した.実施した相談内容,支援の経過および結果を分析,検討し,若年認知症およびその家族の支援に対する,アセスメントおよびコーディネート手法案(以下,手法案)を作成した.
2011年度には, 2011年6月から9月の間に,認知症連携担当者等が,若年認知症の相談に応じる際に,手法案を活用. 介入3か月後の心身機能,活動と参加の変化について検証する.兵庫県,大阪府下81市町の地域包括支援センター,愛知県(91名),兵庫県(167名)の認知症ケア関係者に対して協力を依頼.同時に若年認知症に対する支援の経験に関するアンケートを行った.また,若年認知症に対して社会活動の場を提供している機関においても試用協力の依頼を行った.
結果と考察
協力依頼を行ったうち,40か所の認知症ケア関係者と,2か所の社会活動の場で手法案活用に対する協力を得た.設定期間終了後,若年認知症の相談があり,支援が行えたのは相談対応時に手法案を利用した事例3件,社会活動参加時に手法案を利用した1件のみであった.
手法案を活用できた支援の結果から,手法案の利点と課題が明らかになった. 手法案の社会資源一覧や社会資源へつなぐための評価内容は役立つという結果が得られた.また,手法案の内容が,一回の面談では把握できないこと,若年者の場合,本人・家族に迷いがあり,相談が中断して支援が止まるという結果がみられた.
以上の結果から,今回開発した手法案についても,活用できる面もあるが,改良の必要な点があることが明らかになった.その内容として,支援時の心構えや相談対応方法について事例を示すなどして,より具体的に支援の方法を示すことが必要であると言える.
結論
今回の研究結果から,現状の支援機関では,今回開発した手法案があっても,若年認知症に対する具体的な支援ができないことも分かった.今後の課題と対応策として,手法の改編を行うと同時に,若年認知症の支援に対してアドバイスを行う機関の設置,相談窓口の市民に対する啓発が必要である.

公開日・更新日

公開日
2012-08-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201116013B
報告書区分
総合
研究課題名
若年認知症の社会参加を支援するアセスメント手法およびコーディネート手法の開発
課題番号
H22-認知症・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 さをり(甲南女子大学 看護リハビリテーション学部)
研究分担者(所属機関)
  • 沖田 裕子(特定非営利活動法人認知症の人とみんなのサポートセンター)
  • 中西 亜紀(大阪市弘済院付属病院 神経内科兼精神科)
  • 塩見 美抄(兵庫県立大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,若年認知症の人の社会参加を支援する方法を体系的に明らかにし,支援がどこの地域でも行えるようにするために,支援のためのアセスメント手法およびコーディネート手法を開発することである.
研究方法
本研究は2年計画であり,1年目(2010年度)は,相談窓口の協力を得て,サービスの利用がスムーズにいかない若年認知症者を過去事例を含めて抽出し,相談の場で行ったアセスメント,ケアプランの内容と既存の活動を通じて実施する.支援経過を分析.若年認知症者に必要なアセスメント項目,コーディネート方法について一定の手法案を作成.
2年目(2011年度)は,分析できた手法を複数の認知症連携担当者が試用,その結果を検証し一定の手法を示す.研究実施に当たっては,対象となる認知症者と家族に対して研究目的・内容を十分に説明し同意を得た上で行うとともに,個人情報の保護については細心の注意を払う.
結果と考察
2010年度には,若年認知症者とその家族に対して立案したアセスメント,プランの記録,支援の経過記録を基に,手法案(現状を把握するシート,社会資源の活用状況を知るシート,社会サービスの利用を阻む要因を検討するシート,社会資源一覧表)を作成した.
2011年度には,手法案を認知症連携担当者が支援時に試用することとして,3府県の認知症ケア関係機関に依頼.4件の支援結果を得ることができた.その支援の実践から得られた結果基に手法案を,一部改編した.また,試用者からの意見を基に,1)若年認知症支援に対し,支援者の持つべき意識のあり方を提示,2)手法活用事例を示す,3)地域にある社会資源の収集方法を示すなど,活用時に必要とされる内容を加筆した.
また,手法案試用依頼時に実施したアンケートから,若年認知症の場合,高齢に比べて支援の機会が少ないことから,手法の重要性に加えて,支援者が迷った時に相談できる機関の設置が必要であること,長期の関わりが必要であるため,その意識を支援者が持つことの重要性が明らかになった.
結論
今回の研究結果から,現状の支援機関では,今回開発した手法案があっても,若年認知症に対する具体的な支援ができないことが分かった. 今後の課題と対応策として,1)手法案を若年認知症支援に対して,支援者の持つべき意識のあり方や,想定される状況を網羅した支援方法の例示,地域にある資源情報の収集方法等,具体的な内容の加筆,改編する,2)若年認知症への支援は,高齢者に比べ機会が少ないため,支援者が迷った時に随時,スーパーバイズできる相談対応機関が必要,3)地域包括支援センターの役割の住民への周知が必要である.

公開日・更新日

公開日
2012-08-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201116013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで若年認知症に関する研究において,その支援方法を具体的に示すものは無く,個人が手探りの状態で支援を実施してきた.本研究では,複数の若年認知症の本人および家族に対する支援の経過から,支援を実践するうえで必要なアセスメントの項目,コーディネートの視点について検討を行い,その方法論を示した.
本研究による成果物としての手法は,若年認知症支援の一つの方法論ではあるが,その手法が明らかになったことは専門的観点から有効であると言える.
臨床的観点からの成果
若年認知症の人と家族に対する支援については,オーダーメードの支援体制作りが必要であり,認知症連携担当者が,コーディネートの役割を担うとされている. しかし,現状の支援の場において,若年認知症の人に対する支援経験者は少なく,またそのアセスメント項目やコーディネート方法等,その方法論は明らかになっていない.
本研究では,これら若年認知症の支援の課題に対して,支援の手順,視点を明確に示すものである.若年認知症の支援に初めてあたる場合にも,活用できる手法を開発することができたと言える.
ガイドライン等の開発
若年認知症の人と家族に対する支援を行う際に必要なアセスメントおよびコーディネート手法を作成した.また,本研究から得られた知見を基に,支援にあたる際の留意点を解説,手法を活用した支援実践事例を掲載した冊子を作成した.その後行政が作成する若年認知症ガイドブックにも活用された(大阪府平成25年3月,兵庫県西宮市平成25年11月発行).
その他行政的観点からの成果
認知症という誰もが不安を感じる疾患に,若くして罹患することの不安は大きい.若年認知症支援に関する具体的な手法を作成したことは, 地域包括支援センターに配置された認知症連携担当者が,対象者に対して効果的な支援を実践できることにつながると言える.住民の身近な場所にある地域包括支援センターにおいて,今回開発した手法を活用することで,どこの地域でも若年認知症の人や家族に対する具体的支援を実現でき,住民の安心につながると考える.
その他のインパクト
本研究により作成した手法や手法を活用した事例に関する報告研修会を実施した.100名の認知症ケア関係者に参加いただき,手法の活用方法を習得いただいた.その後も全国20か所の研修会で報告した.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
2016-09-12

収支報告書

文献番号
201116013Z