文献情報
文献番号
201116003A
報告書区分
総括
研究課題名
リン酸化タウの凝集阻害及び分解促進を標的とした新しいアルツハイマー病の根本治療法に関する研究
課題番号
H21-認知症・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
武田 雅俊(大阪大学大学院 医学系研究科 情報統合医学講座(精神医学))
研究分担者(所属機関)
- 工藤 喬(大阪大学大学院 医学系研究科 情報統合医学講座(精神医学) )
- 長谷川 成人(公益財団法人 東京都医学総合研究所)
- 高島 明彦(独立行政法人 国立長寿医療研究センター)
- 田中 稔久(大阪大学大学院 医学系研究科 情報統合医学講座(精神医学))
- 数井 裕光(大阪大学大学院 医学系研究科 情報統合医学講座(精神医学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
8,992,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
リン酸化タウ凝集阻害やその分解促進を行うことでシナプス消失、神経脱落を抑制し、アルツハイマー病(AD)の根本的治療法を確立する1事を目的とする。
研究方法
1)ERストレスによる神経細胞内タウ凝集の研究神経細胞にERストレスを負荷すると、タウが上昇することを確認し、それがタウの転写、翻訳、さらに分解過程によるものかを検討した。 2)タウの伝播性の研究-培養細胞内へのタウ線維の導入大腸菌から精製した3,4リピートタウを線維化し、神経細胞にリポフェクションして伝播するかを検討した。 3)顆粒状タウ凝集体-を標的とする治療法に関する研究 タウと結合活性を持つ化合物を、リコンビナントヒトタウとヘパリン存在化でインキュベートし、凝集阻害活性をチオフラビン蛍光で測定して、タウ凝集阻害物質を検索し、タウTGマウスで検討した。 4)タウワクチンの開発 リン酸化タウペプチドでマウスを免疫し、抗タウ抗体価について解析した。 5)シャペロン誘導剤BIXの開発 BiPのプロモーター領域を用いたルシフェラーゼレポーターアッセイ系によりコンパウンドライブラリーを検索した結果、BIX(BiP inducer X)を開発し、動物実験等で検証した。6.tauopathyとしてのAD病患者の精神行動評価についての研究ADとMCIの診断基準を満たす患者に対してNeuropsychiatric Inventory (NPI)で精神行動障害の評価を行った。
結果と考察
ERストレスによりタウ蛋白の蓄積が認められ、ERストレスの抑止がタウ凝集阻害に繋がる可能性が示された。また、細胞にタウ線維を導入試薬で導入すると、細胞内にタウの凝集が観察され、タウの伝播がtauopathy形成に関与する事が示された。神経脱落に関与する顆粒状タウ凝集体形成を阻害する既存薬X1が得られ、P301Lタウ発現マウスに投与したところ、神経障害の抑止が認められた。また、タウ発現マウスにリン酸化タウペプチドを用いたワクチンを投与したところ、タウの蓄積の現象が観察された。シャペロン誘導剤BIXは神経変性過程を抑止する可能性が示された。また、ADに対するタウ線維凝集阻害物質の臨床治験をおこなうための臨床評価としては、精神行動障害の評価尺度としてのNPIの有用性を示唆するものとも考えられた。
結論
リン酸化タウ凝集阻害やその分解促進を行うために、ERストレス抑止、顆粒状タウ凝集体形成を阻害する既存薬X1、タウワクチン、さらにはシャペロン誘導剤BIXが有効である可能性が示された。
公開日・更新日
公開日
2012-08-23
更新日
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