文献情報
文献番号
201115020A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者に対する適切な医療提供に関する研究
課題番号
H22-長寿・指定-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
秋下 雅弘(東京大学医学部附属病院 老年病科)
研究分担者(所属機関)
- 江頭 正人(東京大学医学部附属病院 老年病科/医療評価・安全・研修部)
- 荒井 啓行(東北大学加齢医学研究所 脳科学研究部門・加齢老年医学研究分野)
- 神崎 恒一(杏林大学医学部 高齢医学)
- 遠藤 英俊(国立長寿医療研究センター)
- 荒井 秀典(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
- 葛谷 雅文(名古屋大学大学院医学系研究科 地域在宅医療学・老年科学分野)
- 高橋 龍太郎(東京都健康長寿医療センター 東京都老人総合研究所)
- 鳥羽 研二(国立長寿医療研究センター病院)
- 堀江 重郎(帝京大学医学部 泌尿器科学)
- 山田 和彦(全国老人保健施設協会)
- 武久 洋三(日本慢性期医療協会)
- 武川 正吾(東京大学大学院人文社会系研究科 社会学研究室)
- 森田 朗(東京大学大学院法学政治学研究科)
- 三上 裕司(日本医師会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
15,381,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
様々な要因から混乱の多い高齢者に対する医療提供のあり方について基礎データを得るための調査・研究を行い、指針作成につなげることを目的とした。
研究方法
1)高齢者を診療する5学会の専門医、介護老人保健施設の医師、認知症患者の家族を対象として、重要だと考えられる12項目に優先順位を付けてもらい、集計・解析した。2)高齢者医療研修会参加医師を対象に、治療方針決定に影響する15項目の定量的アンケートと薬物療法に関するグループワークのレポート分析を行った。3)老人保健施設を対象に、「慎重投与薬リスト」の導入の有効性を検討する施設単位のクロスオーバー無作為比較試験を行った。介入群では、入所時に担当者(薬剤師、看護師)がリスト該当薬を確認し、診療録に貼り付け、その後3か月の経過を調査した。
結果と考察
1)優先順位調査:認知症患者の家族では「病気の効果的な治療」が一位、5領域の専門医および老健医師では「QOLの改善」が一位と、上位項目には受療側と提供側で昨年同様の乖離がみられた。また、死亡率低下の優先順位は昨年度同様、どの集団でも低かった。2)治療方針決定因子:影響の大きい上位項目は、有害事象の可能性、アドヒアランス、さらに合併疾患の存在であった。また、服薬アドヒアランスや家族によるサポート、薬剤の減量・減薬の必要性が全グループに共通した薬物療法の重要項目として挙がった。3)慎重投与薬リストの介入試験:1次調査の92施設698例を解析し、服薬数は両群とも入所1か月以降に約0.6剤/名減少し、群間差を認めなかったが、リスト該当薬の処方は介入群でのみ1か月以降有意に減少していた。入所1か月~3か月の誤嚥・肺炎・呼吸不全の発生頻度は非介入群に比べて介入群で有意に少なかった一方、転倒・骨折を含めて他のイベント発生は両群で同等であった。
結論
1)優先順位調査の結果は、高齢者医療の提供や政策・研究の立案に際して参考になる。2)医師の治療方針決定には有害事象、アドヒアランス、合併疾患の影響が大きいようである。3)慎重投与薬リストの使用により、同該当薬の処方と一部のイベント発生を減らす効果が期待できる。
公開日・更新日
公開日
2012-07-20
更新日
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