認知症・関節症・骨折の疫学エビデンスの解明と要介護高齢者の一次・二次予防のための効率的評価システムの開発

文献情報

文献番号
201115012A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症・関節症・骨折の疫学エビデンスの解明と要介護高齢者の一次・二次予防のための効率的評価システムの開発
課題番号
H21-長寿・若手-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
岡 敬之(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター 関節疾患総合研究講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,115,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域代表性を有する一般住民コホートの前向き縦断調査により、認知症、変形性膝関節症・変形性腰椎症、骨折の危険因子を解明して要介護度との関係を検証し、要介護移行予測ツールを開発することを目的に、本調査では変形性膝関節症のX線画像縦断変化に関する検討を行った。
研究方法
変形性膝関節症(膝OA)のX線画像上の重症度指標を自動計測し定量評価を行うKOACADシステムを、大規模住民コホート研究ROAD studyに適用し、膝X線画像の縦断変化に関する検討を行った。コホート参加者1、690人のうち、ベースライン調査と第1回追跡調査(3年後)ともに膝X線画像が得られた1、318人(男性444人、女性874人)に対して解析を行った。
結果と考察
ベースライン調査と第1回追跡調査の縦断変化量(3年)を求めたところ、内側関節裂隙最小距離(mJSW)は男女とも49歳以下、 50-59歳、 60-69歳、 70-79歳、 80歳以上の年齢層全てで減少しており骨棘面積(OPA)は年齢層全てで増大していた。内側mJSWの縦断変化を従属変数に、身長、BMI、ベースライン時の内側mJSW、ベースライン時のOPA、OPAの縦断変化を独立変数として一般化線形モデルを用いた解析を行った結果(性・年齢調整)、身長とベースライン時のOPAは内側mJSWの縦断変化と関連がなく、BMI(p<0.0001)、ベースライン時のmJSW(p<0.0001)、OPAの縦断変化(p=0.0006)に有意な関連を認めた。
結論
上記の情報をKOACADシステムに還元し、要介護と関連が深い膝OAの診断に有用なツールを構築した。

公開日・更新日

公開日
2012-07-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201115012B
報告書区分
総合
研究課題名
認知症・関節症・骨折の疫学エビデンスの解明と要介護高齢者の一次・二次予防のための効率的評価システムの開発
課題番号
H21-長寿・若手-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
岡 敬之(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター 関節疾患総合研究講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
膝痛・腰痛、骨折の主要原因疾患である変形性膝関節症・腰椎症、骨粗鬆症に関する基本疫学指標を確立し、その危険因子を解明することであり、更に生活機能低下との関係を検証し、要介護移行予測ツールを開発する。
研究方法
申請者が開発したX線自動測定プログラムを用いて膝・股関節・脊椎の定量値を求め、変形性膝関節症・股関節症・腰椎症と脊椎圧迫骨折を自動診断するための基準値を算出し、各運動器疾患の有無と重症度を判定できるシステムを開発する。
追跡で得られた縦断データの解析により、認知症、変形性膝関節症・股関節症・腰椎症、骨粗鬆症性骨折の発生率、有病率推移を明らかにする。また横断的データ解析で得られた危険因子について、縦断データ解析により検証する。疫学指標、危険因子、生活機能・要介護度との関係に関するエビデンスをもとにWINDOWS OS上で稼働し、簡便に利用できる要介護移行者予測ツールを開発する。
結果と考察
要介護高齢者数を減少させるためには、運動器疾患、特に膝OA・骨粗鬆症性圧迫骨折の正確な評価が必要なこと想像に難くない。このため重症度定量ソフトウエアKOACAD(knee OA computer assisted diagnosis)にて膝OAの重症度の診断基準値を明らかにし、ソフトウエアに搭載することで自動診断が可能となった。
同ソフトウエアは、微細な変化も検出可能であり、再現性も優れていることが確認されており、縦断変化の客観的かつ定量的な評価に力を発揮し、骨棘の新規発生が関節裂隙狭小化を促進する可能性を示唆する興味深い知見が得られた。上述したKOACAD以外にも股関節・脊椎の自動計測ソフトウエアが完成し、脊椎に関しては特許申請が終了、股関節においては、臼蓋被覆度・大腿骨頸部形態・大腿骨皮質骨厚などの従来の手動測定では計測が難しく、全ての項目の計測に1時間以上要した約100項目に関して1秒で出力が可能なアルゴリズムを考案し、特許申請準備中である。
結論
上記ソフトウエアは共通のプラットフォーム上で稼働するよう工夫し、OAのX線画像定量値・認知機能(MMSE)・骨密度・筋肉量・握力・片足立ち時間に関して年齢毎の基準値を明らかにした

公開日・更新日

公開日
2012-07-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201115012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本邦において、要介護移行への原因疾患と考えられる疾患に関する疫学調査は少ない。特にこれら疾患の定量評価は皆無に等しいと言ってよい。このため地域代表性を有する一般住民コホートの前向き縦断調査により、認知機能の低下や、膝痛・腰痛、骨折の主要原因疾患である変形性膝関節症・腰椎症、骨粗鬆症に関する基本疫学指標を確立し、その危険因子を同定した。
臨床的観点からの成果
要介護高齢者数を減少させるためには、運動器疾患、特に膝OA・骨粗鬆症性圧迫骨折の正確な評価が必要なこと想像に難くない。このため重症度定量ソフトウエアKOACAD(knee OA computer assisted diagnosis)にて膝OAの重症度の診断基準値を明らかにし、ソフトウエアに搭載することで自動診断が可能となった。
ガイドライン等の開発
ガイドラインに開発には至っていない
その他行政的観点からの成果
厚生労働省より配布されたパンフレット内に本研究のタイトルで研究内容が紹介された
その他のインパクト
膝OAの単純X線自動定量評価技術はMicrosoft Innovation Award 2010最優秀賞を受賞し、観察研究で確立した疫学指標と組み合わせることによって、診断および予防・治療効果について判定するシステムが一般的な医療施設にも導入されている。。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
27件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
63件
学会発表(国際学会等)
26件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
2件の出願を行っているが、まだ取得には至っていない。
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
厚生労働省より配布されたパンフレット内に研究内容が紹介された

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshimura N, Muraki S, Oka H, etal.
Epidemiology of lumbar osteoporosis and osteoarthritis and their causal relationship - Is osteoarthritis a predictor for osteoporosis, or vice-versa?: The Miyama Study.
Osteoporos Int , 20 , 999-1008  (2009)
原著論文2
Muraki S, Akune T, Oka H, etal.
Association of occupational activity with radiographic knee osteoarthritis and lumbar spondylosis in elderly patients of population-based cohorts: a large-scale population-based study.
Arthritis Care & Research , 61 , 779-786  (2009)
原著論文3
Muraki S, Oka H, Akune T, etal.
Prevalence of radiographic lumbar spondylosis and its association with low back pain in elderly subjects of population-based cohorts: the ROAD study.
Ann Rheum Dis , 68 , 1401-1406  (2009)
原著論文4
Yoshimura N, Muraki S, Oka H,etal.
Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study.
J Bone Miner Metab , 27 , 620-628  (2009)
原著論文5
Oka H, Akune T, Muraki S, etal.
Low dietary vitamin K intake is associated with radiographic knee osteoarthritis in the Japanese elderly: Dietary survey in a population-based cohort of the ROAD study.
J Orthop Sci , 14 , 687-692  (2009)
原著論文6
Muraki S, Oka H, Akune T,etal.
Prevalence of radiographic knee osteoarthritis and its association with knee pain in the elderly of Japanese population-based cohorts: the ROAD study.
Osteoarthritis Cartilage , 17 , 1137-1143  (2009)
原著論文7
Yoshimura N, Muraki S, Oka H, et al.
Cohort Profile: Research on Osteoarthritis/osteoporosis Against Disability (ROAD) Study.
Int J Epidemiol , 39 , 988-995  (2010)
原著論文8
Muraki S, Akune T, Oka H, et al.
Impact of knee and low back pain on health-related quality of life in Japanese women: The ROAD Study.
Modern Rheum , 5 , 444-451  (2010)
原著論文9
Oka H, Muraki S, Akune T, et al.
Normal and threshold values of radiographic parameters for knee osteoarthritis using a computer-assisted measuring system (KOACAD): The ROAD Study
J Orthop Sci , 15 , 771-789  (2010)
原著論文10
Muraki S, Akune T, Oka H, et al.
Association of radiographic and symptomatic knee osteoarthritis with health-related quality of life in a population-based cohort study in Japan: The ROAD Study
Osteoarthritis Cartilage , 18 , 1227-1234  (2010)
原著論文11
Yoshimura N, Muraki S, Oka H, et al.
Capacity of endogenous sex steroids to predict bone loss, osteoporosis and osteoporotic fracture in Japanese men: Ten-year follow-up of the Taiji Cohort Study
J Bone Miner Metab , 29 , 96-102  (2011)
原著論文12
Yoshimura N, Muraki S, Oka H, et al.
Association of knee osteoarthritis with the accumulation of metabolic risk factors such as overweight, hypertension, dyslipidaemia, and impaired glucose tolerance in Japanese men and women: The ROAD Study
J Rheum , 38 , 921-930  (2011)
原著論文13
Muraki S, Oka H, Akune T, et al.
Association of occupational activity with joint space narrowing and osteophytosis in the medial compartment at the knee: The ROAD study
Osteoarthritis Cartilages , 19 , 840-846  (2011)
原著論文14
Muraki S, Akune T, Oka H, et al.
Health-related quality of life in subjects with low back pain and knee pain in a population-based cohort study of Japanese men: The Research on Osteoarthritis Against Disability Study.
Spine (Phila Pa 1976) , 36 , 1312-1319  (2011)
原著論文15
Yoshimura N, Oka H, Muraki S, et al.
Reference values for hand grip strength, muscle mass, walking time, and one-leg standing time as indices for locomotive syndrome and associated disability: The second survey of the ROAD study.
J Orthop Sci , 16 , 768-777  (2011)
原著論文16
Yoshimura N, Muraki S, Oka H, et al.
Biochemical markers of bone turnover as predictors for occurrence of osteoporosis and osteoporotic fractures in men and women: Ten-year follow-up of the Taiji cohort study.
Modern Rheum , 21 , 608-620  (2011)
原著論文17
Muraki S, Akune T, Oka H, et al
Prevalence of falls and its association with knee osteoarthritis and lumbar spondylosis as well as knee and low back pain in Japanese men and women
Arthritis Care Res , 63 , 1426-1431  (2011)
原著論文18
Muraki S, Akune T, Oka H, et al
Indipendent association of joint space narrowing and osteophyte formation at the knee with health-related quality of life in Japan: A cross-sectional study
Arthritis Rheum , 63 , 3859-3864  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201115012Z