網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療臨床研究

文献情報

文献番号
201114029A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療臨床研究
課題番号
H22-臨研推・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 達朗(九州大学 眼科)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 康博(九州大学病院 眼科)
  • 米満 吉和(九州大学 薬学研究院・革新的バイオ医薬創成学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
26,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、網膜色素変性(retinitis pigmentosa: RP)に対する視細胞保護遺伝子治療に関連したこれまでの効能試験ならびに安全性試験の結果を臨床研究実施へとスムーズに移行することを目的として、1.遺伝子治療臨床研究への準備(治療用ベクターのGMP生産と厚生科学審議会での実施計画の審議)、2.サルを用いた長期安全性試験の最終評価、3.ヒト色素上皮由良因子(human pigment epithelium-derived factor: hPEDF)の持つ視細胞保護効果の分子メカニズムの解明、という3つのテーマで研究を行う。
研究方法
1.治療用ベクターの実生産は平成22年度中に完了し、九州大学病院に保管・管理されている。本年度は、最終生産物に対する品質管理試験を実施する。また、平成22年度に厚生科学審議会へ申請した臨床研究実施計画の審議を受け、臨床研究実施へ向けた最終段階の準備を整える。
2.長期安全性試験を実施した個体を用いて、主要臓器の病理組織学的検討、ならびに眼組織におけるベクターゲノムの検出を行う。
3.RPモデル動物であるrd10マウスを用いた視細胞死に関連した実験とRP患者より採取した硝子体液を用いた解析を行う。
結果と考察
本年度得られた成果は、1.最終生産物(治療用ベクター)に対する品質管理試験の実施と厚生科学審議会での審査、2.カニクイザルにおける長期安全性の最終確認、3.RPにおける視細胞死と炎症反応や酸化ストレスとの関連の解明、である。予定していた研究内容で達成できていない項目は、「臨床研究薬の複製可能レンチウイルス(RCL: replication competent lentivirus)否定試験」、ならびに「厚生科学審議会における臨床研究実施計画の審査」であるが、いずれも平成24年度上旬に完了する見通しとなっている。
結論
臨床研究開始までの準備は着実に進んでおり、平成24年度中の開始を目指している。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

文献情報

文献番号
201114029B
報告書区分
総合
研究課題名
網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療臨床研究
課題番号
H22-臨研推・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 達朗(九州大学 眼科)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 康博(九州大学 眼科)
  • 米満 吉和(九州大学 革新的バイオ医薬創成学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、網膜色素変性(retinitis pigmentosa: RP)に対する視細胞保護遺伝子治療に関連したこれまでの効能試験ならびに安全性試験の結果を臨床研究実施へとスムーズに移行することを目的として、1.遺伝子治療臨床研究への準備(治療用ベクターのGMP生産と厚生科学審議会での実施計画の審議)、2.サルを用いた長期安全性試験の最終評価、3.ヒト色素上皮由良因子(human pigment epithelium-derived factor: hPEDF)の持つ視細胞保護効果の分子メカニズムの解明、という3つのテーマで研究を行う。
研究方法
1.Vector Gene Technology(VGTC)社(中華人民共和国・北京市)においてGMP基準を満たす治療用ベクターの実生産を行い、その品質管理試験を実施する。また、平成20年10月3日に学内倫理委員会にて承認を受けた臨床研究実施計画を厚生科学審議会に提出し、審議を受ける。
2.カニクイザルに治療用ベクターを網膜下投与し、全身ならびに眼局所の反応を経時的に約5年間観察する。経過観察終了後、それぞれの個体を病理解剖し、主要臓器から組織等を採取し、病理組織学的検討等を実施する。
3.RPモデル動物であるrd10マウスを用いた視細胞死に関連した実験とRP患者より採取した硝子体液を用いた解析を行う。
結果と考察
1.臨床研究実施に向けて、治療用ベクターの品質管理試験ならびに厚生科学審議会での審議が順調に進められている。
2.治療用ベクターの網膜下投与により、少なくとも5年間の安定した遺伝子発現が得られるとともに、全身ならびに眼局所への影響は大きくないことが明らかとなった。
3. ゲノム酸化損傷がアポトーシス誘導因子(apoptosis-inducing factor: AIF)のミトコンドリアからの放出を制御することでRPの病態に関与していることが示唆された。従って、ゲノム酸化損傷をコントロールすることにより、その後に生じる下流のシグナルを抑制することで、視細胞死を抑制できることが示された。また、RPにおける視細胞死に酸化ストレスを介した炎症反応の関与が示唆された。酸化ストレスをコントロールすることで炎症反応の抑制と視細胞死の抑制が認められたことより、RPの新しい治療法として、抗酸化ストレス療法、ならびに抗炎症療法が有用である可能性が考えられた。
結論
臨床研究開始までの準備は着実に進んでおり、平成24年度中の開始を目指している。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201114029C

成果

専門的・学術的観点からの成果
・申請していた臨床研究「神経栄養因子(ヒト色素上皮由来因子:hPEDF)遺伝子搭載第3世代組換えアフリカミドリザル由来サル免疫不全ウイルスベクターの網膜下投与による網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療臨床研究」の実施計画について、厚生労働大臣より了承を取得した(平成24年8月)。
・臨床研究実施するための施設内体制を整備した。
・実施了承に引き続き、速やかに臨床研究を開始した(平成25年3月)。
・本臨床研究に引き続く医師主導治験の準備を開始した。
臨床的観点からの成果
・平成26年1月までに低用量群5例への投与が完了し、高用量群へのステージアップが承認された(平成26年5月)。
・低用量群5例全例の観察期間(2年間)を終了した。現時点で、臨床研究が中止となるような重篤な副作用等は観察されていない。
・臨床研究薬を投与した眼内において、治療遺伝子の発現産物(ヒト色素上皮由来因子タンパク質)が確認できた。
ガイドライン等の開発
厚生科学審議会に臨床研究実施計画を申請し、第61回厚生科学審議会科学技術部会(平成22年12月22日開催)にて、作業委員会で個別に審議することが決定した。第1回網膜色素変性遺伝子治療臨床研究作業委員会は平成24年1月13日に開催され、平成24年7月13日に開催された第73回厚生科学審議会において了承された。平成24年8月23日、厚生労働大臣より実施の了承を取得した。
その他行政的観点からの成果
特記事項なし。
その他のインパクト
平成24年8月23日に厚生労働大臣より実施の了承を取得したことに関連して、新聞に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
日本眼科学会総会 4件、日本臨床眼科学会 3件、日本網膜硝子体学会 1件、日本遺伝子治療学会 2件、日本再生医療学会 1件、など
学会発表(国際学会等)
8件
ARVO 2011 1件、WOC 2012 1件、ARVO 2012 1件、ESGCT 2012 1件、ESGCT 2013 1件、WOC 2014 1件、ARVO 2014 1件、など
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
1件
「SIV-PEDFベクターを用いた眼組織細胞におけるアポトーシス変性を伴う疾患の治療薬(用途特許)」(特許番号:4959547)
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
SIV-PEDFベクターを用いた眼組織細胞におけるアポトーシス変性を伴う疾患の治療薬
詳細情報
分類:
特許番号: 4959547
発明者名: ディナベック株式会社、国立大学法人九州大学
権利者名: ディナベック株式会社、国立大学法人九州大学
出願年月日: 20060221
取得年月日: 20120330
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201114029Z