高齢者におけるアスピリンの一次予防効果に関する研究―消化管障害に注目したリスク&ベネフィットの検討

文献情報

文献番号
201114026A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者におけるアスピリンの一次予防効果に関する研究―消化管障害に注目したリスク&ベネフィットの検討
課題番号
H21-臨床研究・一般-019
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
池田 康夫(早稲田大学 理工学術院 先進理工学研究科 生命医科学科専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 内山真一郎(東京女子医科大学 神経内科 )
  • 島田和幸(自治医科大学附属病院 循環器内科)
  • 寺本民生(帝京大学医学部 内科学 )
  • 安東克之(東京大学大学院医学系研究科 内科学)
  • 山田信博(筑波大学 人間総合科学研究科 臨床医学系 )
  • 山崎力(東京大学大学院医学系研究科 臨床疫学システム)
  • 及川眞一(日本医科大学 第3内科)
  • 上村直実(国立国際医療研究センター 国府台病院 )
  • 平石秀幸(獨協医科大学 内科)
  • 溝上裕士(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 横山健次(慶應義塾大学医学部 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
44,794,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
低用量アスピリンはアテローム血栓症の二次予防薬としてのエビデンスが確立しているが、一次予防効果については未だ議論があるところであり、その結論が待たれている。我が国では、平成17年より低用量アスピリン (100mg/日) の一次予防効果を検証する大規模臨床研究が動脈硬化のリスク因子を有する高齢者(14,659名)を対象に開始されている (JPPP試験)が、本研究ではリスク/ベネフィットの視点からアスピリンの消化器障害に特に焦点を当て検討を行った (JPPPGI試験)。
研究方法
最終年度に当たる平成23年度では、JPPP 試験の平成22年、23年の年次調査で報告された消化管有害事象について、更に詳細な二次調査を実施し、その結果を解析した。また、参画医師や患者さんへの啓発活動として、消化管粘膜障害に関するリーフレットやアスピリン消化管障害の文献集の作成の他、市民公開講座を開催した。
結果と考察
JPPP試験登録患者のデータベースから得られた消化管合併症の集計を行い、その発現に関する詳細な調査票を送付した。平成22年度の二次調査迄で、治療群を分けない登録患者全体での累積罹患率曲線を作成し、消化管合併症に影響する要因についてポアソン回帰で検討した。平成22年9月時点での調査対象患者は13,924名で、消化管出血症例が累積で144例(1,0%)であった。出血原因としては上部消化管病変による出血が70例(56%)と過半数を占めた。その内訳は胃潰瘍、十二指腸潰瘍が46例(66%)と多く、一般人口を対象とした場合と比べて上部消化管出血の原因として消化性潰瘍の占める割合が多かった。一方、下部消化管からの出血例は54例であり、大腸癌が13例(24%) と多く、次いで、大腸憩室12例、虚血性腸炎8例であった。212例の消化性潰瘍は男女比はほぼ同数であり、実地臨床で経験される比率、男女比3対1前後と比較して女性に多くみられた。
消化管癌は171例にみられたが、胃癌が73例と約半数を占めた。その他、大腸癌53例、膵臓癌15例等であった。
結論
JPPP試験における消化管有害事象を詳細に調査した。 本研究の成果は、JPPP試験がkey openされた際に、リスク/ベネフィットの観点からアスピリンの一次予防効果を検証する上で重要な資料となる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

文献情報

文献番号
201114026B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者におけるアスピリンの一次予防効果に関する研究―消化管障害に注目したリスク&ベネフィットの検討
課題番号
H21-臨床研究・一般-019
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
池田 康夫(早稲田大学 理工学術院 先進理工学研究科 生命医科学科専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 内山 真一郎(東京女子医科大学 神経内科)
  • 島田 和幸(自治医科大学 附属病院 循環器内科)
  • 寺本 民生(帝京大学 医学部 内科学)
  • 安東 克之(東京大学大学院医学系研究科 内科学)
  • 山田 信博(筑波大学 人間総合科学研究科 臨床医学系)
  • 山崎 力(東京大学大学院医学系研究科 臨床疫学システム)
  • 及川 眞一(日本医科大学 第三内科)
  • 上村 直実(国立国際医療研究センター 国府台病院)
  • 平石 秀幸(獨協医科大学 内科)
  • 溝上 裕士(筑波大学 附属病院 光学医療診療部)
  • 横山 健次(慶應義塾大学 医学部 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
低用量アスピリンはアテローム血栓症の二次予防薬としてのエビデンスが確立しているが、一次予防効果については未だ議論があるところであり、その結論が待たれている。我が国では、平成17年より低用量アスピリン (100mg/日) の一次予防効果を検証する大規模臨床研究が動脈硬化のリスク因子を有する高齢者(14,659名)を対象に開始されている (JPPP試験)。 JPPP試験におけるリスク/ベネフィットの検証の一助としてアスピリンの消化器障害に注目して調査を行った (JPPPGI試験)。
研究方法
平成21年度はJPPP 試験の年次調査で記入された消化管障害の有無、服薬歴をまとめた後、詳細な二次調査を実施した。平成22年, 23年度も同様にJPPP試験の年次調査にリンクして詳細調査を行い、消化管に関する有害事象(消化管出血、消化性潰瘍、びらん性胃炎、等)を解析した。また、精度の高い追跡調査を可能にするために参画医師や患者さんの理解と協力が不可欠であることから協力者のモチベーション維持の為に啓蒙活動も行った。
結果と考察
消化管有害事象の詳細調査の結果は、治療群を分けない登録患者全体での累積罹患率曲線を作成し、消化管合併症に影響する要因についてポアソン回帰で検討した。平成23年9月時点での調査対象患者は13,924名で、消化管出血症例が累積で144例(1,0%)であった。出血原因としては上部消化管病変による出血が70例(56%)と過半数を占めた。その内訳は胃潰瘍、十二指腸潰瘍が46例(66%)と多く、一般人口を対象とした場合と比べて上部消化管出血の原因として消化性潰瘍の占める割合が多かった。一方、下部消化管からの出血例は54例であり、大腸癌が13例(24%) と多く、次いで、大腸憩室12例、虚血性腸炎8例であった。212例の消化性潰瘍は男女比はほぼ同数であり、実地臨床で経験される比率、男女比3対1前後と比較して女性に多くみられた。
消化管癌は171例にみられたが、胃癌症例が73例と約半数を占めた。その他、大腸癌53例、膵臓癌15例等であった。
患者啓発、参画医師のモチベーション維持の為の活動をおこなった。
結論
JPPP試験における消化管有害事象を詳細に調査した。 本研究の成果は、JPPP試験がkey openされた際に、リスク/ベネフィットの観点からアスピリンの一次予防効果を検証する上で重要な資料となる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201114026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高血症、高脂血症、または糖尿病を有する高齢者60-85歳を対象とした低用量アスピリンの動脈血栓症一次予防試験JPPP試験は我が国最大のランダム化比較試験であり、その結果に国内外の注目が集まっている。アスピリンの一次予防効果を評価するには、リスク/ベネフィットの観点からの検討が必要で、アスピリンの主たる有害事象の消化管障害の詳細な検討は重要でありアテローム血栓症の二次予防に広く用いられるアスピリンの服用患者は数百万人以上と言われ、当研究結果は日常臨床の現場にも有用な状況を提供する。
臨床的観点からの成果
二次詳細調査13,018症例の消化管障害の有無を解析。消化管出血120例、上部消化管病変60例が原因。下部消化管出血は大腸憩室が多く、次に大腸癌、虚血性腸炎、大腸ポリープ。消化性潰瘍161例、男性79例、女性82例、実地臨床の男女比と比べ女性に高頻度。癌107例、約半数が胃癌、胃癌集団検診の発見率とほぼ同様。他大腸癌29例、膵臓癌10例等。2014年本試験の親試験JPPP試験の症例固定により本試験の癌発症に及ぼすアスピリンの影響を統計解析を実施中、今後の関係結果が待たれる。
ガイドライン等の開発
本試験の結果は親試験であるJPPP試験のキーオープンがあるまでは明らかにされないが、非常に多数の症例が登録され、しかも我が国の消化器内科をリードする班員の指導のもと詳細な調査を行っている。死亡診断書に迄遡って死因を追求した事で、その手続きに時間を要し、当初の計画より遅れて2014年に症例固定され、現在解析を行っているが、この結果は必ずや国内外の血栓症予防ガイドラインに反映されるものと思われる。
その他行政的観点からの成果
アスピリンは数百万人以上が服用している薬剤である為,このような大規模臨床研究の結果は行政上も非常に重要であり,JPPP試験のkey open が行われ、結果が出次第、直ちに何らかの通達を出す必要に迫られる可能性が大きい。一次予防としてその服用を奨める事にするか? 二次予防も含めてその服用時の注意事項を徹底させるか等である。
その他のインパクト
次の二つの市民公開講座を開催した。
①2011年2月26日、平成22年度JPPPGI市民公開講座「脳卒中・心筋梗塞の予防をめざして-抗血栓療法と消化器障害-」会場:東京大学医学部付属病院大会議室 ②2011年1月21日 平成23年度JPPPGI市民公開講座「脳卒中・心筋梗塞の予防を目指して-チャレンジし続ける人生のために-」会場慶應義塾大学医学部北里講堂

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
American Heart Journal Vol.159,(3),361-369, 2011, 親試験JPPP Study
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
Journal of the American Medical Association,Vol.312,(23),2510-2520 & 2503-2504, 2014, 親試験JPPP Study
学会発表(国内学会)
2件
日本脳卒中学会(2015年3月26日-29日)@広島 ⇒親試験JPPP Study 2.日本循環器学会(2015年4月24日-26日)@大阪 ⇒親試験JPPP Study
学会発表(国際学会等)
3件
1.AHA2014@Chicago⇒親試験JPPP Study 2.ISC2015@Nashville⇒親試験JPPP Study 3.ASH2015@Orland⇒親試験JPPP Study
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件
参画医師に啓蒙用に次を配布: リーフレット「低用量アスピリンによる消化管粘膜傷害」(vol.1,2,3) アスピリン消化管障害推奨文献抄訳集 市民公開講座DVD (H22年, H23年)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-06-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201114026Z