日本人糖尿病合併冠動脈疾患患者において積極的脂質低下・降圧療法の妥当性を問うランダム化臨床試験および観察研究

文献情報

文献番号
201114024A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人糖尿病合併冠動脈疾患患者において積極的脂質低下・降圧療法の妥当性を問うランダム化臨床試験および観察研究
課題番号
H21-臨床研究・一般-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
植田 真一郎(琉球大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 野出 孝一(佐賀大学 医学部)
  • 井上 卓(琉球大学 附属病院)
  • 勝亦 百合子(琉球大学 医学部)
  • 松島 雅人(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 大屋 祐輔(琉球大学 医学研究科)
  • 佐田 政隆(徳島大学 医学研究科)
  • 東 幸仁(広島大学 医学研究科)
  • 島田 健永(大阪市立大学 医学研究科)
  • 石橋 豊(島根大学 附属病院)
  • 植田 育子(慶應義塾大学 医学部)
  • 今西 政仁(大阪市立総合医療センター 臨床教育研究部)
  • 香坂 俊(慶應義塾大学 医学部)
  • 百村 伸一(自治医科大学 さいたま医療センター)
  • 安 隆則(琉球大学 医学研究科)
  • 安藤 真一(社会福祉法人恩賜財団済生会支部福岡県済生会二日市病院 循環器科)
  • 新崎 修(医療法人友愛会 豊見城中央病院)
  • 仲田 清剛(社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 循環器内科)
  • 川満 克紀(i医療法人 沖縄徳州会 南部徳州会病院 )
  • 古堅 勝也(沖縄県 沖縄県企画部 科学技術振興課)
  • 寺本 美幸(沖縄県 沖縄県企画部 科学技術振興課)
  • 田口 晴之(大阪掖済会病院 心臓血管内科)
  • 門上 俊明(社会福祉法人恩賜財団済生会支部福岡県済生会二日市病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
44,524,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、日本人の糖尿病合併冠動脈疾患患者における妥当な治療に関するエビデンスを創出することである。内的妥当性が高く、かつ現実的なRCTと、外的妥当性が高く、かつ交絡因子の影響を最小限にしてeffectivenessを評価できる観察研究を並行して実施し、現実世界の患者に適用可能で、信頼性の高い結果を得る。あわせて地域での質の高い臨床研究ネットワーク構築、臨床研究ができる医師、支援人材の育成を目指す。
研究方法
観察研究は糖尿病合併冠動脈疾患患者をCAG記録から2006年より連続的に登録し、後ろ向きコホートの形で5年間の観察期間を設け半年おきの血圧、脂質、アウトカムとして死亡、脳卒中、心筋梗塞を記録する。ランダム化比較試験はそのうちACSの既往が有る患者を対象とし、積極的治療(目標LDL85mg/dl, 目標血圧130mmHg)とガイドラインに沿った標準治療に割り付け,3年間観察する。エンドポイントは死亡,脳卒中、心筋梗塞、不安定狭心症。
結果と考察
観察研究では観察期間中の血圧130mmHg未満および下四分位点である123mmHg未満は複合アウトカム(死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)のリスクと関連しなかった。LDLも100mg/dl未満、あるいは88mg/dl未満と死亡および心血管イベントのリスクは関連していない。しかし死亡のみ解析するとLDL88mg/dl未満(HR2.12, p=0.027)、また収縮期血圧123mmHg未満(HR1.87, p=0.038)でむしろリスクが高かった。ランダム化比較試験は現在登録中で平成24年度一杯まで登録を継続する。
診断後の血圧と脂質が予後に影響するかどうかを検討した。結果としては登録後積極的に降圧あるいは脂質を低下させた群とそれ以外の群とで死亡および心血管イベントの差は認めなかった。しかし死亡単独では観察開始後の血圧と脂質が下四分位点未満の群でリスクが有意に高かった。この結果は交絡因子による因果の逆転が生じた可能性を排除できないが、今後患者登録の追加、継続的な観察と解析が必要である。最終的な結論はランダム化比較試験の結果を待つ必要がある。

結論
コホート研究では積極的な脂質低下や降圧が予後を改善するという証拠は得られなかった。むしろLDLの低値や血圧の低値が死亡リスクの増加と関連する可能性まで示唆された。結局糖尿病合併冠動脈疾患における積極的脂質低下、降圧療法の妥当性はランダム化比較試験の結果を待つ必要がある。

公開日・更新日

公開日
2012-07-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201114024B
報告書区分
総合
研究課題名
日本人糖尿病合併冠動脈疾患患者において積極的脂質低下・降圧療法の妥当性を問うランダム化臨床試験および観察研究
課題番号
H21-臨床研究・一般-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
植田 真一郎(琉球大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 野出 孝一(佐賀大学 医学部)
  • 井上 卓(琉球大学 附属病院)
  • 勝亦 百合子(琉球大学 医学部)
  • 松島 雅人(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 大屋 祐輔(琉球大学 医学研究科)
  • 佐田 政隆(徳島大学 医学研究科)
  • 東 幸仁(広島大学 医学研究科)
  • 島田 健永(大阪市立大学 医学研究科)
  • 石橋 豊(島根大学 附属病院)
  • 植田 育子(慶應義塾大学医学部)
  • 今西 政仁(大阪市立総合医療センター 臨床教育研究部)
  • 香坂 俊(慶應義塾大学 医学部)
  • 百村 伸一(自治医科大学 さいたま医療センター)
  • 安 隆則(琉球大学 医学研究科)
  • 安藤 真一(社会福祉法人恩賜財団済生会支部福岡県済生会二日市病院 循環器科)
  • 新崎 修(医療法人友愛会 豊見城中央病院)
  • 仲田 清剛(社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 循環器内科)
  • 川満 克紀(医療法人 沖縄徳州会 南部徳州会病院)
  • 古堅 勝也(沖縄県 沖縄県企画部 科学技術振興課)
  • 寺本 美幸(沖縄県 沖縄県企画部 科学技術振興課)
  • 田口 晴之(大阪掖済会病院 心臓血管内科)
  • 門上 俊明(社会福祉法人恩賜財団済生会支部福岡県済生会二日市病院 循環器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、日本人の糖尿病合併冠動脈疾患患者における妥当な治療に関するエビデンスを創出することである。内的妥当性が高く、かつ現実的なRCTと、外的妥当性が高く、かつ交絡因子の影響を最小限にしてeffectivenessを評価できる観察研究を並行して実施し、現実世界の患者に適用可能で、信頼性の高い結果を得る。あわせて地域での質の高い臨床研究ネットワーク構築、臨床研究ができる医師、支援人材の育成を目指す。
研究方法
糖尿病合併冠動脈疾患患者を後ろ向きコホートの形で5年間の観察期間を設け半年おきの血圧、脂質とエンドポイント(死亡、脳卒中、心筋梗塞)発生を記録した。ランダム化比較試験はACSの既往が有る患者を対象とし、積極的治療(目標LDL85mg/dl, 血圧120mmHg)とガイドラインに沿った標準治療に割り付け,観察期間は3年である。エンドポイントは死亡,脳卒中、心筋梗塞、不安定狭心症。
結果と考察
観察研究では観察期間中の血圧130mmHg未満および下四分位点である123mmHg未満は複合アウトカムのリスクと関連しなかった。LDLも100mg/dl未満、あるいは88mg/dl未満とアウトカムは関連していない。しかし死亡リスクはLDL88mg/dl未満(HR2.12, p=0.027)、収縮期血圧123mmHg未満(HR1.87, p=0.038)で高かった。ランダム化比較試験は現在登録中で平成24年度一杯まで登録を継続する。
血圧、脂質を低下した群とそれ以外の群とで心血管イベントの差は認めなかった。しかし死亡単独では観察開始後の血圧と脂質が下四分位点未満の群でリスクが有意に高かった。この結果は交絡因子による因果の逆転が生じた可能性を排除できないが、今後患者登録の追加、継続的な観察と解析が必要である。最終的な結論はランダム化比較試験の結果を待つ必要がある。
結論
より脂質や血圧が低い患者で予後がよいという証拠は得られず、むしろ死亡リスクの増加と関連する可能性まで示唆された。しかし結論はランダム化比較試験の結果を待つ必要がある。
われわれの提唱したRCT on REGISTRYはRCTとコホート研究を同一の母集団で並行して実施するシステムであるが、治療法の真の有効性について評価が可能である。
現在の動脈硬化性疾患の治療は多方面からの介入であり、ひとつのランダム化比較試験で解決できる問題は少ない。コホート研究で探索的な解析を行い、必要と考えられる薬剤、治療法に関して効率よくランダム化比較試験を実施する必要がある。そのような視点からも我々のRCT on REGISTRYは有用な手法である。

公開日・更新日

公開日
2012-07-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201114024C

収支報告書

文献番号
201114024Z