自家培養口腔粘膜上皮シート移植による角膜上皮再生治療法の多施設共同臨床試験

文献情報

文献番号
201114021A
報告書区分
総括
研究課題名
自家培養口腔粘膜上皮シート移植による角膜上皮再生治療法の多施設共同臨床試験
課題番号
H21-臨床研究・一般-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
西田 幸二(大阪大学 大学院医学系研究科 脳神経感覚器外科学(眼科学))
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 裕一(愛媛大学大学院医学系研究科眼科学)
  • 前田 直之(大阪大学大学院医学系研究科視覚情報制御学(トプコン)寄付講座)
  • 天野 史郎(東京大学医学系研究科・眼科学)
  • 布施 昇男(東北大学東北メディカルメガバンク機構ゲノム解析部門)
  • 嶋澤 るみ子(長崎大学大学院医薬薬学総合研究科生命医科学講座)
  • 山口 拓洋(東北大学大学院医学系研究科医学統計学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
56,508,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
角膜疾患のため失明した患者に対して、現在角膜移植が実施されているが、わが国では献眼数が絶対的に少なく、ドナーが不足している。また、重篤な角膜上皮疾患の場合は、特に拒絶反応のため、角膜移植が奏功しない。我々はこれらの問題を解決しうる、独自の自家培養口腔粘膜上皮細胞シート移植法を開発してきた。国際的にも評価の高い本治療法を今後標準医療として普及させていくため、多施設共同臨床研究を実施し、その有効性と安全性を検討する。
研究方法
3年計画の3年目にあたる本年は、厚生労働省の承認を得た大阪大学・東北大学において臨床試験を開始した。患者から口腔粘膜組織を採取して自施設のセルプロセシングセンターで培養し、細胞シートを作製して移植を行った。学内倫理審査委員会の承認を得た東京大学・愛媛大学についてはヒト幹細胞指針への適合性を諮るため厚生労働省へ書類を提出した。また、培養細胞シートの手術前評価方法の確立、航空機による細胞シート及び組織輸送技術開発を行った。
結果と考察
大阪大学において2例の患者治療を行った。両者ともに主要評価項目である「術後1年後の結膜化がなく、かつ上皮欠損の無い面積」はgrading0から5へと顕著に改善している。また、副次評価項目である視力は0.01から0.15及び0.08pへと改善し、角膜混濁、角膜血管新生についても改善が見られた。東北大学でも2例の患者治療を行い、主要評価項目でgrading0から5改善した。また、副次評価項目である視力は0.01から0.04及び0.02へと改善し、角膜混濁、角膜血管新生についても改善が見られた。さらに腫瘍性増殖や角膜感染症をはじめとした重大な有害事象は認めていない。さらに細胞シート及び組織を実際に航空機による輸送を行って開発した技術による輸送が可能であることを証明した。本研究の成果は角膜再生医療を広く普及させるための基盤となると考えられる。
結論
大阪大学及び東北大学では臨床研究を開始し、良好な治療成績を得ている。東京大学及び愛媛大学においては学内倫理審査委員会の承認を得て、厚生労働省にて審査が開始された。また大阪大学からは高度医療への申請を行った。多施設共同臨床試験を行うための、口腔粘膜組織及び培養細胞シートの航空機による輸送技術の開発も行った。今後はこれらの成果をもとにして本治療法の有効性と安全性を検証し、さらに高度医療評価制度を通じて薬事法による申請等につながる科学的評価可能なデータ収集の迅速化を図る。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

文献情報

文献番号
201114021B
報告書区分
総合
研究課題名
自家培養口腔粘膜上皮シート移植による角膜上皮再生治療法の多施設共同臨床試験
課題番号
H21-臨床研究・一般-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
西田 幸二(大阪大学 大学院医学系研究科 脳神経感覚器外科学(眼科学))
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 裕一(愛媛大学大学院医学系研究科眼科学)
  • 前田 直之(大阪大学大学院医学系研究科視覚情報制御学(トプコン)寄付講座)
  • 天野 史郎(東京大学医学系研究科・眼科学)
  • 布施 昇男(東北大学東北メディカルメガバンク機構ゲノム解析部門)
  • 嶋澤 るみ子(長崎大学大学院医薬薬学総合研究科生命医科学講座)
  • 山口 拓洋(東北大学大学院医学系研究科医学統計学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
角膜疾患のため失明した患者に対して、現在角膜移植が実施されているが、わが国では献眼数が絶対的に少なく、ドナーが不足している。また、重篤な角膜上皮疾患の場合は、特に拒絶反応のため、角膜移植が奏功しない。我々はこれらの問題を解決しうる、独自の自家培養口腔粘膜上皮細胞シート移植法を開発してきた。これまでに本治療法の探索的な臨床研究を少数例に実施し、良好な結果を得ている。本事業の目的は、今後本治療法を、標準医療として普及させていくため、その有効性と安全性を検討することである。
研究方法
共同研究を行う眼科医、生物統計家、薬事法専門家と共同で臨床プロトコールを作成した。また大阪大学、東北大学、愛媛大学、東京大学において各施設での学内倫理審査、厚労省への書類提出を行った。大阪大学においては高度医療への申請を行った。さらに移植前の細胞シートの術前評価技術の開発を行った。また培養口腔粘膜上皮細胞シートおよび口腔粘膜上皮組織の航空機による輸送技術の開発を行った。
結果と考察
大阪大学および東北大学においては学内倫理審査の承認ののち、厚生労働省においてヒト幹指針への適合性が承認されたため、臨床研究を開始した。両大学において2例ずつの臨床研究を開始して、術後3ヶ月の時点で主要評価項目である「術後1年後の結膜化がなく、かつ上皮欠損の無い面積」は全例grading0から5へと顕著に改善している。また、副次評価項目である矯正視力は全例とも術前0.01であったが、それぞれ0.15、0.08p、0.04、0.02へと改善し、角膜混濁、角膜血管新生についても改善が見られた。東京大学および愛媛大学においては学内倫理審査の承認を得たので、厚労省へ書類を提出し、審査が開始された。さらに細胞シート及び組織を実際に航空機による輸送を行って開発した技術による輸送が可能であることを証明した。
結論
大阪大学および東北大学の臨床試験において良好な治療成績を得ている。また東京大学および愛媛大学においても臨床試験を開始する準備が整いつつある。また多施設臨床試験を行うための基盤技術が整った。今後はこれらの成果をもとにして本治療法の有効性と安全性を検証し、さらに高度医療評価制度を通じて薬事法による申請等につながる科学的評価可能なデータ収集の迅速化を図る。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201114021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
臨床プロトコールの作成、培養口腔粘膜上皮細胞シート作製の標準手順書(SOP)の整備、製品標準書や試験物概要書の作成など必要書類の作成を行い、培養細胞シートの手術前バリデーション評価法を確立した。これらの成果をもとに大阪大学、東北大学、愛媛大学、東京大学で学内倫理審査委員会の承認を得た後、ヒト幹指針への適合性の承認を得て多施設共同臨床試験を開始し、細胞シートを移植施設外で製造・輸送した場合も含め、有効性・安全性を検証している段階である。また大阪大学では先進医療Bとして実施している。
臨床的観点からの成果
全4施設で培養移植を開始し、計22例の移植を完了した(熱・化学腐食10例、Stevens-Johnson 症候群5例、眼類天疱瘡2例、特発性2例、無虹彩症1例、その他2例)。主要評価項目である「術後1年後の結膜化がなく、かつ上皮欠損の無い面積」については、評価症例(15例)全例において有効であった。副次評価項目である矯正視力、角膜混濁、角膜血管新生についても概ね改善が見られている。安全性についても、試験継続の問題となる重篤な有害事象は認められていない。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本治療法の開発により、従来法ではドナー角膜不足や拒絶反応のため治療できなかった難治性角結膜上皮疾患を有する患者に対して、根治的治療法を提供することができる。一回の治療で、術後免疫抑制剤を使用することなく根治可能なため、医療費の削減といった社会経済的効果があり、感覚器障害者の社会復帰、国民の健康寿命の増進といった社会へ還元できる成果をもたらすことができる。さらに、今後セルプロセッシングから臨床までの一連のプロトコールを作成・公開することにより、わが国の再生医療分野全体の臨床への橋渡しに寄与できる。
その他のインパクト
2014年6月28日に開かれた第7回「目の健康講座」のシンポジウムにおいて、「目の病気とiPS細胞」と題した講演の中で、口の粘膜から角膜に近い組織を作って移植する研究について触れ、広がる再生医療の可能性について議論した。また、その様子は2014年7月30日発行の毎日新聞に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
2件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
ドナー角膜内皮をゼラチンハイドロゲルシート上で培養して得られる移植用角膜内皮細胞シート及び製造方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許5709015
発明者名: 西田幸二、林竜平、渡邊亮、田畑康彦、木村祐
権利者名: 国立大学法人大阪大学
出願年月日: 20100816
取得年月日: 20150313
特許の名称
多能性幹細胞からの神経堤細胞群の文化誘導方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許5700301
発明者名: 大家義則、林竜平、萩原邦恵、西田幸二
権利者名: 国立大学法人大阪大学
出願年月日: 20100531
取得年月日: 20150227

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-30

収支報告書

文献番号
201114021Z