文献情報
文献番号
201114020A
報告書区分
総括
研究課題名
新しく発明された概念に基づく抗がん剤アルクチゲニンの臨床導入
課題番号
H21-臨床研究・一般-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
江角 浩安(独立行政法人国立がん研究センター研究所)
研究分担者(所属機関)
- 大津 敦(独立行政法人国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)
- 佐藤 暁洋(独立行政法人国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)
- 池田 公史(独立行政法人国立がん研究センター東病院)
- 奥坂 拓志(独立行政法人国立がん研究センター中央病院)
- 畠 清彦((財)癌研究会有明病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
48,033,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
既存の抗がん剤は、酸素供給や栄養供給が不足している腫瘍組織では有効性が極端に低くなる。そこで我々は、そういった腫瘍組織微小環境下で細胞障害性を最大に発揮する物質の探索を目的として、がん組織に特異的な適応反応を標的とした、正常組織に対して相対的に低毒性の抗腫瘍薬をスクリーニングしてきた。
天然物の中からこれまでにキガマイシン、アルクチゲニンなどを見いだしてきたが、本研究では、既に局方薬として登録されているゴボウシにアルクチゲニンが多く含まれる事に注目し、ゴボウシ抽出エキスによって、精製アルクチゲニンと同じ効果を得られる事を確認し、さらに臨床ですい臓がんに対する標準治療薬として用いられているゲムシタビン、TS-1との併用効果についても検討し、研究成果の早期の臨床導入を目的とした。
天然物の中からこれまでにキガマイシン、アルクチゲニンなどを見いだしてきたが、本研究では、既に局方薬として登録されているゴボウシにアルクチゲニンが多く含まれる事に注目し、ゴボウシ抽出エキスによって、精製アルクチゲニンと同じ効果を得られる事を確認し、さらに臨床ですい臓がんに対する標準治療薬として用いられているゲムシタビン、TS-1との併用効果についても検討し、研究成果の早期の臨床導入を目的とした。
研究方法
アルクチゲニンとその配糖体アルクチンをアルクチゲニン換算で総量の約10%含有する牛蒡子の抽出法をクラシエ製薬株式会社との共同研究で開発、最適化した。この製法に関しては製法特許を取得した。この製剤GBS-01を用い、ゲムシタビン不応転移性膵がん患者を対象とした臨床第I/II相試験を行った。本試験のエンドポイントは、一義的には第Ⅰ相部分:DLTの発現頻度、第Ⅱ相部分:奏効割合、セカンダリーエンドポイントは、第Ⅰ相部分:有害事象発生割合、薬物動態学的パラメータ、第Ⅱ相部分:有害事象発生割合、無増悪生存期間、全生存期間である。
結果と考察
平成23年度末までには、通常のフィボナッチの変法(3+3コホート)を採用し、各投与量レベル3-6名とした第一相部分のレベル3(最高投与量)まで進行し、DLTは観察されず、極めて良好な安全性が証明された。レベル2、3名の症例のうち4週目では全員SD、そのうち1例は8週目でPRとなり、20週目までPRが維持されている。レベル3の症例は6例を登録し経過観察中である。
結論
当初、初歩的薬物動態から蓄積毒性の可能性を再試験したために計画よりやや遅れた。しかし、蓄積毒性の可能性は否定された。また、臨床では、極めて高い安全性が示唆された。現在進行中なので断言は出来ない。臨床第一相部分で有効例が観察されたのは極めて有望なことで、第II相試験では有効性が示されるものと確信できた。
公開日・更新日
公開日
2012-06-29
更新日
-