アデノ随伴ウイルスを用いたデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子変異集積領域のエクソン・スキップ治療

文献情報

文献番号
201114011A
報告書区分
総括
研究課題名
アデノ随伴ウイルスを用いたデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子変異集積領域のエクソン・スキップ治療
課題番号
H21-トランス・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 尚巳(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
  • 永田 哲也(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
45,272,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来我々は、アンチセンス・モルフォリノを用いたデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対するエクソン・スキップ治療の前臨床研究および治験を推進してきた。ただし、現行の人工核酸治療では、対象となる変異が限られている他、心筋への導入効率および作用時間が不十分であり、高い臨床的効果を得るためには、これらの課題を克服する必要がある。本研究では、安全で心筋への導入効率が高いアデノ随伴ウイルス(AAV)を応用したベクターや中空粒子を利用し、変異集積領域における有効性を検証することを目的とした。
研究方法
最小限のエクソンを標的としたエクソン45-55のスキップ誘導条件を検討した。また、エクソン52欠失変異を有する筋芽細胞株を樹立し、効果的なスキップ誘導配列を検証した。9型AAVをアンチセンス担体とする工夫として、AAV中空粒子に人工核酸を取り込ませる手法を開発し、細胞内導入効率を検証した。また、核内局在化や持続的発現のため、改変U7snRNAを応用したアンチセンス発現ベクターを構築した。さらに、mdxマウスや筋ジス犬に短縮ジストロフィン発現ベクターを投与し、心筋や全身骨格筋への送達効果や免疫応答を検討した。
結果と考察
遺伝子変異集積領域において複数のエクソンをスキップさせるブロック・スキップの実用化に向け、アンチセンス配列、組合せ、投与方法を検証し、有効性を証明した。アンチセンス分子を効果的に心筋や骨格筋に送達するための手段として、9型AAVを応用したベクターや中空粒子の有効性と安全性を証明した。さらに、患者由来の線維芽細胞を不死化し、これを用いた変異集積領域の治療研究を推進中である。
結論
本研究の結果は、変異集積領域に変異を有するDMD患者を対象にした様々なスキップ治療の可能性を示唆している。また、9型AAVベクターや中空粒子は、アンチセンス分子の次世代担体として有望と考えられた。本技術の臨床応用に向け、既に国内企業T社との協業により、GMP製剤作製系の開発に着手した。さらに関連特許リスクの評価を行い、保有特許を活用したクロスライセンス交渉を推進する予定である。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

文献情報

文献番号
201114011B
報告書区分
総合
研究課題名
アデノ随伴ウイルスを用いたデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子変異集積領域のエクソン・スキップ治療
課題番号
H21-トランス・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 尚巳(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
  • 永田 哲也(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来我々は、アンチセンス・モルフォリノを用いたデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対するエクソン・スキップ治療の前臨床研究および治験を推進してきた。ただし、現行の人工核酸治療では、対象となる変異が限られている他、心筋への導入効率および作用時間が不十分であり、高い臨床的効果を得るためには、これらの課題を克服する必要がある。本研究では、安全で心筋への導入効率が高いアデノ随伴ウイルス(AAV)を応用したベクターや中空粒子を利用し、変異集積領域における有効性を検証することを目的とした。
研究方法
従来我々は、アンチセンス・モルフォリノを用いたデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対するエクソン・スキップ治療の前臨床研究および治験を推進してきた。ただし、現行の人工核酸治療では、対象となる変異が限られている他、心筋への導入効率および作用時間が不十分であり、高い臨床的効果を得るためには、これらの課題を克服する必要がある。本研究では、安全で心筋への導入効率が高いアデノ随伴ウイルス(AAV)を応用したベクターや中空粒子を利用し、変異集積領域における有効性を検証することを目的とした。
結果と考察
遺伝子変異集積領域において複数のエクソンをスキップさせるブロック・スキップの実用化に向け、アンチセンス配列、組合せ、投与方法を検証し、有効性を証明した。アンチセンス分子を効果的に心筋や骨格筋に送達するための手段として、9型AAVを応用したベクターや中空粒子の有効性と安全性を証明した。さらに、患者由来の線維芽細胞を不死化し、これを用いた変異集積領域の治療研究を推進中である。
結論
本研究の結果は、変異集積領域に変異を有するDMD患者を対象にした様々なスキップ治療の可能性を示唆している。また、9型AAVベクターや中空粒子は、アンチセンス分子の次世代担体として有望と考えられた。本技術の臨床応用に向け、既に国内企業T社との協業により、GMP製剤作製系の開発に着手した。さらに関連特許リスクの評価を行い、保有特許を活用したクロスライセンス交渉を推進する予定である。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201114011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)に対する人工核酸を用いたエクソン・スキップ治療の課題を克服するため、送達担体として安全で心筋導入効率が高いアデノ随伴ウイルス(AAV)の有効性を証明した。ヒトと標的配列が一致するマーモセットを用い、U7snRNAアンチセンス発現ベクターによるスキップを確認した。また、変異集積領域を欠失する小型ジストロフィン発現ベクターを筋ジス犬に投与し、心筋を含む全身効果を証明した。さらに中空粒子を利用した新規DDSの開発に成功した。
臨床的観点からの成果
変異集積領域にて複数エクソンをスキップさせる手法の実用化に向け、アンチセンス配列、組合せ、投与方法を検証し、有効性を証明した。また送達担体とする9型AAVベクターや中空粒子の有効性と安全性を証明した。さらに患者由来線維芽細胞を不死化し、変異集積領域の治療研究を推進中である。臨床応用に向け、既に国内企業T社との協業によりGMP製剤作製系の開発に着手した。さらに特許リスクの評価を行い、保有特許を活用したクロスライセンス交渉を推進する予定である。
ガイドライン等の開発
本研究を進める過程で、臨床グレーディング、赤外線による定量的行動量測定、MRI、CT、呼吸機能評価、心機能評価等を用いた筋ジストロフィー犬の治療評価系を確立することができた。大型のモデル動物を用いた新たな治療開発研究は、内外に極めて大きなインパクトを与え、米国・国立保健研究所(NIH)は、米国内で筋ジス犬飼育施設の整備を行っている。これらの経験をもとに小型モデル動物における筋ジストロフィー治療評価ガイドラインの策定と専用設備の整備を推進する。
その他行政的観点からの成果
ジストロフィン遺伝子の特定の変異を対象にした治療が可能になった。治療を進める上では、遺伝子診断を含むDMD患者登録を進めることが重要であり、筋ジストロフィー患者情報登録制度Remudyを構築した。これらの取り組みが評価され、製薬企業との連携によりエクソン51スキップの国際共同治験を開始した。また、エクソン・スキップを実現するための国際的な取り組みとして、International Duchenne Exon Skipping Consortium (iDESC)に運営メンバーとして加わった。
その他のインパクト
筋ジストロフィーに対する主任研究者らの取り組みは、筋ジストロフィー協会の全国並びに地方大会、国立精神・神経医療研究センターをはじめ各地で開催された市民公開講座等で繰り返し採り上げられた。また、09年6月産経新聞、10年5月日経産業新聞、11年1月産経新聞、同年8月米国製薬業界週報、朝日新聞、讀賣新聞等、メディアにも多数取り上げられている。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
53件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
134件
学会発表(国際学会等)
40件
その他成果(特許の出願)
13件
2014年6月時点
その他成果(特許の取得)
3件
2014年6月時点
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
24件
市民公開講座:5件、患者団体啓蒙活動:5件、ピアカウンセリング:2件、新聞等:12件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nitahara-Kasahara Y, Hayashita-Kinoh H, Ohshima-Hosoyama S, et al.
Long-term engraftment of multipotent mesenchymal stromal cells that differentiate to form myogenic cells in dogs with Duchenne muscular dystrophy.
Molecular Therapy , 20 (1) , 168-177  (2012)
原著論文2
Koo T, Okada T, Athanasopoulos T, et al.
Long-term functional adeno-associated virus-microdystrophin expression in the dystrophic CXMDj dog.
J Gene Med. , 13 (9) , 497-506  (2011)
原著論文3
Taniguchi-Ikeda M, Kobayashi K, Kanagawa M, et al.
Pathogenic exon-trapping by SVA retrotransposon and rescue in Fukuyama muscular dystrophy.
Nature. , 478 (7367) , 127-131  (2011)
原著論文4
Shin JH, Nitahara-Kasahara Y, Hayashita-Kinoh H, et al.
Improvement of cardiac fibrosis in dystrophic mice by rAAV9-mediated microdystrophin transduction.
Gene Ther. , 18 (9) , 910-919  (2011)
原著論文5
Masamizu Y, Okada T, Kawasaki K, et al.
Local and retrograde gene transfer into primate neuronal pathways via adeno-associated virus serotype 8 and 9.
Neuroscience. , 193 , 249-258  (2011)
原著論文6
Hoffman EP, Bronson A, Levin AA, et al.
Restoring dystrophin expression in duchenne muscular dystrophy muscle progress in exon skipping and stop codon read through.
Am J Pathol. , 179 (1) , 12-22  (2011)
原著論文7
Lu QL, Yokota T, Takeda S, et al.
The status of exon skipping as a therapeutic approach to duchenne muscular dystrophy.
Molecular Therapy , 19 (1) , 9-15  (2011)
原著論文8
Yokota T, Hoffman E, Takeda S
Antisense oligo-mediated multiple exon skipping in a dog model of duchenne muscular dystrophy.
Methods Mol Biol. , 709 , 299-312  (2011)
原著論文9
Aoki Y, Nakamura A, Yokota T, et al.
In-frame dystrophin following exon 51-skipping improves muscle pathology and function in the exon 52-deficient mdx mouse.
Molecular Therapy , 18 (11) , 1995-2005  (2010)
原著論文10
Saito T, Nakamura A, Aoki Y, et al.
Antisense PMO Found in Dystrophic Dog Model was Effective in Cells from Exon 7-Deleted DMD Patient.
PLoS One. , 5 (8) , 12239-  (2010)
原著論文11
Masamizu Y, Okada T, Ishibashi H, et al.
Efficient gene transfer into neurons in monkey brain by adeno-associated virus 8.
Neuroreport. , 21 (6) , 447-451  (2010)
原著論文12
Yokota T, Takeda S, Lu QL, et al.
A renaissance for antisense oligonucleotide drugs in neurology: exon skipping breaks new ground.
Arch Neurol-Chicago , 66 (1) , 32-38  (2009)
原著論文13
Kobayashi M, Nakamura A, Hasegawa D, et al.
Evaluation of dystrophic dog pathology by fat-suppressed T2-weighted imaging.
Muscle Nerve , 40 (5) , 815-826  (2009)
原著論文14
Okada T, Nonaka-Sarukawa M, Uchibori R, et al.
Scalable purification of AAV1 and AAV8 vectors using dual ion-exchange adsorptive membranes.
Hum Gene Ther. , 20 (9) , 1013-1021  (2009)
原著論文15
Nakamura A, Takeda S
Exon-skipping therapy for Duchenne muscular dystrophy
Neuropathology , 29 (4) , 494-501  (2009)
原著論文16
Yokota T, Lu QL, Partridge T, et al.
Efficacy of systemic morpholino exon-skipping in Duchenne dystrophy dogs.
Ann Neurol. , 65 (6) , 667-676  (2009)
原著論文17
Ohshima S, Shin JH, Yuasa K, et al.
Transduction efficiency and immune response associated with the administration of AAV8 vector into dog skeletal muscle.
Molecular Therapy , 17 (1) , 73-80  (2009)
原著論文18
Nomoto T, Okada T, Shimazaki K, et al.
Systemic delivery of IL-10 by an AAV vector prevents vascular remodeling and end-organ damage in stroke-prone spontaneously hypertensive rat.
Gene Ther. , 16 (3) , 383-391  (2009)
原著論文19
Okada T, Takeda S
Progress and Challenges in AAV-Mediated Gene Therapy for Duchenne Muscular Dystrophy.
Viral Gene Therapy , 225-240  (2011)
原著論文20
Yokota T, Takeda S
Antisense oligo-mediated multiple skipping in a dog model of duchenne muscular dystrophy.
Muscle gene therapy, Methods and Protocols, Methods in Molecular Biology , 299-312  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201114011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
45,272,000円
(2)補助金確定額
45,272,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 15,979,176円
人件費・謝金 16,001,208円
旅費 752,920円
その他 12,538,696円
間接経費 0円
合計 45,272,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-