低侵襲的低周波超音波脳血栓溶解法の効果増高に関する臨床応用基盤研究

文献情報

文献番号
201114008A
報告書区分
総括
研究課題名
低侵襲的低周波超音波脳血栓溶解法の効果増高に関する臨床応用基盤研究
課題番号
H21-トランス・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
古幡 博(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 医用エンジニアリング研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 峰松 一夫(国立循環器病研究センター 内科脳血管部門)
  • 山本 晴子(国立循環器病研究センター 脳循環内科)
  • 古賀 政利(国立循環器病研究センター 内科脳血管部門)
  • 小川 武希(東京慈恵会医科大学 救急医学)
  • 持尾 聰一郎(東京慈恵会医科大学 神経内科学)
  • 羽野 寛(東京慈恵会医科大学 人体病理学)
  • 金本 光一(東京慈恵会医科大学 医工学)
  • 鈴木 正章(東京慈恵会医科大学 病理学)
  • 福田 隆浩(東京慈恵会医科大学 神経病理学)
  • 三村 秀毅(東京慈恵会医科大学 神経内科学)
  • 丸山 一雄(帝京大学薬学部 生物薬剤学)
  • 幸 敏志(田辺三菱製薬株式会社 研究本部 薬理第一研究所第二部)
  • 川島 裕幸(株式会社カネカメディックス 開発本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
68,024,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急性脳梗塞患者の超急性期治療の第一選択となるrt-PA静注療法は、死亡率1-2%、症候性出血6-5%、そして再開通率30?40%という極めて救済率の低い治療法であるが、これを飛躍的に改善する中周波数超音波を経頭蓋的に照射する実用化研究を行い、その臨床研究に到達する事を目標とした。本最終年度では、新開発の貼付型ソフト超音波振動子(Pastable Soft Ultrasonic Trunsducer: PSUST)の発射する超音波ビームが標的となる中大脳動脈領域に無誘導的に照射し得る均一大口径ビーム及び定在波抑制法を実現し、その音響学的有効性と安全性を確保する事を、第一目的とした。同時にこの新経頭蓋超音波脳血栓溶解法の臨床試験を実施するに先立ち、現行rt-PA静注療法の臨床データの再開通効果に関する臨床データを、対照データとして蓄積、分析する事を第二の目的とした。
研究方法
PSUSTとして30×30mmの正方形振動子、厚さ6mmのものを試作した。同音場分布を音響強度測定装置及び頭蓋内の音場分布をシュリーレン法で実時間観察し、ビーム均一化と定在波抑制を実現する各種雑音変調駆動方式を比較検討した。また、臨床成績は国立循環器病研究センターと東京慈恵会医科大学における救急患者を対象に行った。
結果と考察
1、PSUSTによる音場は、雑音変調方式の中でも逆相位相ランダム切換方式による音場ビームが最も大口径のビームを患側側の脳半球で充分均一化され、また頭蓋内における定在波の発生を5%未満に抑制し、かつ頭蓋内多重反射による音圧上昇を数倍(頭蓋骨における反射率に依存)以下に抑制し得る事を音響学的に示した。
2、超音波による溶解加速には、周波数依存性が低く、単に強度依存的で雑音変調方式が適用し易い事を示した。
3、現行のrt-PA静注療法による再開通は、30?60分の間に約半数で招来するが、24時間後も70%程度に再開通率は留まっていた。

以上の結果よりこのPSUSTを用いれば、現行rt-PA静注療法適用患者に対し、その側頭部に貼付するだけで、溶解率の加速が進む事が予測される。超音波技術等の熟練を要さず、簡便かつ容易に行えるこの無誘導方式は、rt-PA静注患者殆ど全員に適用可能な新超音波技術になるものと期待される。
結論
本年度はPSUSTを実際に作成し、その音響学的有効性と安全性を示した。既に現行rt-PA静注療法の再開通状態に関する臨床成績もヒストリカルデータとして蓄積された。この新技術が次世代普及型の経頭蓋超音波脳血栓溶解法として臨床現場で高く評価されるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2012-07-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201114008B
報告書区分
総合
研究課題名
低侵襲的低周波超音波脳血栓溶解法の効果増高に関する臨床応用基盤研究
課題番号
H21-トランス・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
古幡 博(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 医用エンジニアリング研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 峰松 一夫(国立循環器病研究センター 内科脳血管部門)
  • 山本 晴子(国立循環器病研究センター 脳循環内科)
  • 古賀 政利(国立循環器病研究センター 内科脳血管部門)
  • 小川 武希(東京慈恵会医科大学 救急医学)
  • 持尾 聰一郎(東京慈恵会医科大学 神経内科学)
  • 福田 隆浩(東京慈恵会医科大学 神経病理学)
  • 三村 秀毅(東京慈恵会医科大学 神経内科学)
  • 幸 敏志(田辺三菱製薬株式会社 研究本部 薬理第一研究所第二部)
  • 金本 光一(東京慈恵会医科大学 医工学)
  • 羽野 寛(東京慈恵会医科大学 人体病理学)
  • 浦島 充桂(東京慈恵会医科大学 分子疫学)
  • 鈴木 正博(東京慈恵会医科大学 病理学)
  • 丸山一雄(帝京大学薬学部 生物薬剤学)
  • 川島 裕幸(株式会社カネカメディックス 開発本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦臓器別死因の第1位脳卒中の6-7割は脳梗塞が占める。特に急性脳梗塞治療法としてのrt-PA静注療法には、その死を含む重篤な副作用は高く、救済率も高くない。これを打破する次世代超急性期治療法として、rt-PA静注療法に併用する経頭蓋超音波照射法を開発する事を第一の目的とした。そして臨床応用の際のヒストリカルデータとして現行rt-PA静注療法の再開通状態に関する臨床データを蓄積分析しておく事を第二の目的とした。
研究方法
経頭蓋超音波脳血栓溶解法としては、当初の経頭蓋カラードプラ断層法による誘導型の標的照射法を変更し、患者体動に追従し易く、かつコストベネフィットの高い無誘導的経頭蓋超音波脳血栓溶解法に基本手法を変更した。
すなわち、臨床現場の技術的課題を完全に解決し得る、側頭部に貼付するソフト振動子を用いる、新技術開発に主軸を移した。この貼付型ソフト超音波振動子(Pastable Soft Ultrasonic Trunsducer:PSUST)を製作し、PSUSTを側頭部echo windowに合わせて一辺30mmの正方形、厚さ6mmのものを試作した。
なおまた3年間に渡って、臨床データは、国立循環器病研究センター、東京慈恵会医科大学において現行rt-PA静注療法患者に対し、その再開通状態を15分間隔で経頭蓋カラードップラ断層法を用いて監視し、保存記録した。
結果と考察
1、PSUSTによる音場は、雑音変調方式の中でも逆相位相ランダム切換方式による音場ビームが最も音響学的に有利であった。大口径のビームを患側側の脳半球領域内で充分均一化され、また頭蓋内における定在波の発生を5%未満に抑制した。
2、超音波による溶解加速特性は、周波数依存性が低く、単に強度依存的で雑音変調方式が適用し易い事を示した。
3、現行のrt-PA静注療法による再開通は、30~60分間に約半数で招来するが、24時間後も70%程度に再開通率は留まった。

以上の結果より現行rt-PA静注療法適用患者に対し、その側頭部にPSUSTを貼付するだけで、溶解率の加速が進む事が予測された。この簡便かつ容易に行える無誘導方式は、rt-PA静注患者殆ど全員に適用可能な新超音波技術になるものと期待される。
結論
側頭部貼付型のPSUSTを製作し、その音響学的有効性と安全性を示し、中周波数超音波による経頭蓋超音波脳血栓溶解法の技術を完成した。既に現行rt-PA静注療法の再開通状態に関する臨床成績もヒストリカルデータとして蓄積された。この新技術が次世代普及型の超急性期治療法として、急性脳梗塞治療の現場に不可欠な治療法になるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2012-07-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201114008C

収支報告書

文献番号
201114008Z