テーラーメード型運動器デバイスの技術開発および探索的臨床応用研究

文献情報

文献番号
201114003A
報告書区分
総括
研究課題名
テーラーメード型運動器デバイスの技術開発および探索的臨床応用研究
課題番号
H21-トランス・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中村 孝志(京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤林 俊介(京都大学 大学院医学研究科)
  • 竹本 充(京都大学 大学院医学研究科)
  • 秋山 治彦(京都大学 大学院医学研究科)
  • 松下 富春(中部大学 生命健康科学部)
  • 住田 知樹(愛媛大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
29,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
疾病あるいは外科的手術に伴って生じる骨欠損により運動器機能は著しく障害される。われわれはこのような患者に対し、即時に欠損部位の骨修復および運動器機能再建を可能とする新しい治療方法を開発した。本プロジェクトでは生体材料開発におけるこのような基礎研究の成果を迅速に臨床現場に応用することを目的とする。
研究方法
われわれの開発した技術は高性能レーザーを用いてチタン粉末を溶融し(選択的レーザー溶融法、Selective laser melting法、以下SLM)、三次元的構造を自由に造形する高速プロトタイピング技術である。患者の病変部のCTデータを画像解析し、外部形状および内部の微細構造を三次元CADにてデザインし、SLMにてテーラーメードデバイスを造形する。顔面骨や骨盤、脊柱などの大きな骨欠損をミクロン単位の微細な骨構造まで正確に再現し、さらにチタン表面を化学処理により骨と直接結合する材料に改変する。本研究では、この高強度チタンデバイスの製造技術の向上、前臨床的評価(力学試験、動物実験、臨床シミュレーション)、臨床試験を行った。
結果と考察
平成23年度の大きな成果として本技術により作成したテーラーメードデバイスを使用した顎骨再建手術を2例に行い有望な結果を得た。また、前年度に引き続き顎骨骨増生術用メッシュデバイス、骨再建手術用カスタムガイドについての臨床試験を継続しその臨床データの収集と行うとともに、本格的な臨床応用を意図した強度試験、長期埋入を行った動物実験データの収集など行った。これらの成果は当初の計画をほぼ達成するものであり、本研究により開発された患者の骨欠損を力学的、生理的に再建することを可能にするテーラーメード型デバイスは広く普及可能な技術となったと考えている。歯科口腔外科分野においては、SLM材は原料となるチタン粉末の認証を得ることで医療機器としての販売が可能であるため、平成23年度にはチタン粉末の認証を得て製品化への道筋を確立した。整形外科分野については、テーラーメードデバイスという概念の整形外科用医療機器としての新規性から、まずは高度医療としての承認申請を行う予定である。
結論
本研究により、治療に難渋する大きな骨欠損の修復治療の新しい術式を確立するとともに、患者が失う運動機能の即時的な再建を達成し、患者個々の状態に応じた適切な手術手技を確立した。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

文献情報

文献番号
201114003B
報告書区分
総合
研究課題名
テーラーメード型運動器デバイスの技術開発および探索的臨床応用研究
課題番号
H21-トランス・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中村 孝志(京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤林 俊介(京都大学 大学院医学研究科)
  • 竹本 充(京都大学 大学院医学研究科)
  • 中山 富貴(京都大学 大学院医学研究科)
  • 秋山 治彦(京都大学 大学院医学研究科)
  • 松下 富春(中部大学 生命健康科学部)
  • 住田 知樹(愛媛大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
われわれは治療に難渋する大きな骨欠損を、即時に骨修復および機能再建を可能とする新しい治療方法を開発した。本プロジェクトでは生体材料開発におけるこのような基礎研究の成果を迅速に臨床現場に応用することを目的とする。
研究方法
われわれの開発した技術は高性能レーザーを用いてチタン粉末を溶融し(選択的レーザー溶融法、Selective laser melting法、以下SLM)、三次元的構造を自由に造形する高速プロトタイピング技術である。患者の病変部のCTデータを画像解析し、外部形状および内部の微細構造を三次元CADにてデザインし、SLMにてテーラーメードデバイスを造形する。顔面骨や骨盤、脊柱などの大きな骨欠損をミクロン単位の微細な骨構造まで正確に再現し、さらにチタン表面を化学処理により骨と直接結合する材料に改変する。本研究では、この高強度チタンデバイスの製造技術の向上、前臨床的評価(力学試験、動物実験、臨床シミュレーション)、臨床試験を行った。
結果と考察
本プロジェクトの開始より、動物実験による基礎的データの収集及び、SLM造形材の強度試験、精度評価を行った。これらの結果をフィードバックして造形パラメーターの最適化をすすめた。また、デバイスの表面化学処理技術の高精度化及び効率化を行った。最終的には、患者発生から1週間でデバイスを造形し使用できる技術を確立した。並行して進めた動物病院と連携した疾病動物治療や、石膏による骨モデルを使用したテーラーメードデバイスの手術シミュレーションを通して、臨床試験における問題点や課題を明らかにするとともに臨床試験プロトコルの作成を行った。平成22年度からは臨床試験プロトコルを作成し、倫理委員会から承認を受けた後に臨床応用を開始した。臨床試験の主な成果としては、顎骨骨増生術用メッシュデバイス15例、骨再建手術用カスタムガイド12例、顎骨再建2例となっている。歯科口腔外科分野においては、SLM材は原料となるチタン粉末の認証を得ることで医療機器としての販売が可能であるため、平成23年度にはチタン粉末の認証を得て製品化への道筋を確立した。整形外科分野については、テーラーメードデバイスという概念の整形外科用医療機器としての新規性から、まずは高度医療としての承認申請を行う予定である。
結論
以上の成果により、本研究で開発された患者の骨欠損を力学的、生理的に再建することを可能にするテーラーメード型デバイスは広く普及可能な技術となったと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201114003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
動物実験では、デバイスデザインによる骨形成能の違い、生体活性処理による骨結合、骨形成能の違いについて明らかにした。デバイスの強度試験、精度評価の結果をデバイスデザインや造形方法に反映し、表面化学処理技術の高精度化及び効率化を行った。最終的には、患者発生から1週間でデバイスを造形し使用できる技術を確立した。臨床試験の主な成果としては、顎骨骨増生術用メッシュデバイス15例、骨再建手術用カスタムガイド12例、顎骨再建2例、頚椎前方固定5例となっている。
臨床的観点からの成果
広範囲骨欠損に対する機能再建は極めて困難であり、術後に患者の運動機能は著しく障害されることになる。われわれはこのような患者に対し、即時に骨形態を修復するとともに支持運動機能を再建することを可能にする独創性の高い新規治療法の開発に成功した。複数の臨床試験を並行して行い、それぞれについて手術時間の短縮、安全性の向上などの高い有効性が確認されるとともに、従来不可能であった審美的な顎骨再建も可能になるなど画期的な成果をあげることができた。
ガイドライン等の開発
本研究では、造形技術や産学連携システムの確立を行うとともに、倫理面に十分配慮した臨床試験プロトコルの作成を行った。これらの臨床試験プロトコルは今後のテーラーメード型デバイス開発における指標の一つとして大きな意味があると考えられる。また、本プロジェクトは医療機器開発と臨床応用の迅速化のモデルケースという側面も有しており、今後の医療機器開発へ与えるインパクトも大きい。
その他行政的観点からの成果
歯科口腔外科分野においては、SLM材は原料となるチタン粉末の認証を得ることで医療機器としての販売が可能であるため、平成23年度にはチタン粉末の薬事認証を経て製品化に成功した。顎骨再建デバイスについても同様のアプローチでの製品化を進めている。整形外科分野については、テーラーメードデバイスという概念の整形外科用医療機器としての新規性から、まずはSLMを用いて製造した既製品の販売をめざし、その後SLMを用いて製造したテーラーメードデバイスの製品化を進める。
その他のインパクト
整形外科関連学会、口腔外科関連学会、日本バイオマテリアル学会などのセミナーやシンポジウムにて本研究成果を発表した。本研究は非常に独創性が高く、画期的な治療と成り得ることが明らかであり、各方面から大きな反響を得た。さらに本プロジェクトは経済産業省課題解決型医療機器等開発事業へ引き継がれ、製品化を進めている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
27件
査読ありのもの
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
シンポジウム3件
学会発表(国際学会等)
4件
口演3件
その他成果(特許の出願)
3件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamaguchi S, Kizuki T, Takadama H, et al.
Formation of a bioactive calcium titanate layer on gum metal by chemical treatment.
J Mater Sci Mater Med , 23 (4) , 873-883  (2012)
原著論文2
Pattanayak DK, Yamaguchi S, Matsushita T, et al.
Apatite-forming ability of titanium in terms of ph of the exposed solution.
J R Soc Interface , 9 (74) , 2145-2155  (2012)
原著論文3
Pattanayak DK, Fukuda A, Matsushita T, et al.
Bioactive Ti metal analogous to human cancellous bone: Fabrication by selective laser melting and chemical treatments.
Acta Biomater , 7 (3) , 1398-1406  (2011)
原著論文4
Fujibayashi S, Takemoto M, Neo M, et al.
A novel synthetic material for spinal fusion: a prospective clinical trial of porous bioactive titanium metal for lumbar interbody fusion.
Eur Spine J , 20 (9) , 1486-1495  (2011)
原著論文5
Fukuda A, Takemoto M, Saito T, et al.
Osteoinduction of porous Ti implants with a channel structure fabricated by selective laser melting.
Acta Biomater , 7 (5) , 2327-2336  (2011)
原著論文6
Fukuda A, Takemoto M, Saito T, et al.
Bone-bonding bioactivity of Ti metal and Ti-Zr-Nb-Ta alloys with Ca ions incorporated on their surfaces by simple chemical and heat treatments.
Acta Biomater , 7 (3) , 1379-1386  (2011)
原著論文7
Yamaguchi S, Takadama H, Matsushita T, et al.
Preparation of bioactive ti-15zr-4nb-4ta alloy from hcl and heat treatments after an naoh treatment.
Biomed Mater Res A , 97 (2) , 135-144  (2011)
原著論文8
Kokubo T, Pattanayak DK, Yamaguchi S,
Positively charged bioactive Ti metal prepared by simple chemical and heat treatments.
J R Soc Interface , 7 , 503-513  (2010)
原著論文9
Kizuki T, Takadama H, Matsushita T, et al.
Preparation of bioactive Ti metal surface enriched with calcium ions by chemical treatments.
Acta Biomat , 6 (7) , 2836-2842  (2010)
原著論文10
Kawai T, Kizuki T, Takadama H, et al.
Apatite formation on surface titanate layer with different Na content on Ti metal.
J Ceram soc Japan. , 118 , 19-24  (2010)
原著論文11
Fujibayashi S, Neo M, Takemoto M, et al.
Computer-Assisted Spinal Osteotomy: A Technical Note and Report of Four Cases.
Spine , 35 (18) , 895-903  (2010)
原著論文12
Otsuki B, Takemoto M, Kawanabe K, Awa Y, Akiyama H, Fujibayashi S, et al.
Developing a novel custom cutting guide for curved peri-acetabular osteotomy.
Int Orthop , 37 (6) , 1033-1038  (2013)
原著論文13
Kawai T, Takemoto M, Fujibayashi S, et al.
Osteoconduction of porous ti metal enhanced by acid and heat treatments.
J Mater Sci Mater Med , 24 (7) , 1707-1715  (2013)
原著論文14
Tsukanaka M, Yamamoto K, Fujibayashi S, et al.
Evaluation of bioactivity of alkali- and heat-treated titanium using fluorescent mouse osteoblasts.
J Bone Miner Metab , in press  (2014)
原著論文15
Kawai T, Takemoto M, Fujibayashi S, et al.
Osteoinduction on acid and heat treated porous Ti metal samples in canine muscle.
PLoS One , 9 (2) , e88366-  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2016-01-28

収支報告書

文献番号
201114003Z