再生医療実用化を促進するセルプロセシングセンター運用のための人材育成プロジェクト

文献情報

文献番号
201113009A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療実用化を促進するセルプロセシングセンター運用のための人材育成プロジェクト
課題番号
H21-臨研(教育)・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
前川 平(京都大学医学部附属病院 輸血細胞治療部)
研究分担者(所属機関)
  • 高桑 徹也(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 青山 朋樹(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 伊吹 謙太郎(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 笠井 泰成(京都大学医学部附属病院 輸血細胞治療部 )
  • 川真田 伸(先端医療振興財団・先端医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
25,530,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 再生医療を担う人材を育成するためには高度な教育システムを構築する必要がある。本研究においては高度教育システムを構築する事を目的とした。今年度は当該研究の最終年度を迎えるため、集大成の教育システム、今後の継続計画を作成した。
研究方法
 人材育成プログラムを以下の三段階に分け、ステップアップ方式で教育プログラムを構築した。
① 細胞育成学総論
② 細胞育成学実践論
③ 実地講習
それぞれにおいてアンケートおよびレポートを作成し、その有効性を判定した。
結果と考察
① 細胞育成学総論
2011年10月5日から2012年1月18日まで、計14回の系統講義を実施した。講演会の受講者数はのべ352名であった。アンケートの結果、学生にも理解しやすく、好奇心を刺激される内容であったことが明らかになった。しかしながら「将来の進路(就職)に役立つ知識を得ることができたか」という問いに対して31%があまり役に立ってないとの回答があり、今後の工夫が必要と考えられた。
② 細胞育成学実践論
細胞育成学総論を履修した8名を対象に2012年1月23、25、27日に実習を実施した。細胞培養法、品質評価法、セルプロセシングセンターの運用法を理論、実習し、レポート、アンケートを行った。アンケートの結果、多くの内容で有効であったという回答が得られたが、「実習によって細胞治療の概要がイメージできたか」という問いに対して、どちらともいえないと回答した者が1名あり、もう少し工夫が必要と考えられた。
③ 実地講習
実地講習は細胞育成学総論、実践論履修者を対象に英国エジンバラ大学および神戸先端医療振興財団を訪問して実施した。
 これまで再生医療の教育システムは実施施設において独自の教育システムあるいは学会主導でワークショップ形式で開催されたものが多く、体系化された教育システムは存在していなかった。今回のシステムにおいては三段階の段階的就学方式を行う事で、実施施設のメンバーとの討論、企業とのシンポジウムにおけるプレゼンテーションなどが可能になった。これは単なる学会発表を行うというようなものではなく、現状の再生医療の法規制、市場動向、ニーズを十分に理解していなければできないことであり、より高度の知識を要求される。今回構築した高度教育システムは斬新なだけでなく、今後の再生医療を促進する最適なモデルケースになりうると考えられる。
結論
再生医療を担う人材育成教育システムは有用であり、今後の再生医療を促進できる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2012-06-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-18
更新日
-

文献情報

文献番号
201113009B
報告書区分
総合
研究課題名
再生医療実用化を促進するセルプロセシングセンター運用のための人材育成プロジェクト
課題番号
H21-臨研(教育)・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
前川 平(京都大学医学部附属病院 輸血細胞治療部)
研究分担者(所属機関)
  • 高桑 徹也(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 青山 朋樹(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 伊吹 謙太郎(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 笠井 泰成(京都大学医学部附属病院 輸血細胞治療部 )
  • 川真田 伸(先端医療振興財団・先端医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
細胞プロセシングを伴う再生医療は多くの領域で臨床応用が開始され、その有効性も報告されている。治療用ヒト細胞の安全性を担保するための法制定や細胞プロセシングセンター(CPC)設立、運用システムなどの基盤整備は着実に進んでいる。しかしCPCを実際に運用し、管理運営できる人材の教育システムは存在しない。そこで医学、細胞生物学教育コースに加え、GMP, GCPの知識を併せ持つ教育プログラムを通して、安全で高品質な細胞プロセシング作業に精通した、再生医療の現場で即戦力となる人材を育成する高度教育システムを構築し、再生医療を推進させることを目的とした。
研究方法
平成21?23年度の3年間で講習、実習、実地講習を連続的に行う段階式教育システムの構築を行った。
結果と考察
平成21年度
 人間健康科学系専攻において細胞育成学コースを設立し、基礎細胞生物学、品質検査学、GMP, GCPに関する講習を実施した。基本的講習のカリキュラムは人間健康科学科、医学部附属病院、探索医療センターなどの協力を得て構成した。

平成22年度
 連続講義シリーズに京都大学iPS細胞研究所、再生医科学研究所、神戸先端医療振興財団、J-TECなどの企業も加えて講演内容を充実し、細胞育成学総論として京都大学大学院の正式カリキュラムとして認められた。さらに総論コース修了者を対象に細胞培養、品質管理、CPC運用の実習(細胞育成学実践論;京都大学大学院正式単位)を実施した。実習においては医学部附属病院分子細胞治療センター、iPS細胞研究所での実地講習を含み、より再生医療の現場における教育プログラムを構築できた。

平成23年度
 細胞育成学総論に京都大学 物質-細胞統合システム拠点の講師も加わり内容を充実させた。平成21年、平成22年に実施した細胞育成学総論、実践論を更に内容を充実し、DVD、教材化した。また総論、実践論修了者を対象に、iCeMSが企画した英国エジンバラ大学合同シンポジウムに参加し、プレゼンテーション、討論を実施した。加えて細胞育成学総論、実践論を履修した大学院生、学部学生、京都大学医学部附属病院分子細胞治療センター(CCMT)、FiT、iPSアカデミアジャパン(合計29名)で神戸先端医療振興財団施設を訪問し、討論会を行うなど段階的高度教育システムを構築した。
結論
再生医療を担う人材育成教育システムは有用で、今後の再生医療を促進できると思われた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201113009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
細胞プロセシングセンターにおける安全な運用法を検証している際に、細胞プロセシングセンターから移植現場までの搬送方法の検証が不十分であることが明らかになった。このことから実際の搬送を想定した実地検証を行った。その結果、細胞の安全を脅かし、臨床で用いる際に危惧される因子として『温度』『感染』『衝撃』が想定された。このことから必要技術の調査、結集を行い、『温度維持』、『無菌性保証』、『水平位維持』を担保できる細胞搬送容器、搬送技術の開発に成功した。
臨床的観点からの成果
これまでは細胞プロセシングセンター、移植施設の個々の施設の基準でプロトコール、品質管理、安全に関する検証が行われていた。今回のプロジェクトにおいてはそれらのポイントになる項目を実施現場、法制度、事業の多方面から検証を行った。この結果、実際の臨床現場に対して高品質、安全、継続性の高いプロトコールを作成するコンソーシアムが構築できた。このコンソーシアムを活用することで、今後も臨床現場に対して高品質の細胞供与できる可能性がある。
ガイドライン等の開発
(1)高品質で、安全に細胞搬送を行うことに関する事項は「医政発0330第2号 医療機関における自家細胞、組織を用いた再生・細胞医療の実施について(平成22年3月30日)」の第3章2.の「搬送」の項目に盛り込まれた。
(2)厚生労働省「再生医療における制度的枠組みに関する検討会」の報告書作成(平成23年3月30日)の際に参考とした。
その他行政的観点からの成果
再生医療を安全に実施するためには現行の法制度の見直しに加えて、新しいルールを制定する必要がある。この際に科学技術、倫理、現場事情などを考慮して作成する必要がある。本プロジェクトにおける成果の一つとして搬送に関するガイドライン提言が挙げられるが、これらは上述の事項を結集した結果であり、今後もこの手法は再生医療を安全に促進するうえで有効な手段である。
その他のインパクト
開発した細胞搬送容器に関する発表をKyoto University Technology Show Case New York 2009(2009年11月10日)、記者発表を2009年12月18日に行い、京都新聞(12月19日 20面)、産経新聞(12月19日 22面)、日刊工業新聞(12月21日 15面)、日本経済新聞(12月21日 12面)および読売新聞(12月28日 16面)に掲載された。また概要は京都大学ホームページに掲載した。

発表件数

原著論文(和文)
19件
原著論文(英文等)
92件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
76件
学会発表(国際学会等)
17件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
1件
厚生労働省「再生医療における制度的枠組みに関する検討会」の報告書作成の際に参考とした。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
公開講座京大病院iPS・再生医療研究会において細胞プロセッシングの重要性を説いた。

特許

特許の名称
マイクロ反応装置を用いた細胞運動評価法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第5166360号
発明者名: 務中達也、阿部浩久、叶井正樹、前川 平、木村晋也、芦原英司、庄子習一
権利者名: 株式会社島津製作所、国立大学法人京都大、学校法人早稲田大学
出願年月日: 20090623
取得年月日: 20121228
国内外の別: 国内
特許の名称
細胞選別器及び細胞選別方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第5695753号
発明者名: 務中達也、阿部浩久、叶井正樹、前川 平、木村晋也、芦原英司、庄子習一
権利者名: 株式会社島津製作所、国立大学法人京都大、学校法人早稲田大学
出願年月日: 20120816
取得年月日: 20150213
国内外の別: 国内
特許の名称
細胞培養器及びその容器を用いた細胞培養方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第5703302号
発明者名: 務中達也、阿部浩久、叶井正樹、前川 平、木村晋也、芦原英司、庄子習一
権利者名: 株式会社島津製作所、国立大学法人京都大、学校法人早稲田大学
出願年月日: 20110708
取得年月日: 20150227
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ijiri H, Coulibaly F, Nishimura G, et al.
Structure-based targeting of bioactive proteins into cypovirus polyhedra and application to immobilized cytokines for mammalian cell culture
Biomaterials , 30 (26) , 4279-4308  (2009)
原著論文2
Sasahara Y, Yoshikawa Y, Morinaga T, et al.
Human keratinocytes derived from the bulge region of hair follicles are refractory to differentiation
Int J Oncol , 34 (5) , 1191-1199  (2009)
原著論文3
Kaido T, Egawa H, Tsuji H, et al.
In-hospital mortality in adult recipients of living donor liver transplantation: experience of 576 consecutive cases at a single center
Liver Transpl , 15 (11) , 1420-1425  (2009)
原著論文4
笠井泰成
細胞プロセシングセンター(CPC)における臨床検査技師の役割―細胞治療の臨床応用に向けて
検査と技術 , 38 (13) , 1246-1249  (2010)
原著論文5
Ito K, Aoyama T, Fukiage K, et al.
A novel method to isolate mesenchymal stem cells from bone marrow in a closed system using a device made by non-woven fabric.

Tissue Eng Part C Methods , 16 (1) , 81-91  (2010)
原著論文6
Jin Y, Kato T, Furu M, et al.
Mesenchymal stem cells cultured under hypoxia escape from senescence via down-regulation of p16 and extracellular signal regulated kinase.
Biochem Biophys Res Commun , 391 (3) , 1471-1476  (2010)
原著論文7
Ohsaka A, Kikuta A, Ohto H, et al.
Guidelines for safety management of granulocyte transfusion in Japan
Int J Hematol , 91 (2) , 201-208  (2010)
原著論文8
Matsushima K, Suyama T, Takenaka C, et al.
Secreted frizzled related protein 4 reduces fibrosis scar size and ameliorates cardiac function after ischemic injury
Tissue Eng Part A. , 16 (11) , 3329-3341  (2010)
原著論文9
村松裕子、木村晋也、一戸辰夫、他
造血幹細胞移植における血縁ドナーのための専門外来
日本輸血細胞治療学会雑誌 , 56 (1) , 68-71  (2010)
原著論文10
Kurata R, Fujita F, Oonishi K, et al.
Inhibition of the CXCR3-mediated pathway suppresses ultraviolet ray B-induced pigmentation and erythema in skin.
Br J Dermatol , 163 (3) , 593-602  (2010)
原著論文11
Takenaka C, Nishishita N, Takada N, et al.
Effective generation of iPS cells from CD34+ cord blood cells by inhibition of p53
Exp Hematol , 38 (2) , 154-162  (2010)
原著論文12
山朋樹、笠井泰成、上田路子、他
大腿骨頭無腐性壊死症に対する自己骨髄間葉系幹細胞を用いた臨床試験
再生医療 , 9 (4) , 25-31  (2010)
原著論文13
Himeno A, Akagi T, Uto T, et al.
Evaluation of the immune response and protective effects of rhesus macaques vaccinated with biodegradable nanoparticles carrying gp120 of human immunodeficiency virus
Vaccine , 28 (32) , 5377-5385  (2010)
原著論文14
Inaba K, Fukazawa Y, Matsuda K,
Small intestine CD4+ cell reduction and enteropathy in SHIV-KS661-infected rhesus macaques in presence of low viral load
J Gen Virol , 91 (3) , 773-781  (2010)
原著論文15
Sekimoto M, Imanaka Y, Shirai T, et al.
Risk-adjusted assessment of incidence and quantity of blood use in acute-care hospitals in Japan: an analysis using administrative data
Vox Sanguinis , 98 (4) , 538-546  (2010)
原著論文16
Kitawaki T, Kadowaki T, Fukunaga K, et al.
Cross-priming of CD8(+) T cells pulsed with autologous apoptotic leukemic cells in immunotherapy for elderly patients with acute myeloid leukemia
Exp Hematol , 39 (4) , 424-433  (2011)
原著論文17
Mitsui H, Aoyama T, Furu M, et al.
Prostaglandin E2 receptor type 2-selective agonist prevents the degeneration of articular cartilage in rabbit knees with traumatic instability
Arthritis Res Ther , 15 (5) , 146-  (2011)
原著論文18
田野崎隆二、室井一男、長村登紀子、他
院内における血液細胞処理のための指針
日本輸血細胞治療学会雑誌 , 57 (3) , 184-187  (2011)
原著論文19
Tada, N., Hinotsu, S., Urushihara, H, et al.
The current status of umbilical cord blood collection in Japanese medical centers: survey of obstetricians
Transfus Apher Sci , 44 (3) , 263-268  (2011)
原著論文20
Kitawaki T, Kadowaki T, Fukunaga K, et al.
A phase I/II study of immunotherapy for elderly patients with acute myeloid leukemia using dendritic cells pulsed with autologous apoptotic leukemic cells
Brit J Haematol , 53 (6) , 796-799  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201113009Z