肝臓に対する新規DDSを活用した経口遺伝子治療法の開発

文献情報

文献番号
201111022A
報告書区分
総括
研究課題名
肝臓に対する新規DDSを活用した経口遺伝子治療法の開発
課題番号
H23-医療機器・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
横田 隆徳(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 片岡 一則(東京大学 大学院マテリアル工学専攻)
  • 村上 正裕(大阪大谷大学 薬学部薬剤学)
  • 和田 猛(東京大学大学院 メディカルゲノム専攻)
  • 小比賀 聡(大阪大学薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Small interfering RNA (siRNA)等の機能核酸は、有用な遺伝子発現抑制法として広く用いられているが、遺伝子治療を目的とした生体への応用においてデリバリー方法の確立が大きな障壁で、今までに全身投与には注射による報告しかない。機能核酸を臨床でより幅広く応用するためには、自己投与可能な経口投与法を確立する必要がある。
我々はビタミンE (Toc)を直接siRNAに結合させたToc-siRNAの静脈投与で、肝における標的遺伝子の発現を抑制させることに成功している。そこで、本研究では食後にTocが肝細胞に運搬される経路を利用してToc-siRNAを直腸内に投与することで肝疾患を治療する可能性を検討した。本年度はToc-siRNAを用いた注腸投与での肝へのデリバリー法の確立及びデリバリー経路の解明・確認を主に研究を行った。
研究方法
脂肪酸と界面活性剤からなる混合ミセル(MM)とToc-siRNAを混合して注腸後、逆流防止のため10分ほど肛門を閉塞し、その後は解放した。この方法で肝における標的遺伝子のmRNAを有意に抑制し、かつその標的遺伝子の産生物の血中での低下を確認した。その際に血清における肝機能障害等の副作用の有無を確認した。また蛍光標識したToc-siRNAを注腸投与して、全身臓器での蛍光を確認した。
結果と考察
Toc-siRNAの注腸投与時にほぼ肝に限局してデリバリーされること、肝において標的遺伝子の発現を抑制でき、明らかな副作用も認められないこと、リンパ管を経由して受容体介在性に肝に取り込まれることを確認した。本投与方法はマウスに対して静注と比較しても明らかに負担の少ない投与方法であり、結果は本方法が高脂血症等の慢性疾患の治療に対しても有用であることを示している。今後核酸の最適化を行って必要量を減らした上で、長期反復投与を各種疾患モデルマウス等に対して投与する予定である。
結論
経口摂取後のTocの生理学的取り込み経路を利用することで、肝細胞への経消化管的な核酸のデリバリーに成功した。今後は反復投与での有効性と安全性の確認、siRNAやMMの改良によって有効性の向上及び、低用量でRNAi効果を得ること、現行の直腸投与から経口投与への移行が課題である。特にsiRNAに変えてより標的遺伝子発現抑制効果の高い新規機能核酸を用いることで、今回のデリバリー法を用いたより効果の高い方法も確立できる可能性があり、本年度確立した方法をさらに改善させて、各種疾患モデルマウスに対して長期反復投与を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2012-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201111022Z