細胞性免疫誘導型リポソームワクチンの創製に関する研究

文献情報

文献番号
201111011A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞性免疫誘導型リポソームワクチンの創製に関する研究
課題番号
H21-ナノ・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
内田 哲也(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高田 礼人(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 永田 恭介(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 赤塚 俊隆(埼玉医科大学微生物学教室)
  • 松井 政則(埼玉医科大学微生物学教室)
  • 石井 健(医薬基盤研究所アジュバント開発プロジェクト)
  • 種市 麻衣子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 横山 晶一(日油株式会社DDS事業部)
  • 野崎 周英(財団法人化学及血清療法研究所試作研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は我々がこれまでに開発した、細胞性免疫を誘導することの出来るリポソームワクチンを用いて、表面抗原を変異させて抗体による免疫応答から逃れるタイプのウイルスに対するワクチンを創製することを目的とする。
 本研究では、現在開発が待たれているインフルエンザワクチン、C型肝炎ワクチン、およびエボラワクチンの開発および実用化に向けた検討を行う。
研究方法
(1)献血由来末梢血単核球(PBMC)を用いた検討、インフルエンザウイルス内部タンパクの全長を結合したリポソームによるインフルエンザウイルス感染抵抗性誘導の検討、2次免疫におけるアジュバント要否の検討、およびインフルエンザウイルス内部タンパクアミノ酸配列の保存性の検討を行った。(2) CTL誘導型C型肝炎ワクチンに用いるHCV由来CTLエピトープの検索および有効性に関する検討を行った。(3) 前年度までに同定したHLA-A2およびA24拘束性エボラウイルス由来CTLエピトープにつき、このエピトープによるCTL誘導およびペプチド特異的killing活性を検討した。
結果と考察
献血由来PBMCの88%がHLA-A2あるいはA24陽性であったことから、HLA-A2およびA24拘束性ペプチドワクチンは十分に厚生労働行政上および国民の保健・医療・福祉の向上への貢献が期待できるものと考えられた。これまでに同定されたCTLエピトープがワクチン抗原として妥当であり、亜型の異なるウイルスに対する交差感染防御を誘導可能であることが確認された。
 リポソームワクチンによる2次免疫においてはアジュバントを必要としないことが確かめられたことから、インフルエンザワクチンおよびC型肝炎ワクチンに関してはアジュバント非存在下においても一定の効果が得られるものと考えられた。
結論
本年度までの検討により、CTL誘導型インフルエンザワクチンの基本的なワクチン構成が決定され、このワクチンによるウイルス感染防御効果が確認された。現行のインフルエンザスプリットワクチンは症状の重篤性を軽減する作用はあるものの感染防御効果に乏しい、という事が共通認識となっていることから、特に高病原性の新型インフルエンザウイルスに対する発生時対応の手段としてCTL誘導型インフルエンザワクチンを位置付け、実用化を急ぐべきであると考える。また、同様のコンセプトにより並行して行われたC型肝炎ワクチンおよびエボラワクチン開発においても、有望なワクチン候補物質が得られた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201111011B
報告書区分
総合
研究課題名
細胞性免疫誘導型リポソームワクチンの創製に関する研究
課題番号
H21-ナノ・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
内田 哲也(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高田 礼人(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター )
  • 永田 恭介(筑波大学 大学院人間総合研究科)
  • 赤塚 俊隆(埼玉医科大学 微生物学教室)
  • 松井 政則(埼玉医科大学 微生物学教室)
  • 石井 健(医薬基盤研究所 アジュ バント開発プロジェクト )
  • 種市 麻衣子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 横山 晶一(日油株式会社 DDS事業部)
  • 野崎 周英(財団法人化学及血清療法研究所 試作研究部 )
  • 喜田 宏(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター )
  • 垣内 史堂(東邦大学 医学部免疫学講座)
  • 斎藤 三郎(東京慈恵会医科大学 DNA医学研究所)
  • 田中 ゆり子(東邦大学医学部 免疫学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は我々がこれまでに開発した、細胞性免疫を誘導することの出来るリポソームワクチンを用いて、表面抗原を変異させて抗体による免疫応答から逃れるタイプのウイルスに対するワクチンを創製することを目的とする。
研究方法
(1) CTL誘導型インフルエンザワクチンの臨床応用に向けた検討:献血由来末梢血単核球(PBMC)を用いた検討、2次免疫におけるアジュバント要否の検討、およびインフルエンザウイルス内部タンパクアミノ酸配列の保存性の検討を行った。(2) CTL誘導型C型肝炎ワクチンの臨床応用に向け、CTL誘導型C型肝炎ワクチンに用いるHCV由来CTLエピトープの検索、および有効性に関する検討を行った。(3) CTL誘導型エボラ出血熱ワクチンの臨床応用に向け、前年度までに同定したHLA-A2およびA24拘束性エボラウイルス由来CTLエピトープにつき、このエピトープによるCTL誘導およびペプチド特異的killing活性を検討した。
結果と考察
(1) 献血の88%がHLA-A2あるいはHLA-A24陽性であったことから、インフルエンザウイルス感染防御能を誘導可能なHLA-A2およびA24拘束性ペプチドワクチンは十分に厚生労働行政上の貢献が期待できるものと考えられた。本研究において同定された殆どのCTLエピトープは、高度に保存された領域に含まれることが明らかになった。(2) ペプチド結合リポソームワクチンは従来のペプチドを用いた免疫法やウイルス感染などとは異なる免疫原性をペプチドに与えることを示唆する結果が得られた。この性質は慢性ウイルス感染症の治療ワクチンの創製への応用に適していると考えられた。(3) HLA-A2およびA24拘束性CTLエピトープを結合したリポソームによって誘導されたCTLが内在性抗原を認識することが明らかとなった。HLA-A2およびA24拘束性のCTLエピトープの検索が終了し、抗原特異的CTLを高効率に誘導することの出来るエピトープが多数同定された。
結論
これまでの検討の結果、CTL誘導型インフルエンザワクチンの基本的ワクチン構成が確立され、ウイルス感染防御効果が確認された。現行のインフルエンザスプリットワクチンは症状の重篤性を軽減する作用はあるものの感染防御効果に乏しい、という事が共通認識となっていることから、特に高病原性の新型インフルエンザウイルスに対する発生時対応の手段としてCTL誘導型インフルエンザワクチンを位置付け、実用化を急ぐべきであると考える。

公開日・更新日

公開日
2012-06-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201111011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現行のウイルスワクチンは主としてウイルス抗原に対する抗体の産生(液性免疫)を誘導することを目的としているため、表面抗原の異なるウイルス亜種が出現するとワクチンが奏功しないという欠点がある。これに対し、ウイルス抗原に特異的な細胞性免疫を誘導するワクチンは、より保存されたウイルス内部のタンパク由来のCTLエピトープを標的とした細胞性免疫の誘導が可能となり、ウイルスの変異の影響を受けることなく単一のワクチンで複数のウイルス亜種に対する免疫を誘導することが期待される。
臨床的観点からの成果
現行のインフルエンザスプリットワクチンは症状の重篤性を軽減する作用はあるものの感染防御効果に乏しい、という事が共通認識となっていることから、感染防御誘導効果を有するCTL誘導型インフルエンザワクチンは季節性インフルエンザの予防だけでなく、高病原性の新型インフルエンザウイルスに対する発生時対応の手段としても有意義であると考える。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
本研究は現在ワクチンの開発が喫緊の課題となっている、C型肝炎、エボラ出血熱、インフルエンザ等のウイルス疾患の予防を可能にするワクチンの創製を目指している。これらのワクチンを開発・臨床応用することにより、厚生労働行政上の貢献、および国民の保険・医療・福祉の向上への貢献が期待される。本研究におけるワクチン創製の手法は、エイズウイルスの様に高頻度に変異を繰り返し、従来の抗体誘導型ワクチンによっては効果が限定的なものとなるウイルスによって引き起こされる疾患を予防するワクチンの創製にも応用可能である。
その他のインパクト
報道発表等:2009年1月29日 読売新聞、2009年2月 NEWTON 2月号、2009年2月16日 アエラ、2009年4月6日 かがくナビ、2009年8月8日 日本経済新聞、2012年3月1日 メディカルトリビューン 講演等:2008年1月21日 ワクチンフォーラム(東京)、2009年11月20日 新領域想像講座(東京)、2010年3月28日 日本薬学会第130年会シンポジウム(岡山)、2011年1月26日 スーパー特区フォーラム(大阪)、2012年1月19日 ワクチンフォーラム(大阪)

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
58件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
56件
学会発表(国際学会等)
24件
その他成果(特許の出願)
10件
「出願」「取得」計11件
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohno S, Kohyama S, Taneichi M et al.
Synthetic peptides coupled to the surface of liposomes effectively induces SARS coronavirus-specific cytotoxic T lymphocytes and viral clearance in HLA-A*0201 transgenic mice.
Vaccine , 27 , 3912-3920  (2009)
原著論文2
Takagi A, Matsui M, Ohno S et al.
Highly efficient anti-viral CD8+ T cell induction by peptides coupled to the surface of liposomes.
Clinical Vaccine Immunology , 16 , 1383-1392  (2009)
原著論文3
Kohyama S, Ohno S, Suda T et al.
Efficient induction of cytotoxic T lymphocytes specific for severe acute respiratory syndrome (SARS)-associated coronavirus by immunization with surface-linked liposomal peptides derived from a non-structural polyprotein 1a.
Antiviral Research , 84 , 168-177  (2009)
原著論文4
Matsui M, Kohyama S, Suda T, et al.
A CTL-based liposomal vaccine capable of inducing protection against heterosubtypic influenza viruses in HLA-A*0201 transgenic mice.
Biochem Biophys Res Comm , 391 , 1494-1499  (2010)
原著論文5
Uchida T.
Development of a cytotoxic T-lymphocyte-based, broadly protective influenza vaccine.
Microbiol Immunol , 55 , 19-27  (2011)
原著論文6
Taneichi M, Tanaka Y, Kakiuchi T et al.
Liposome-coupled peptides induce long-lived memory CD8+ T cells without CD4+ T cells.
PLoS ONE , 5 (11) , 15091-  (2010)
原著論文7
Tanaka Y, Taneichi M, Kasai M et al.
Liposome-coupled antigens are internalized by antigen-presenting cells via pinocytosis and cross-presented to CD8+ T cells.
PLoS ONE , 5 (12) , 15225-  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201111011Z