蛋白質セラピー法と中性子捕捉療法による難治性がん治療法開発

文献情報

文献番号
201111006A
報告書区分
総括
研究課題名
蛋白質セラピー法と中性子捕捉療法による難治性がん治療法開発
課題番号
H21-ナノ・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松井 秀樹(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮武 伸一(大阪医科大学 医学部 脳神経外科学)
  • 小野 公二(京都大学 原子炉実験所)
  • 魏 范研 (ウエイ フアンイエン)(熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 伊達 勲(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 西木 禎一(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 妹尾 昌治(岡山大学 大学院自然科学研究科)
  • 二木 史朗(京都大学 大学院薬学研究科)
  • 道上 宏之(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
49,094,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ホウ素と中性子の反応を利用して細胞レベルでがん細胞を選択的に破壊するホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は脳腫瘍、悪性黒色腫、頭頚部がんを中心に、現在、原子炉を利用した臨床研究段階にある。本研究では、BNCTにおける治療効果の向上および適応症例の拡大を目指し、悪性脳腫瘍を始めとする難治性がんの治療を対象に、がん細胞を選択的に標的化し高効率に細胞内導入できるホウ素製剤を創出する。
研究方法
本研究では、蛋白質セラピー法を応用した細胞膜透過性を有するBSHペプチド、並びにがん選択的に標的化するBSH封入ナノカプセルの2種類の新規ホウ素製剤を開発し、脳腫瘍やその他の難治がんに対するBNCTに有効であるかを培養細胞および腫瘍モデル動物を用いて実証する。さらに、その生体内動態や安全性を検証する。最終年度となるH22年度は、過去2年で開発したホウ素製剤を用いて中性子照射を行い、BNCTでの治療効果を検討するとともに、マウスを用いて製剤の安全性を実証した。
結果と考察
BSHを細胞膜通過ペプチドで修飾し細胞内導入効果を付与したBSHぺプチドを、細胞内に効率良く送達し中性子照射を行えば、γ線照射に抵抗性を示す脳腫瘍幹細胞でも抵抗性が克服され、治療効果が見込めることが判明した。さらに、複数のBSHを結合させたマルチBSHペプチドを合成し、単体のBSHペプチドの約10倍高い細胞導入効率を持ち、中性子照射で既存のBSHに比べ遥かに高いがん殺傷効果を示すことを確認した。一方、脳腫瘍以外の難治性がんへの応用として、抗体付加型BSH封入ナノカプセルを応用しペプチド付加型ナノカプセルを開発した。同カプセルは、ペプチド未付加型に比べて5倍ものホウ素を腫瘍細胞内へ選択的に送達し、卵巣がん等の他の難治性がんへ応用できる可能性を示した。一方で、腫瘍モデル動物として、悪性脳腫瘍、特に神経膠芽腫の特徴である脳へ浸潤する形態を有するモデル動物の作製を検討し成功した。
結論
以上のように最終年度である本年度は、開発したホウ素製剤のBNCTにおける有効性および安全性を確認した。これまでヒトの病態に似た神経膠芽腫モデルはないため、本モデルはBNCTの基礎実験データを臨床研究へ発展させる上で重要な疾患モデルとなると期待される。今後、新規製剤の治療効果と安全性をさらに検証し、前臨床研究・臨床研究への展開を目指す。

公開日・更新日

公開日
2012-06-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201111006B
報告書区分
総合
研究課題名
蛋白質セラピー法と中性子捕捉療法による難治性がん治療法開発
課題番号
H21-ナノ・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松井 秀樹(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮武 伸一(大阪医科大学 医学部 脳神経外科学)
  • 小野 公二(京都大学 原子炉実験所)
  • 井口 東郎((独)国立病院機構 四国がんセンター)
  • 富澤 一仁(熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 魏 范研(熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 伊達 勲(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 西木 禎一(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 妹尾 昌治(岡山大学 大学院自然科学研究科)
  • 二木 史朗(京都大学 大学院薬学研究科)
  • 道上 宏之(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ホウ素と中性子の反応を利用して細胞レベルでがん細胞を選択的に破壊するホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は脳腫瘍、悪性黒色腫、頭頚部がんを中心に、現在、原子炉を利用した臨床研究段階にある。BNCT治療はいかに高濃度のホウ素をがん細胞に選択的に送達できるかに依るが、既存のホウ素製剤(BPA、BSH)の腫瘍選択的集積には限界があり、治療成績向上や適応症例拡大には新規製剤の開発が必要である。本研究では、悪性脳腫瘍を始めとする難治性がんの治療を対象に、がん細胞を選択的に標的化し高効率に細胞内導入できるホウ素製剤を創出する。
研究方法
3年間の研究で、我々がこれまでに開発した蛋白質セラピー法を応用した細胞膜透過性を有するBSHペプチド、並びにがん選択的に標的化するBSH封入ナノカプセルの2種類の新規ホウ素製剤を開発し、これらの製剤が脳腫瘍や卵巣がんに対するBNCTに有効であるかを培養細胞および腫瘍モデル動物を用いて実証するとともに、製剤の生体内動態や安全性を検証した。
結果と考察
複数のBSHに細胞膜透過性ペプチドを結合し細胞導入効率を高めたマルチBSHペプチドは、単体のBSHペプチドに比べ10倍ものホウ素をがん細胞内に送達し、培養細胞による中性子照射実験で100倍高濃度のBSHよりも優れたがん殺傷能を示した。一方、脳腫瘍を特異的に認識する抗体を付加したBSH封入ナノカプセルは、マウス脳腫瘍モデルで腫瘍部/正常部のホウ素濃度比>10を達成して腫瘍組織への高選択的ホウ素集積を示し、さらに卵巣がんを認識するペプチド付加型カプセルは未付加型の5倍ものホウ素を卵巣がん細胞に送達した。新規製剤の安全性はマウスを用いて実証された。また、ヒトの病態に似た脳へ浸潤する形態を有する悪性脳腫瘍モデル動物の作製に成功した。
結論
本研究で開発したBSHペプチドはγ線照射に抵抗性を示す脳腫瘍幹細胞でも治療効果が見込めることが判明し、今後、脳腫瘍に対するBNCT治療の成績向上に貢献できると期待される。また、高い腫瘍選択性を示すBSH封入ナノカプセルは、表面の抗体やペプチドを取り替えることで他の難治性がんへ応用でき、将来の適応拡大に向けて有望な候補となり得る。今後、本製剤の治療効果と安全性を腫瘍モデル動物により検証しながら開発研究を重ね、GMP製造を検討し、前臨床研究・臨床研究への展開を目指す。

公開日・更新日

公開日
2012-06-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201111006C

収支報告書

文献番号
201111006Z