超高感度電気化学イメージング技術を応用したヒト生殖細胞クオリティー診断装置の開発

文献情報

文献番号
201111003A
報告書区分
総括
研究課題名
超高感度電気化学イメージング技術を応用したヒト生殖細胞クオリティー診断装置の開発
課題番号
H21-ナノ・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 宏之(国立大学法人山形大学 大学院理工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 末永 智一(東北大学 原子分子材料学高等研究機構)
  • 吉野 修(東京大学 医学部産婦人科)
  • 藤本 晃久(東京大学 医学部附属病院女性診療科)
  • 浜谷 敏生(慶應義塾大学 医学部産婦人科)
  • 横尾 正樹(秋田県立大学 生物資源科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
電気化学計測(イメージング)法は、生物活動によって生じる電気化学的現象をマイクロ電極により高感度でモニタリングできる有効な技術である。本研究事業では、電気化学イメージング技術を応用した「臨床対応型細胞呼吸測定装置」を開発し、呼吸活性を指標とする新しいヒト生殖細胞クオリティー診断法の確立を目的とする。
研究方法
本研究事業の最終年度は、ヒトの胚および卵子のクオリティー診断システムの確立と、医療現場での利用を目指した「臨床対応型細胞呼吸測定システム」の完成を目的とした。具体的には、(1)超高感度マイクロ電極、非侵襲呼吸測定液および呼吸解析ソフトを開発し、医療応用の可能性を検討した。(2)走査型電気化学顕微鏡をベースに(1)で開発した要素技術をシステム化した「細胞呼吸測定システム」を製作し、医療現場での実用化の可能性を検証した。これと並行して、(3)「細胞呼吸測定システム」の有効性と安全性を検証するための探索的臨床研究として、ヒト余剰胚を用いた呼吸能解析および培養試験、動物胚を用いた胚の移植試験と安全性評価、ミトコンドリア呼吸機能の細胞生物・分子生物学的解析を行った。
結果と考察
研究項目(1)では、高感度マイクロ電極と非侵襲測定液の開発に成功し、単一の胚および卵子の呼吸量を非侵襲的に測定することが可能となった。研究項目(2)では、「細胞呼吸システム」を医療機関における実用化試験を行った。その結果、臨床現場において試料の設置から測定・解析までの一連の操作を1-2分で完了できた。研究項目(3)では、呼吸測定した胚や胚移植によって誕生した産子の正常性が確認され、医療応用へ向けての有効性と安全性が示された。また、ヒト胚および卵子の呼吸量測定に成功し、呼吸活性を指標とする新しいヒト生殖細胞クオリティー診断法の基盤を構築することができた。さらに、ミトコンドリア呼吸機能制御機構に関する分子的基盤が明らかになった。以上、各研究項目において計画通りの研究が行われ、3年間の研究事業の最終年度として十分な研究成果が得られた。
結論
今年度は、超高感度マイクロ電極や非侵襲測定液などの要素技術をシステム化し、医療応用可能な「細胞呼吸測定システム」を開発することができた。ウシおよびマウスを用いた動物実験により、呼吸活性を指標とする生殖細胞のクオリティー評価技術の有効性と医療応用へ向けての安全性が確認された。ヒト胚および卵子の呼吸量測定に成功し、呼吸活性を指標とするヒト生殖細胞クオリティー診断法の有効性と安全性が示唆された。これらの研究により、最終目標である「ヒト生殖細胞クオリティー診断システム」の開発に大きく前進した。

公開日・更新日

公開日
2012-06-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201111003B
報告書区分
総合
研究課題名
超高感度電気化学イメージング技術を応用したヒト生殖細胞クオリティー診断装置の開発
課題番号
H21-ナノ・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 宏之(国立大学法人山形大学 大学院理工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 末永 智一(東北大学 原子分子材料学高等研究機構)
  • 吉野 修(東京大学 医学部産婦人科)
  • 藤本 晃久(東京大学 医学部附属病院女性診療科)
  • 浜谷 敏生(慶應義塾大学 医学部産婦人科)
  • 横尾 正樹(秋田県立大学 生物資源科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
不妊治療成績の向上には客観的で精度の高いクオリティー評価法の開発が不可欠である。本研究では、生物活動を高感度・非侵襲的に検出できる電気化学計測(イメージング)法に着目し、細胞呼吸活性を指標に胚の品質を厳密に評価できる新しい生殖細胞クオリティー診断システムの開発を試みた。本研究事業の最終目標は、電気化学イメージング技術を応用した「臨床対応型細胞呼吸測定装置」を開発し、呼吸活性を指標とする新しいヒト生殖細胞クオリティー診断法を確立することである。
研究方法
研究期間内に、(1)医療現場での応用が可能な「細胞呼吸測定システム」の開発、(2)「細胞呼吸測定システム」の有効性・安全性の検証と呼吸活性を指標とする生殖細胞クオリティー診断法の開発、(3)「細胞呼吸測定システム」の臨床応用を目的とした探索的臨床研究を行った。研究項目(1)では、高感度マイクロ電極など医療応用可能な計測技術の開発を行った。研究項目(2)では、生殖細胞クオリティー評価における「細胞呼吸測定システム」の有効性と安全性をミトコンドリア呼吸機能の生物学的解析により検証した。研究項目(3)では、ヒトの余剰胚や卵子の呼吸量測定と培養試験を行った。
結果と考察
研究項目(1)では、単一の胚および卵子の呼吸量を非侵襲的に測定できる「細胞呼吸測定システム」を開発し、医療応用の可能性を実証することができた。研究項目(2)では、呼吸活性を指標とする生殖細胞クオリティー診断の有効性と安全性を生物学的解析により実証するとともに、初期発生におけるミトコンドリア呼吸機能解明のための分子的基盤を構築することができた。研究項目(3)では、「細胞呼吸測定システム」を中心とする新しい「ヒト生殖細胞クオリティー診断システム」の構築に向けて極めて有効な前臨床データが得られた。本研究では、「細胞呼吸測定システム」の臨床応用の可能性を実証するとともに、最終目標である「ヒト生殖細胞クオリティー診断システム」の開発に大きく前進した。
結論
本研究の結果、次の結論に達した。(1)単一の胚や卵子の呼吸量を非侵襲的に測定できる高精度の「細胞呼吸測定システム」を開発することができた。この測定システムは、医療現場での利用が可能であった。(2)ウシおよびマウスを用いた動物実験により、「細胞呼吸測定システム」の有用性と安全性が確認された。呼吸活性を指標とする生殖細胞クオリティー診断技術の有効性が実証された。3)ヒト胚および卵子の呼吸量測定に成功し、呼吸活性を指標とするヒト生殖細胞クオリティー診断法の有効性と安全性が示めされた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201111003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、金属錆の検出など材料分野において活用されていた電気化学計測技術を生物に応用する点、また、呼吸活性を指標とする胚品質診断システムを開発するという点において、技術的・学術的に新しい発想に基づく極めて独創性の高い研究であった。単一胚(細胞)の呼吸活性を高感度・非侵襲的に計測できる技術の開発は、ミトコンドリアの呼吸機能解析などの基礎研究から医療分野における細胞機能診断等応用範囲は極めて広く、本研究の成果は多方面から大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
本研究では、ヒトの余剰胚および余剰卵子を用いた試験的臨床研究により細胞呼吸計測技術の有効性と安全性を検証することができた。特に、形態観察では知ることができなかったヒト生殖細胞の品質を、呼吸測定によって客観的に診断することができ、しかも臨床応用の可能性を示すことができたことから、当該分野に大きなインパクトを与えた。本研究の成果は、生殖医療の専門学会や不妊治療機関の医師から大きな反響があった。
ガイドライン等の開発
特に、ガイドライン等の開発は行っていない。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は、不妊治療などの生殖補助医療技術の高度化・標準化を可能とし、当該省庁が推進している少子化対策に貢献することが期待される。
その他のインパクト
本研究に関する成果は、全国紙を含め新聞報道が8件行われ、一般市民からの問い合わせも多数寄せられており、大きな反響がある。また、新しい計測方式に基づいた装置開発を進めており、一部の研究成果は学会発表及び新聞報道等で取り上げられている。学会・研究からの講演会や大学・高校での講義などで生殖医療と研究成果の啓蒙活動を積極的に行っている。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
75件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
188件
学会発表(国際学会等)
39件
その他成果(特許の出願)
4件
その他成果(特許の取得)
3件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
15件

特許

特許の名称
ウェルユニット及び電気化学的分析法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2010-208817号
発明者名: 青柳重夫、内海陽介、末永智一、珠玖仁、阿部宏之、河野浩之、柏崎寿宣、星 宏良、星 翼
権利者名: 北斗電工株式会社
出願年月日: 20100917
国内外の別: 国内
特許の名称
哺乳類胚の無侵襲的品質評価方法及びその装置
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第3688671号
発明者名: 珠玖 仁、白石卓夫、大矢博明、末永智一、阿部宏之、星 宏良
権利者名: 科学技術振興機構
出願年月日: 20020426
国内外の別: 国内
特許の名称
電気化学的多検体分析方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第3688671号
発明者名: 珠玖 仁、白石卓夫、末永智一、阿部宏之、星 宏良、青柳重夫、内海陽介、松平昌昭
権利者名: 科学技術振興機構
出願年月日: 20040408
国内外の別: 国内
特許の名称
検体セル及び電気化学的分析装置及び電気化学分析方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第4097492号
発明者名: 珠玖 仁、白石卓夫、末永智一、阿部宏之、星 宏良、青柳重夫、内海陽介、松平昌昭
権利者名: 北斗電工株式会社
出願年月日: 20040408
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sakagami N., Nishida K., Akiyama K., et al.
Relationships between oxygen consumption rate, viability and subsequent development of in vivo-derived porcine embryos.
Theriogenology , 83 , 14-20  (2015)
原著論文2
Yoshida H., Abe H., Arima T.
Quality evaluation of IVM embryo and imprinting genes of IVM babies.
Journal of Assisted Reproduction and Genetics , 30 (2) , 221-225  (2013)
10.1007/s10815-013-9945-9
原著論文3
Kumasako Y., Goto K., Koike M., et al..
Respiration activity of single blastocysts measured by scanning electrochemical microscopy: The relationship between pre-freezing and post-warming.
Journal of Mammalian Ova Research , 30 (1) , 30-35  (2013)
原著論文4
Yamanaka M., Hashimoto S., Amo A., et al.
Developmental assessment of human vitrified-warmed blastocycts based on oxygen consumption
Human Reproduction , 26 (12) , 3366-3371  (2011)
10.1093/humrep/der324
原著論文5
Date Y., Takano S., Shiku H., et al.
Monitoring oxygen consumption of single mouse embryo on an integrated electrochemical microdevice
Biosensors and Bioelectronics , 33 (1) , 106-112  (2011)
10.1016/j.bios.2011.08.037
原著論文6
Kimura N., Tsunoda T., Iuchi Y., et al.
Intrinsic oxidative stress causes either two-cell arrest or cell death depending on developing stages of the embryos from SOD1-deficient mice
Molecular Human Reproduction , 16 , 441-451  (2010)
原著論文7
後藤香里、小池恵、熊迫陽子、他
電気化学的呼吸計測技術におけるヒト胚クオリティー評価と安全性
受精着床学会雑誌 , 27 (1) , 53-58  (2010)
原著論文8
Sakagami N., Yamamoto T., Akiyama K., at al.
Viability of porcine embryos after vitrification using water-soluble pullulanfilms
Journal of Reproduction and Development , 52 (1) , 279-284  (2010)
原著論文9
Murakawa H., Aono N., Tanaka T., et al.
Morphological evaluation and measurement of the respiration activity of cumulus-oocyte complexes to assess oocyte quality
Journal of Mammalian Ova Research , 26 , 32-41  (2009)
原著論文10
Shiku H., Yamakawa T., Nashimoto Y., et al.
A microfluidic dual capillary probe to collect messenger RNA from adherent cells and spheroids
Analytical Biochemistry , 385 , 138-142  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201111003Z