日本人に高頻度に見られる血栓性遺伝子変異をもつ疾患モデルマウスの開発

文献情報

文献番号
201110025A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人に高頻度に見られる血栓性遺伝子変異をもつ疾患モデルマウスの開発
課題番号
H23-創薬総合・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 敏行(独立行政法人 国立循環器病研究センター 分子病態部)
研究分担者(所属機関)
  • 小亀 浩市(独立行政法人 国立循環器病研究センター 分子病態部)
  • 坂野 史明(独立行政法人 国立循環器病研究センター 分子病態部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人はプロテインS K196E変異とプラスミノーゲンT620A変異を高頻度に保有し、プロテインS K196E変異は静脈血栓塞栓症のリスクである。本研究では、これら2つの血栓性遺伝子変異を保有するマウスを作製し、それらの血栓能を評価するとともに、作製した遺伝子改変マウスを(独)医薬基盤研究所に登録・寄託することにより資源化を図り、創薬モデルマウスの生物資源の整備に寄与することを目的とする。
研究方法
私達は、プロテインS K196E変異ホモ接合体・ヘテロ接合体マウス、プロテインS遺伝子欠損ヘテロ接合体マウス、プラスミノーゲン T622A変異ホモ接合体・ヘテロ接合体マウスの作製に成功した。本研究では、これら5種の血栓性マウスの表現型を解析する。
はじめに、作製したマウスのプロテインSやプラスミノーゲンの活性を測定した。次いで、組織因子惹起肺塞栓モデルなどのin vivo血栓評価系を用いて、プロテインS遺伝子改変マウスおよびプラスミノーゲン遺伝子改変マウスの血栓能を評価した。
結果と考察
遺伝子改変マウスをC57BL/6Jマウスに対して10世代戻し交配することで、共通の遺伝的背景の下に変異の影響を解析できる環境を確立した。次いで、プロテインS遺伝子改変マウスのプロテインS活性を測定したところ、いずれも活性の低下が認められた。遺伝子欠損ヘテロ接合体マウスのプロテインS活性は、野生型マウスの約50%まで低下していた。プラスミノーゲン遺伝子改変マウスはプラスミノーゲン活性が低下しており、ホモ接合体マウスでは野生型の約25%までプラスミノーゲン活性が低下していた。研究が順調に進捗したので、2年次に計画していたin vivo血栓評価系の実験を進めた。組織因子惹起肺塞栓モデルでは、野生型マウスとプロテインS K196E変異ホモ接合体マウスおよびプロテインS遺伝子欠損ヘテロ接合体マウスの間に生存に差が見られた。三血管閉塞法による脳虚血・再灌流モデルを用いた検討を行った結果、5種類の遺伝子改変マウスのいずれも、梗塞巣の拡大や神経症状の悪化は認められなかった。
結論
日本人に比較的多く見られるプロテインS K196E変異とプラスミノーゲンT620A変異を持つマウスを作製することに成功した。これらのマウスのプロテインSおよびプラスミノーゲンの活性は低下していた。肺塞栓モデルでは、プロテインS K196E変異ホモ接合体マウスおよびプロテインS遺伝子欠損ヘテロ接合体マウスの生存率が低下していた。これらのマウスは血栓症のモデルマウスになる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2012-04-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201110025Z