柴胡剤・熊胆剤による胆汁酸代謝制御の分子機構の解明と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療への展開

文献情報

文献番号
201110019A
報告書区分
総括
研究課題名
柴胡剤・熊胆剤による胆汁酸代謝制御の分子機構の解明と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療への展開
課題番号
H22-創薬総合・一般-012
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田中 智洋(財団法人 先端医療振興財団 先端医療センター 医薬品開発・支援部門 医薬品開発研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤慎二(京都大学大学院医学研究科 腫瘍生物学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎ウイルス感染に起因する病態が中心であったわが国の肝疾患の疾病構造は、生活習慣病の増加に伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の蔓延により大きく変貌しつつある。NASHは欧米諸国では肝硬変、肝ガンの最も高頻度な原疾患であり、わが国においてもNASHに起因する肝硬変、肝ガンの激増が予想される。しかし現在有効性が確立されたNASH治療薬は皆無で減量指導以外に対処法は無い。そこで本研究では、胆汁酸代謝制御という独自の観点と、肝胆疾患に古来より用いられてきた柴胡剤・熊胆剤による介入効果を評価するという2つの視点からNASHの病態に迫り、全く新しいNASHの診断・治療戦略の提唱を目的とする。
研究方法
研究代表者は、高脂肪食(HFD)負荷、メチオニン・コリン欠乏食(MCD)負荷マウスをNASH病態のモデルとしてこれらに小柴胡湯、熊胆剤の主成分であるウルソデオキシコール酸(UDCA)を投与し、血清代謝パラメータと同時に肝臓の脂肪化、炎症細胞浸潤、酸化ストレスマーカー、線維化マーカー等の検討を行った。さらにこれら薬剤作用の分子メカニズムの解明を目指して、胆汁酸合成制御に中心的役割を果たすことが確立されつつあるFGF19-bKlotho(bKl)システムのNASH病態における変化を検証し、またbKlの遺伝子改変マウスにNASHを誘発する実験を行った。研究分担者は液体クロマトグラフィーと質量分析装置とを組み合わせた独自のシステムと多変量解析ソフトウェアによりNASHに関連しうるメタボローム構成を解析した。
結果と考察
本研究により、1.野生型ないしbKlノックアウトマウス(bkl -/-)にNASHを誘発した際の肝臓の遺伝子発現の網羅的遺伝子発現プロファイルが得られ、2.MCD・HFD負荷マウスをモデルとした柴胡剤・熊胆剤の有効性が実証された。3.bKlの発現は脂肪肝において増加すること、4.bKlがVLDL-TGの放出を促進することが示され、bKl発現・機能亢進が、脂質の体内滞留を促しNASHを促進する可能性が示唆される。実際、5.bkl -/- にMCDによる脂肪肝を誘発すると、脂質含量や酸化ストレスマーカーの増加が対照野生型よりも軽微であった。さらに今年度は6.肝細胞特異的bKlトランスジェニックマウスの樹立に成功した。
結論
小柴胡湯やUDCAがNASH病態を改善する可能性が動物モデルで示され、その一部が胆汁酸代謝制御異常の改善を介する可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201110019Z