漢方薬「熊胆」の作用機序の解明からC型肝炎治療薬の開発

文献情報

文献番号
201110017A
報告書区分
総括
研究課題名
漢方薬「熊胆」の作用機序の解明からC型肝炎治療薬の開発
課題番号
H22-創薬総合・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
半田 宏(東京工業大学 ソリューション研究機構/大学院生命理工学研究科 生命情報専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 剛(東京工業大学 バイオフロンティアセンター)
  • 小田 泰子(慶應義塾大学 薬学部)
  • 末松 誠(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
16,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
漢方薬「熊胆」は「熊の胆(くまのい)」とも呼ばれる動物性生薬であり、その主成分である胆汁酸代謝物ウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid; UDCA)は肝機能改善薬として知られ、最近ではC型肝炎に対する有効な治療薬としても利用されている。本研究ではアフィニティ精製を利用してUDCAの標的タンパク質を単離・同定し、培養細胞や実験動物を用いてUDCAの薬理作用機構を分子レベルで解明することを目指し、本研究成果によって、漢方薬「熊胆」の有用性に科学的根拠を与えたい。
研究方法
東京工業大学の半田教授が独自に開発した高機能性磁性ビーズを用いたアフィニティ精製により、UDCAに対して特異的に結合するタンパク質(UDCAbp)を単離・同定した。UDCAに対するUDCAbpの結合活性を調べ、UDCAbpの下流シグナルを解析した。UDCAbpを過剰発現、あるいはノックダウンさせた培養細胞、UDCAbp強制発現マウスを作製し、UDCAの薬理活性を調べた。UDCAによる炎症性サイトカイン産生量の変化をイムノアッセイにて測定した。
結果と考察
UDCA固定化磁性ビーズを用いた種々のアフィニティ精製によって、ラットの肝臓抽出液からUDCAbp1(酵素)とUDCAbp2(イオンチャネル)を単離・同定し、組換えUDCAbp2とUDCAとの結合活性を確認した。細胞内で複合体を形成するUDCAbp2下流シグナル因子が存在し、UDCAによってUDCAbp2と下流シグナル因子との結合状態が変化することを明らかにした。UDCAbp2を過剰発現、あるいはノックダウンさせた培養細胞において骨芽細胞マーカーは有意に変化し、UDCAbp2強制発現マウスは野生型マウスに比べ、高い骨密度を有していた。UDCAbp2相互作用因子が存在すると、UDCAよる炎症性サイトカイン産生抑制が見られなくなった。
以上の結果から、UDCAによってUDCAbp2が下流シグナル因子などのタンパク質に影響を及ぼすことで、UDCAが薬理活性を示すのではないかと考えられる。
結論
高機能性磁性ビーズを用いたアフィニティ精製によって、UDCA特異的結合タンパク質(UDCAbp1、UDCAbp2)を単離・同定した。培養細胞やマウスを用いた各種実験から、UDCAbp2がUDCAの薬理活性を制御しているUDCA標的タンパク質であると期待される。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201110017Z