アルツハイマー病予防効果をもつ漢方薬とその有効成分の同定

文献情報

文献番号
201110016A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病予防効果をもつ漢方薬とその有効成分の同定
課題番号
H22-創薬総合・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
垣塚 彰(京都大学 京都大学大学院生命科学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
17,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我が国では、超高齢化社会への突入に伴い、アルツハイマー病に代表される認知症を患う患者の急激な増加が予想される。しかしながら、現在、有効な治療法が無いため、患者のみならず患者の家族を救う手段が無い。本研究は、アルツハイマー病の新規治療・予防法として、アルツハイマー病発症の最初のイベントであるAβの産生を担うγセクレターゼの阻害活性を有する漢方薬エキスを同定し、その有効成分の構造を決定すること、さらに、同定したエキスのアルツハイマー病に対する治療・予防効果を検証することを目的とする。
研究方法
 本研究では、昨年度同定したγセクレターゼの阻害活性を有する漢方薬エキスヒ酒花と雷公籐の内、雷公籐に含まれる主要阻害成分の構造決定を行う。また、昨年度作製した家族性アルツハイマー病の原因遺伝子を発現させたトランスジェニックマウスの解析を行う。
結果と考察
 雷公籐50gから、Bligh Dyer法とそれに続く3種類のHPLCで、γセクレターゼの阻害活性をもつ主成分を精製できる条件を決定し、最終的に13 mgの極めて純度の高い化合物を得た。質量分析によりこの化合物の分子量は632であり、核磁気共鳴(NMR)により、構造をC32H40O13と決定した。一方、昨年度作製した家族性アルツハイマー病の原因遺伝子を発現させたトランスジェニックマウスの解析により、本マウスは、生後9ヶ月頃で、Morris水迷路試験で記憶・学習能力の有意な低下が観察された。生後16ヶ月で脳の病理像を解析したところ、大脳皮質、視床下部、脳内の血管壁に顕著なアミロイドの沈着を認めた。以上の結果から、本マウスは新たなアルツハイマー病モデル動物として薬物の治療効果の判定等に活用できると考えられた。今後、本マウスを用いて、同定したエキスの治療効果を検証することで、安全なアルツハイマー病の治療に向けた基盤構築に繋げたい。
結論
 本年度は、雷公籐のγセクレターゼの活性阻害成分を精製し、質量解析とNMRによってその構造を決定した。一方、昨年度に作製した家族性アルツハイマー病の原因遺伝子を導入したトランスジェニックマウスは、加齢に伴った記憶・学習能力の低下と大脳皮質、視床下部、脳内の血管に顕著なアミロイドの沈着を認め、新たなアルツハイマー病のモデル動物として活用できることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2013-11-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201110016Z