貧血用漢方薬の作用メカニズム解析と有効成分の同定

文献情報

文献番号
201110013A
報告書区分
総括
研究課題名
貧血用漢方薬の作用メカニズム解析と有効成分の同定
課題番号
H22-創薬総合・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 大介(九州大学大学院医学研究院 先端医療医学部門先端医療医学講座 造血幹細胞分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
12,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 貧血疾患の治療において造血因子Erythropoietin(EPO)の導入、免疫抑制剤の開発、造血幹細胞移植療法開発により治療成績が飛躍的に向上した。しかし造血幹細胞移植療法は未だ問題を抱えているにも関わらずこの療法以外に治療が奏功しない難治性貧血が存在する。一部の難治性貧血に漢方薬が奏功してるが作用機序解明は発展途上である。
 本申請提案では、平成22年度、マウス造血細胞へ貧血用漢方薬として代表的な四物湯類を添加培養し細胞増殖を指標に赤血球系造血へ与える影響を検討、その結果人参養栄湯は細胞刺激因子非存在下で赤血球系造血を促進する事が明らかになった。平成23年度はマウスにおける研究成果の蓄積と人参養栄湯の有効成分同定を試みた。

研究方法
平成23年度は、マウスにおける研究成果の蓄積と人参養栄湯の有効成分同定を試みた。マウス赤血球造血に加え骨髄球造血を検討した。具体的には地黄、当帰、白朮、茯苓、人参、桂皮、芍薬、黄耆、甘草をマウス造血細胞へ添加した後、細胞増殖、アポトーシス、分化等をFlow cytomerty法及びreal-timePCR法で評価した。
結果と考察
 人参養栄湯は赤血球造血に加え白血球造血を亢進する事が明らかになった。培養11日目では、PIを取り込まない生細胞数が人参養栄湯を添加した群で多く認められ培養細胞のアポトーシス阻害が示唆された。そこで抗アポトーシス遺伝子Bcl-2とアポトーシス誘導遺伝子Baxの発現を検討したところ、培養11日目にコントロールと比較して有意に遺伝子発現の変化が認められた。更にFlow cytomerty法により培養細胞のCD45(白血球マーカー)の発現を検討、CD45陽性細胞の増加が認められた。更に、CD45遺伝子の発現と骨髄球分化マーカーPu.1遺伝子の発現を検討、培養8日目において発現亢進が認められた。以上より人参養栄湯の白血球造血亢進の機序は抗アポトーシス効果と骨髄球分化促進による事も明らかになった。
 またマウス骨髄単核球へ地黄、当帰、白朮、他6成分をそれぞれ添加培養し細胞増殖を検討したが人参養栄湯と同様の増殖効果を認めなかった。
結論
マウス赤血球造血に加え骨髄球造血を検討したところ、人参養栄湯は赤血球造血に加え白血球造血を亢進する事が明らかになった。白血球造血亢進の機序は抗アポトーシス効果と骨髄球分化促進による事も明らかになった。また、マウス骨髄単核球へ地黄、当帰、白朮、他6成分を添加培養し細胞増殖を検討したが、人参養栄湯と同様の増殖効果を認めなかった事より人参養栄湯の効果は相助的である事が明らかになった。 

 

公開日・更新日

公開日
2012-07-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201110013Z