漢方薬による免疫がん微小環境の改善と作用機序の解明

文献情報

文献番号
201110010A
報告書区分
総括
研究課題名
漢方薬による免疫がん微小環境の改善と作用機序の解明
課題番号
H22-創薬総合・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
河上 裕(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 千恵(慶應義塾大学 医学部)
  • 藤田 知信(慶應義塾大学 医学部)
  • 塚本 信夫(慶應義塾大学 医学部)
  • 渡辺 賢治(慶應義塾大学 医学部)
  • 山本 雅浩(慶應義塾大学 医学部)
  • 木内 文之(慶應義塾大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
13,940,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では「担がん生体の免疫抑制環境の改善」と「抗腫瘍免疫の増強」に有効な漢方成分を同定し、その作用機構を解明するとともに、それをリード化合物としてがん治療に応用可能な創薬につなげることを目的とした。
研究方法
in vitro解析として、各種漢方成分や植物エキスを用いて、1) 我々が分子機構を解明してきた3種のヒトがん細胞株からのIL-6、IL-10、VEGF、TGF-bなどの免疫抑制性サイトカインの産生の抑制、2)免疫抑制性のiTreg誘導の抑制、3) がん細胞や免疫細胞に発現して抗腫瘍免疫抑制に関与するAhR(aryl hydrocarbon receptor)活性の抑制などを指標としたスクリーニングを行い、抑制作用をもつ漢方化合物のシグナル伝達抑制作用などの機序を解析した。In vivo解析として、担がんマウスに漢方処方や成分を投与し、その抗腫瘍効果や免疫改善効果を解析した。
結果と考察
昨年選択した漢方成分と新規追加漢方成分を含む35種類から、ヒトがん細胞からの免疫抑制性サイトカインであるIL-6、IL-10、VEGF、TGF-bなどの産生を抑制する漢方化合物をそれぞれ複数同定した。それらはNF-kB, STAT3, MAPKなどのシグナル伝達系を抑制することを明らかにした。また、抗腫瘍免疫抑制性のiTreg誘導を抑制するが、抗腫瘍免疫促進性のTh1分化を抑制しない漢方成分を同定した。さらに、がん細胞や免疫細胞に発現して抗腫瘍免疫抑制に関与するAhRのアンタゴニスト活性をもつ漢方成分を複数同定し、がん細胞からの免疫抑制性サイトカインの産生やがん細胞の浸潤能を抑制することを明らかにした。これらのin vitroスクリーニングで同定した漢方化合物を担がんマウスへ投与した結果、腫瘍増殖抑制効果や抗腫瘍免疫促進作用を示す可能性が見いだされた。このように本年度の成果として、最終目標の達成に有用と考えられる漢方化合物を複数同定することができたので、最終年度は、本年度までに同定した漢方成分のin vivo効果とその作用機序の解析をさらに進める予定である。
結論
本研究は順調に進捗し、最終目標である、「がん治療の併用薬として有用な漢方成分」「がん治療創薬においてリード化合物となる漢方成分」の同定のために有用と考えられる複数の漢方化合物候補の同定に成功した。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201110010Z