認知症疾患モデル「TDP-43脳脊髄異常蓄積マウス」の開発

文献情報

文献番号
201110009A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症疾患モデル「TDP-43脳脊髄異常蓄積マウス」の開発
課題番号
H22-創薬総合・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 治彦(財団法人東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 成人(財団法人東京都医学総合研究所 病態細胞生物学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
TDP-43は不均一核リボ蛋白質の一種で,タウ陰性前頭側頭葉変性症(FTLD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)の脳脊髄に特異的に異常蓄積するほか,アルツハイマー病やレヴィー小体型認知症をはじめ様々な認知症疾患の約3分の1から半数において大脳への蓄積が認められる.そこで中枢神経系に,TDP-43の異常蓄積を生じるモデルマウスを作出し,それを含めたTDP-43異常蓄積治療薬開発のための薬剤候補化合物スクリーニングシステムを構築して創薬企業に提供する.
研究方法
家族性ALSの原因となるTDP-43遺伝子変異を導入したトランスジェニックマウス(Tg)を作製する.前年度の研究結果より単にALS変異を持つ全長型TDP-43を過剰発現させるだけではヒト病態を再現できないことが明らかになったので,培養細胞モデルで成功した改変遺伝子の導入,家族性FTLDを引き起こすプログラニュリン(GRN)変異と同等の異常を有するGRNノックアウトマウスとの交配によるTDP-43異常蓄積加速を試みた.Tg作製にはThy1プロモータを使用し,TDP-43遺伝子改変としてはC末側フラグメント,核移行シグナル除去,これらの組合せ等を用いた.
結果と考察
本年度試みたTDP-43改変遺伝子(ΔNLS,Δ(NLS&187-192),218-414,162-414)の過剰発現マウス系統では,前年度作製したTg(wild,G298S,M337V)と同程度の病変しか生じなかった.GRNノックアウトとG298S-Tgとの交配では,TDP-43(G298S)-Tg単独よりも中枢神経系における異常TDP-43蓄積が増加する傾向が見られたが,ヒト疾患脳脊髄と比べると僅かであり,創薬に用いることができるレベルには達しなかった.ヒト家族性ALSの原因となるTDP-43変異を含むコンストラクト,培養細胞モデルにおける封入体形成の状況にもとづく複数の改変コンストラクトを用いた-Tgを作出したが,現時点までに,ヒト疾患の病変に匹敵するほど多数のTDP-43異常蓄積~封入体を形成するマウス系統は得られていない.TDP-43過剰発現が発生に何らかの影響を与えて病変を形成しないマウスのみが誕生している可能性がある
結論
TDP-43異常蓄積マウスモデルの改良を継続するとともに,培養細胞モデルを組み合わせたトータルの治療薬スクリーニングシステムの開発を並行して進める必要がある.

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201110009Z