難治性てんかん患者由来iPS細胞を用いた新規創薬基盤の構築

文献情報

文献番号
201110007A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性てんかん患者由来iPS細胞を用いた新規創薬基盤の構築
課題番号
H21-生物資源・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
金村 米博(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター 先進医療研究開発部 再生医療研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 幸利(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター)
  • 佐藤 薫(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
8,645,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性てんかん患者に由来するヒトiPS細胞/神経幹細胞を樹立し神経細胞を作成し、てんかんモデル細胞としての有用性を検証し、抗てんかん薬開発過程に利用可能な新規生物資源の確立とそれを応用した新規創薬評価系の開発を目指す。
研究方法
1.てんかん患者由来iPS細胞および神経幹細胞の樹立:SMAD阻害剤を用いた分化誘導法にて、てんかん患者由来iPS細胞の神経系細胞への分化誘導を試み、さらに接着培養に移行させ、神経分化能を解析した。
2.培養ヒトアストロサイトを用いたアポトーシス測定系の確立:正常ヒトアストロサイト(NHA)を用いて、DNAラダー形成とCaspase-3活性測定を用いたアポトーシス測定系の開発を実施した。
3.てんかん患者由来分化細胞の作成とその特性解析:健常人由来 iPS 細胞から作成したneurosphereの培養・解析手法(細胞内カルシウム変動測定、免疫組織化学的解析)の、てんかん患者由来iPS 細胞由来neurosphereの特性解析への応用可能性を検討した。
結果と考察
1.てんかん患者由来iPS細胞はneurosphere形成能を有する神経幹細胞/前駆細胞に分化誘導させることが可能であり、その神経幹細胞/前駆細胞から多数の神経細胞を作成することが技術的に可能であることが確認された。
2.NHAは、Staurosporineを培養7日目に添加することによりCaspase-3 活性の増加、DNAラダー形成の増加が引き起こされ、自然経過の中で培養7日目以降に加速度的にCaspase-3活性が上昇し、培養19日目以降DNAラダー形成の増加を認めることを明らかにした。
3.てんかん患者由来iPS細胞から作成したneurosphereに由来する神経系分化細胞の特性解析に、両解析手法が応用可能であること、てんかん患者iPS細胞由来神経細胞は、健常人由来iPS細胞由来細胞よりもカルシウム応答性を示すリガンドの種類が多く、radial glia細胞数が多いことを明らかにした。
結論
3年間の成果の総括としては、本研究課題の最大の目標であった、難治性てんかん患者に由来するヒトiPS細胞/神経幹細胞および神経細胞の作成に成功し、さらにそれら細胞を用いた評価系の開発の両方に成果を上げることができ、当初目標は達成されたものと考える。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201110007B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性てんかん患者由来iPS細胞を用いた新規創薬基盤の構築
課題番号
H21-生物資源・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
金村 米博(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター 先進医療研究開発部 再生医療研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 幸利(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター)
  • 佐藤 薫(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性てんかん患者に由来するヒトiPS細胞/神経幹細胞を樹立し神経細胞を作成し、てんかんモデル細胞としての有用性を検証し、抗てんかん薬開発過程に利用可能な新規生物資源の確立とそれを応用した新規創薬評価系の開発を目指す。
研究方法
難治性てんかん患者の臨床症状を解析し、内側側頭葉てんかんおよび新皮質てんかん患者から試料提供を受けた。各患者由来試料から、線維芽細胞および神経幹細胞を樹立し、ウイルスベクターを用いた遺伝子導入法にて、ヒトiPS細胞樹立した。樹立したてんかん患者由来ヒトiPS細胞に関して、細胞形態・増殖能評価、細胞表面マーカー分子発現様式評価、ゲノム・遺伝子発現評価、等の特性解析を実施し、さらにてんかん患者由来iPS細胞を神経幹細胞に分化誘導させた後、神経形態、突起進展、シナプス形成の特徴解析、機能蛋白質の発現解析、神経回路網形成能の評価、等の解析を実施した。
結果と考察
26名の患者から試料提供を受け、複数のてんかん患者由来細胞およびてんかん患者由来iPS細胞の樹立に成功し、てんかん患者由来iPS細胞から効率的に神経分化誘導を行い、神経幹細胞/前駆細胞および神経系細胞に分化させることが可能であることが確認されると同時に、てんかん患者由来iPS細胞から作成した神経幹細胞/前駆細胞を複数ライン樹立することに成功した。また、神経細胞およびヒトアストロサイトのアポトーシス測定系およびてんかん患者由来iPS細胞由来 neurosphereから分化したヒト神経細胞の細胞機能を評価するためのアッセイ系の構築に成功した。
結論
本研究課題の最大の目標であった、難治性てんかん患者に由来するヒトiPS細胞/神経幹細胞および神経細胞の作成に成功し、さらにそれら細胞を用いた評価系の開発の両方に成果を上げることができた。その結果、てんかん患者由来iPS細胞およびその分化細胞である神経幹細胞/前駆細胞は増幅可能な細胞であり、これら大量培養が可能な細胞を資源化して、大量培養後に神経系細胞へ分化誘導して使用する手法は、増殖能に劣るてんかん患者神経組織由来神経幹細胞を直接使用する従来の手法と比較して、てんかんモデル細胞として創薬研究に使用する手法としては大きな優位性を有することを明らかにし、てんかん患者由来iPS細胞を新規生物資源化することの実現可能性を証明できた。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201110007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
てんかん患者神経組織由来の神経幹細胞の大量培養および創薬研究への応用が技術的に困難であること、およびその逆にてんかん患者由来iPS細胞の樹立とその神経系細胞の作成が実現可能であることを証明した今回の研究成果から、抗てんかん薬開発プロセスで標準的に使用可能なヒト由来モデル神経細胞としてのiPS細胞由来細胞の優位性を示すことに成功し、iPS細胞作成技術の創薬研究への応用可能性を示す重要な成果を上げられたものと考える。
臨床的観点からの成果
罹患率が高く臨床神経学分野における重要疾患であるてんかんの研究において、難治症例の分子病態解明研究、さらには新規抗てんかん薬開発研究の両研究を支援し得る可能性を有する、新たなヒト由来モデル神経細胞作成の方法を示した今回の研究成果は、てんかん研究に大きなブレークスルーを与える可能性を秘め、関連領域に大きな学術的波及効果を与えると同時に、創薬研究が国内で加速されることで高い新薬開発ニーズの応え、国民健康と福祉の更なる向上に大きく貢献すると考える。
ガイドライン等の開発
本研究は、ヒトiPS細胞を用いた創薬研究に関わるガイドライン策定を最終目標に掲げるスーパー特区研究、「ヒトiPS細胞を用いた新規in vitro毒性評価系の構築」と連動して実施され、ヒトiPS細胞由来神経細胞を応用した創薬研究ガイドライン策定を支援する基礎データの取得に貢献できたものと考える。
その他行政的観点からの成果
本研究は、スーパー特区研究「ヒトiPS細胞を用いた新規in vitro毒性評価系の構築」と連動して実施され、神経疾患患者由来iPS細胞を神経治療薬創薬に応用するための具体的な方向性とその実現可能性を明らかにできたことで、ヒトiPS細胞を応用した神経治療薬創薬基盤の構築につながる成果を上げることに成功したと考えられ、スーパー特区研究事業の一層の加速に大きく貢献できたと考える。
その他のインパクト
本研究成果は、新聞紙面(読売新聞)に取り上げられたと同時に、その他、インターネット上における複数の情報サイトで取り上げられ、話題となった。いすれも本成果の可能性に注目しており、社会的にインパクトのある成果を発信できたものと考える。

発表件数

原著論文(和文)
39件
原著論文(英文等)
45件
その他論文(和文)
30件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
150件
学会発表(国際学会等)
25件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201110007Z