創薬および臨床試験の効率化に資するメタボリックシンドロームと心血管病のモデルラットの開発研究

文献情報

文献番号
201110004A
報告書区分
総括
研究課題名
創薬および臨床試験の効率化に資するメタボリックシンドロームと心血管病のモデルラットの開発研究
課題番号
H21-生物資源・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 規弘(国立国際医療研究センター 研究所・遺伝子診断治療開発研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 並河 徹(島根大学 医学部・実験病理学)
  • 福田 昇(日本大学 総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
9,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は(1)ヒトの動脈硬化性心血管病を探究する上でのげっ歯類の弱点とされてきたcholesteryl ester transfer protein(CETP)の欠損を補うべく、トランスジェニック(Tg)ラットを作成して、脂質代謝障害から動脈硬化への進展を模する新規モデル動物を開発すること、(2)メタボリック・シンドロームなどの動脈硬化リスクファクターの集積に関して、代表的な組み合わせパターンの疾患モデルラットを新たに開発すること、そして(3)これらを創薬および臨床試験の効率化に役立てるべく“心血管病評価用ラットパネル”として整備すること、を主たる目的とする。
研究方法
本研究の実施計画は大きく三つの部分から成る。一つ目は、高血圧自然発症ラット(SHR)にヒトCETPを導入したTgラットを作成・表現型解析する部分であり、二つ目は、同Tgラットも含めて、心血管病関連形質(動脈硬化リスクファクター形質と個々の臓器障害)を特徴的に有する、一連の近交系ラットから“心血管病評価用ラットパネル”を作成・整備する部分であり、三つ目は心血管病の治療法開発に向けた病態探究(モデル動物を活用した研究)の実践である。
結果と考察
1. ヒトCETP-Tgラットの作成・表現型解析:transgeneの導入に成功した系統が全部で5系統あり、そのうちの、3系統の繁殖に成功した。血中脂質レベルに関しては、導入されたcopy数にほぼ応じて総コレステロールが顕著に低下し、逆に中性脂肪が顕著に上昇していた。
2. “心血管病評価用ラットパネル”の整備:SHR系統より作成したコンジェニック系統のうち、染色体1番のストレス感受性、染色体3番の心肥大、染色体4番のメタボリック・シンドローム(代謝関連形質の集積)、染色体15番の脂質、等の臨床的評価を行った。
3. モデルラットでの心血管病の病態探究:心血管病のなかでも特に腎障害(高血圧性腎硬化症)に関して、先ず血圧影響の無い培養細胞(in vitro)実験系において補体C3の病因/病態的関与の検討を進めた。
結論
CETPのTgラットを開発し、ヒトの動脈硬化型脂質異常を呈することを確認した。SHR系統から、一連の特徴的な心血管病関連表現型を示すコンジェニック系統を開発し心血管病評価用ラットパネルとして整備した。高血圧性腎障害の病態改善に、補体C3阻害の治療的有用性を確証した。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201110004B
報告書区分
総合
研究課題名
創薬および臨床試験の効率化に資するメタボリックシンドロームと心血管病のモデルラットの開発研究
課題番号
H21-生物資源・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 規弘(国立国際医療研究センター 研究所・遺伝子診断治療開発研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 並河 徹(島根大学 医学部)
  • 福田 昇(日本大学 総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は(1)ヒトの動脈硬化性心血管病を探究する上でのげっ歯類の弱点とされてきたcholesteryl ester transfer protein(CETP)の欠損を補うべく、トランスジェニック(Tg)ラットを作成して、脂質代謝障害から動脈硬化への進展を模する新規モデル動物を開発すること、(2)メタボリック・シンドロームなどの動脈硬化リスクファクターの集積に関して、代表的な組み合わせパターンの疾患モデルラットを新たに開発すること、そして(3)これらを創薬および臨床試験の効率化に役立てるべく“心血管病評価用ラットパネル”として整備すること、を主たる目的とする。
研究方法
本研究の実施計画は大きく三つの部分から成る。一つ目は、高血圧自然発症ラット(SHR)にヒトCETPを導入したTgラットを作成・表現型解析する部分であり、二つ目は、同Tgラットも含めて、心血管病関連形質(動脈硬化リスクファクター形質と個々の臓器障害)を特徴的に有する、一連の近交系ラットから“心血管病評価用ラットパネル”を作成・整備する部分であり、三つ目は心血管病の治療法開発に向けた病態探究(モデル動物を活用した研究)の実践である。
結果と考察
1. ヒトCETP-Tgラットの作成・表現型解析:SHRへのtransgeneの導入に成功し、ヒトの動脈硬化型の脂質異常(HDLコレステロールの低下と中性脂肪)や脂肪肝、血圧上昇を認めた。
2. “心血管病評価用ラットパネル”の整備:SHR系統より一連のコンジェニック系統を作成し、ストレス感受性、心肥大、メタボリック・シンドローム(代謝関連形質の集積)、脂質異常、等の、元となる近交系ラットと比べて特徴的な心血管病関連表現型を示すモデルを開発した。
3. モデルラットでの心血管病の病態探究:高血圧性腎硬化症に関して、血圧影響の無い培養細胞(in vitro)及び個体(in vivo)の実験系において補体C3の病因/病態的関与の検討を進め、内因性異常としてC3の遺伝的過剰発現とそれに伴う細胞増殖が認められた。
結論
CETPのTgラットを開発し、ヒトの動脈硬化型脂質異常を呈することを確認した。SHR系統から、一連の特徴的な心血管病関連表現型を示すコンジェニック系統を開発し心血管病評価用ラットパネルとして整備した。高血圧性腎障害の病態改善に、補体C3阻害の治療的有用性を確証した。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201110004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ラット、マウスなどのげっ歯類は、しばしば心血管病の病態研究にモデル動物として使われてきたが、一般的に動脈硬化を生じにくい。その成因の一つとして知られるcholesteryl ester transfer protein (CETP)のtransgenicラットを今回開発できたことは、脂質代謝障害から動脈硬化への進展を模する新規モデル動物開発への道を開くものである。
臨床的観点からの成果
ヒトと全く同じとはいかなくても、個体レベルでの評価システムは、創薬シーズの探索および開発された薬剤候補化合物の安全性・治療効果の判定にとって、重要な研究ツールである。また、今回開発された脳卒中関連コンジェニック系統は、脳卒中の自然歴と薬物介入のtiming、機序を検討するうえで臨床的有用性が高い。
ガイドライン等の開発
近年、新たな機序の(HDL-Cを上昇させ且つLDL-Cを低下させる)脂質異常症治療薬としてCETP阻害薬が開発・発売された。最初に発売されたCETP阻害薬は、血圧上昇と共に内皮機能が低下し心血管事故が増えてしまったために中止されたという経緯があることから、新規に発売されるCETP阻害薬に関して、本モデルの知見も用いた指針の作成が期待される。
その他行政的観点からの成果
薬剤開発等に向けた先駆的研究の利便性向上という観点は言うまでもなく、臨床的命題のモデル動物でのシミュレーションが可能となることによる臨床試験の負担軽減という経済性の観点においても今後大きな社会的・行政的貢献が期待できる。
その他のインパクト
繁殖の利便性や遺伝子操作のし易さという点では、マウスが最も適しているものの、血圧等の生理学的評価の点ではラットの有用性が大きい。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
22件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takeuchi F, Yamamoto K, Katsuya T, et al.
Reevaluation of the association of seven candidate genes with blood pressure and hypertension: a replication study and meta-analysis with larger sample size.
Hypertens Res  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201110004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,500,000円
(2)補助金確定額
9,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,417,855円
人件費・謝金 787,561円
旅費 141,260円
その他 153,387円
間接経費 0円
合計 9,500,063円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-