文献情報
文献番号
201110002A
報告書区分
総括
研究課題名
精子幹細胞を用いた創薬モデルラット作成技術の開発
課題番号
H21-生物資源・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田中 敬(京都大学大学院 医学研究科 遺伝医学講座 分子遺伝学研究分野)
研究分担者(所属機関)
- 高島 誠司(京都大学大学院 医学研究科 遺伝医学講座 分子遺伝学研究分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
9,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究ではES細胞でなく、精子幹細胞に基づく新しいノックアウト技術による創薬モデルラット作成技術の開発を目的としている。精子幹細胞は精子形成の源となる細胞であり、一生を通じて精巣内で自己複製増殖により維持され、かつ分化して多数の精子を産生する。我々の研究グループは2003年にマウス精子幹細胞の長期培養系を確立し、さらに2006年に培養細胞(Germline Stem; GS細胞)に遺伝子導入した後、精巣内移植により精子へと分化させることで、ノックアウトマウスの作成に成功した。本研究ではこの技術をラットに展開し、ラットの精子幹細胞を遺伝子トラップとジーンターゲッティングにより遺伝子改変する技術の確立を目指した。
研究方法
本研究ではES細胞でなく精子幹細胞に基づく新しいノックアウト技術による創薬モデルラット作成技術の開発を提案した。ラット精子幹細胞の長期培養系を改善し、 遺伝子をランダムに標的とする遺伝子トラップ法、狙った遺伝子を改変する相同組換え法によりノックアウトラットの作成を試みた。
結果と考察
ラットGS細胞は遺伝子導入後の薬剤選択が困難であったが、培養液の組成の改変や低酸素下培養などを導入し、増殖速度の改善が認められた。
遺伝子トラップベクターを導入したGS細胞をヌードマウス精巣に移植した後、顕微授精を行って産仔を作成することに成功した。このヘテロ個体の交配により、ホモ遺伝子破壊ラットの作成に成功した。
ジーンターゲッティングに関しては、ラット由来のノックアウトベクターをラットGS細胞へ導入し、薬剤選択により146個のクローンを樹立した。PCRとサザンブロッティングにより相同組み換えクローンの同定に成功した。これらのクローンをヌードマウスおよびラットのレシピエント精巣に移植を行ったところ、コロニー形成が認められ、ドナー細胞由来の減数分裂像が認められた。
遺伝子トラップベクターを導入したGS細胞をヌードマウス精巣に移植した後、顕微授精を行って産仔を作成することに成功した。このヘテロ個体の交配により、ホモ遺伝子破壊ラットの作成に成功した。
ジーンターゲッティングに関しては、ラット由来のノックアウトベクターをラットGS細胞へ導入し、薬剤選択により146個のクローンを樹立した。PCRとサザンブロッティングにより相同組み換えクローンの同定に成功した。これらのクローンをヌードマウスおよびラットのレシピエント精巣に移植を行ったところ、コロニー形成が認められ、ドナー細胞由来の減数分裂像が認められた。
結論
本研究では遺伝子トラップ法についてはトラップクローンが得られ、マウス精巣への移植と顕微授精により遺伝子改変ラット個体を作製することができた。相同組換え法については、ターゲティング法により遺伝子欠損したラット精子幹細胞を作製することに成功したが、正常な産仔を得ることはできなかった。
今後の展開としては本研究で用いた遺伝子トラップ法を大規模に行い、トラップクローンのリストを公開することが可能である。公的バンクを整備してトラップクローンの提供や共同研究を行い、将来的には癌・生活習慣病・認知症など複雑な病態解析のため疾患モデルラットを必要とする研究者に生物資源を提供することも期待できる。
今後の展開としては本研究で用いた遺伝子トラップ法を大規模に行い、トラップクローンのリストを公開することが可能である。公的バンクを整備してトラップクローンの提供や共同研究を行い、将来的には癌・生活習慣病・認知症など複雑な病態解析のため疾患モデルラットを必要とする研究者に生物資源を提供することも期待できる。
公開日・更新日
公開日
2012-08-30
更新日
-