文献情報
文献番号
201110001A
報告書区分
総括
研究課題名
RMCE法による心血管傷害モデルの開発と核酸医薬標的分子の探索
課題番号
H21-生物資源・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
栗原 裕基(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 栗原 由紀子(東京大学 大学院医学系研究科)
- 西山 功一(東京大学 大学院医学系研究科)
- 富田 幸子(東京女子医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
9,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、マイクロRNA(miRNA)の病態生理学的意義が注目されている。本研究において我々は、エンドセリンA受容体(ETAR)遺伝子座を標的とするリコンビナーゼ依存性カセット交換(RMCE)を用いたマウス遺伝学的研究を基盤として、心筋細胞および血管平滑筋細胞におけるmiRNAの病態生理的役割の検証や標的分子の探索が可能なマウスモデルの確立を試みた。
研究方法
マウスES細胞におけるRMCEを用いて、ETAR遺伝子座にmiRNA(miR199a, miR214)を含む前駆体cDNA断片をノックインした。心筋傷害モデルは2ヶ月齢から4ヶ月齢マウスを用い、ドキソルビシン15mg/kg腹腔内投与による急性心筋傷害モデルを作成し、24時間後に遺伝子発現を、7日後に心筋組織を検討した。心臓形成の解析はβ-gal染色、in situハイブリダイゼーション、免疫染色、蛍光色素標識、胚組織移植、ニワトリ-ウズラ胚の作成などにより、細胞動態の解析は共焦点レーザー走査型顕微鏡とコンピューター解析ソフトを用いて行った。
結果と考察
(ⅰ)RMCEによりmiR199a+miR214ノックインマウスを作成し、循環器疾患の病態への関与を解析した。ドキソルビシン投与による心筋傷害モデルを作成したところ、ノックインマウスにおいて心筋層や血管周囲の炎症反応の軽減が認められ、炎症機転に伴うp21等の遺伝子誘導も抑制された。(ⅱ)ETAR発現心筋細胞が、心形成過程で流入路から上行して心室筋や心房筋に分化する特徴的な細胞系譜を示すこと、ETシグナルによるERK活性化を介して初期の心臓形成に寄与することを明らかにした。(ⅲ)血管系におけるETAR発現細胞の分布を解析し、血管平滑筋の他、腎臓における周皮細胞、傍糸球体細胞などでの発現を明らかにした。(ⅳ)本研究によるノックインマウスを用いたタイムラプスイメージングとコンピューター解析により、血管新生過程における新たな細胞動態を明らかにした。
結論
ノックインマウスにおける病態解析により、miR-199a, miR-214の2つのmiRNAの組織傷害に対する保護効果が示唆されるとともに、miRNAとその標的遺伝子を中心とした治療法の開発への基盤を提供した。細胞系譜や動態解析の結果は、発生学的見地から循環器疾患の病態解析に新しい視点をもたらすものと期待された。
公開日・更新日
公開日
2012-07-02
更新日
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