平衡覚障害の発症機序と病巣局在診断法に関する研究

文献情報

文献番号
199700907A
報告書区分
総括
研究課題名
平衡覚障害の発症機序と病巣局在診断法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
八木 聰明(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 馬場俊吉(日本医科大学)
  • 相原康孝(日本医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 感覚器障害及び免疫・アレルギー等研究事業(感覚器障害研究分野)
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
54,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平衡感覚器である半規管と耳石器の障害は、多くの場合一括されて考えられている。しかし、半規管は両側では3対、耳石器は2対存在する。従って、実際には一側だけ、半規管だけ、或いは耳石器だけといった病態が考えられる。また、一側の半規管が異なった程度に障害される可能性も決して少なくないはずであるし、そのような病態を考慮に入れなければ解釈できないような検査結果にも遭遇する。このような内耳の部分障害、すなわち内耳内の局在診断が可能であれば、当然その結果は治療にも反映されるはずである。そこで、本研究では、主として末梢前庭器の部分病態によって生じる平衡覚障害を解明しようとするものである。
研究方法
末梢前庭器の部分病態を解明する手段として、眼球運動(眼振)の三次元解析を用いる。そのために本研究では次に上げる研究方法を用いることにした。それらは大きく分類して、1.眼球運動記録系の確立、2.眼球運動三次元解析システムの完成、3.健常者および平衡覚障害者の眼球運動解析を通した病巣局在診断法の確立である。
結果と考察
本研究では、眼球運動三次元解析の手段として、眼球運動のビデオ画像を用いた方法を用いた。正確な眼球運動解析のためには、従って先ず明瞭な眼球運動のビデオ画像を得ることである。また、ビデオカメラと眼球の位置が多少でもずれると、それは大きな測定誤差になって現れるのでカメラは被験者に装着できる軽量なものでなくてはならない。また、明視下、暗所下どちらの状態でも明瞭な撮影が可能でなくてはならな。これらの点を解決するために、赤外線CCDカメラ付軽量ゴーグルを開発している。平成9年度にはその雛形が完成しつつあり、これを用いた実験を明年度に計画している。平成9年度には、記録系は既に完成している既存の撮影装置を用いた。
眼球運動三次元解析システムについては、ビデオ画像を画像認識技術によって解析する方法を外部委託業者とともに進めた。以前から用いていた解析システムに比べ、その精度や速度、或いは信頼度に関して大幅な改良のなされた解析システムの初期モデルが完成した。本年度は健常者および平衡覚障害者の眼球運動を解析を始め、結果の一部を昨年秋に行われた第56回日本平衡神経科学会で報告した。すなわち、耳石眼反射に関す研究、off vertical axis rotationによる眼球運動の解析に関する研究である。これらについては、現在も更に追及中で平成10年度には、論文としてまとめる予定である。また、このシステムの基本的な内容について「新しい眼球運動三次元解析システムについて」と題した論文を耳鼻咽喉科・頭頚部外科誌に投稿し、現在印刷中である。
健常者および平衡覚障害者の眼球運動解析を進めた。健常者については同意を得たボランティアを対象に漸次検討をすすめており、その解析結果を前述したようにまとめている。一方、平衡覚障害者の眼球運動(眼振)は、めまい発作時を捉える必要があり、症例の蓄積が必要である。現在、メニエール病、良性発作性頭位眩暈症、前庭神経炎、突発性難聴、迷路瘻孔などの主として内耳疾患症例のめまい発作時の眼振を記録・解析し、その結果を蓄積している。これらの症例が十分な数になれば、内耳内病巣局在が明瞭になるもとの思われる。
結論
内耳病態の局在診断を行う手段として、ビデオ画像を用いた眼球運動三次元解析法を採用した。その解析のための新しいシステムを外部委託業者と共同して開発し、その初期モデルが完成した。現在はその新システムの検証を行っている。
明瞭で正確な眼球運動を記録するために、赤外線CCDカメラ付ゴーグル(明視下用、暗視下用)を作成し、その雛形が完成した。現在これを用いて眼球運動画像を撮影し、実用的な状態にするための検討を行っている。
健常者を用いた検討は順調に進行した。前庭刺激による眼球運動解析がなされ、内耳刺激とくに耳石器刺激による眼球運動の検討が大幅に進歩した。また、病的例の自発眼振の解析も漸次進んでいるが、内耳内局在病巣に関する結論を出すには更に多くの症例の蓄積が必要である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)