アポC3をターゲットとした高中性脂肪血症、動脈硬化症に対する革新的核酸医薬の開発

文献情報

文献番号
201109004A
報告書区分
総括
研究課題名
アポC3をターゲットとした高中性脂肪血症、動脈硬化症に対する革新的核酸医薬の開発
課題番号
H23-政策探索・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
斯波 真理子(独立行政法人国立循環器病研究センター 病態代謝部)
研究分担者(所属機関)
  • 小比賀 聡(大阪大学 薬学部 )
  • 柴田 雅朗(大阪保健医療大学 保健医療学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬探索研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の死因の4分の1は心および脳血管疾患で占められており、これらの疾患の予防法や治療法を開発することは超高齢化社会における喫緊の課題である。強力なLDL-C低下作用を有するスタチンが臨床の場で使用される現在、心血管疾患の残りのリスクである食後高TG血症などのリスクに対して、分子を標的とした特異的な治療法の開発が待望されている。アポC3は、RLPの代謝に関わり血清TG値上昇作用を有すること、さらに最近では動脈硬化の発症や進展に関わっていることが明らかにされてきた。本研究では、高TG血症および動脈硬化発症のキーとなるアポC3分子を標的として、動脈硬化症の予防および治療を目的とした新しい核酸医薬を開発することを狙いとする。
研究方法
ApoC3に対するアンチセンス(AS)は、条件を満たす配列候補を10種類選定し、プロトタイプBNAおよびBNANCを搭載したものを合成した。マウス培養肝細胞を用いてin vitro機能評価を行い、マウスに対する腹腔内投与にてin vivo機能評価を行った。ApoC3 Real time RT-PCR、ウェスタンブロットにてmRNA及びタンパク質の発現量を定量した。安全性検討としては、投与後マウスの血中逸脱酵素を測定するとともに、肝臓の病理組織学的観察を行った。
結果と考察
作成した配列のBNA、BNANC搭載アンチセンスは、in vitroにていずれも高い活性を示した。従来のAS 20 mg/kgを5回投与後では肝臓においてApoC3 mRNAの発現量は20%、血清ApoC3蛋白量は変化無し、血清TG値は60%の低下を認めたが、プロトタイプBNA搭載AS投与によっては、それぞれ約80%、72%、88%の低下を認めた。BNA搭載ASの効果について用量依存性を調べたところ、1 mg/kg投与によっても血清中ApoC3量の低下を認めた。BNA搭載AS投与によって、高用量投与群に血清AST、ALT値の上昇を認めたが、BUNは変化を認めなかった。高容量投与群において病理組織学的変化を認めた。以上より、BNA搭載ASは少量の投与においても効果を示すこと、高用量にて毒性を持つ可能性が示唆された。次世代ASであるBNANC搭載ASは、有効であり毒性を示さないデータを得ている。
結論
BNA搭載AS投与は、高脂血症モデルマウスに対して有効であり、通常用量では毒性を示さなかった。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201109004Z