HIVの宿主因子依存性を逆利用したエイズ発症機構の解明研究

文献情報

文献番号
201108024A
報告書区分
総括
研究課題名
HIVの宿主因子依存性を逆利用したエイズ発症機構の解明研究
課題番号
H22-政策創薬・一般-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
日吉 真照(熊本大学 エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV Nefはエイズ発症に必須であることが知られている。しかし、「何故Nefが必須なのか、どの機能が重要か、それらの機能にどんな宿主因子が必要か」などの根本的な点は未解明である。本研究では、Nefが複数の宿主因子を利用する性質を逆手に取ったユニークなアプローチで、これらの課題解決のための新たなツールと視点を提供する
研究方法
最近我々が独自に同定した化合物2CとNefの結合様式を予測するために化合物2C-Nefドッキングモデルを作製した。次に、化合物2CのNef機能の抑制効果(HIVウイルスの感染力と複製の抑制効果、それ以外のNef機能に対する効果)を調べた。そのために、化合物2cの存在下、非存在下で培養した細胞で作製したウイルスをインディケーター細胞に感染させて感染力を比較し、その時のウイルスの複製量を計測した。さらに。今回、Nefの機能を担う新規の宿主因子の同定も試みた。具体的には、Nef-Flag-Strep融合タンパク質を293細胞で発現させ、その細胞抽出液から精製しゲルに結合させた。その後、化合物2Cを用いてFlag抗体アフィニティゲルからタンパク質を抽出してSDS-PAGEを行い、銀染色によって各サンプルで検出されるタンパク質を比較した。
結果と考察
化合物2cとNefのドッキングモデルを作製したところ、化合物2cはNefのPxxPモチーフに直接結合することが予想された。また、化合物2cはウイルスの感染力と複製を低下させることが明らかになった。このことから、化合物2cはNefをターゲットとした新規の抗HIV薬の候補となることが期待させる。さらに、化合物2cを用いてNefと結合する宿主因子の同定を試みたところ、3種類の候補タンパク質を検出することができた。化合物2cはNefの重要なPxxPモチーフに結合することから、これらのタンパク質はPxxPモチーフに結合してNef機能発現に重要なタンパク質である可能性がある。
結論
今回、我々が独自に同定した化合物2cがHIVウイルスの感染力と複製を強く抑制することが明らかになった。今後、化合物2cを基に改良を行なうことで、新たな作用機序を持つ抗HIV薬剤の開発に貢献することが期待される。また、化合物2cをプローブとして用いて、Nefの機能発現に重要な宿主タンパク質の検索を行なったところ、3種類の候補タンパク質を検出することができた。今後、これらのタンパク質を同定することで、Nef機能発現の分子機構の解明に貢献できると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201108024Z