新規標的に対する小分子化合物を基盤とした抗HIV化学療法剤の開発

文献情報

文献番号
201108013A
報告書区分
総括
研究課題名
新規標的に対する小分子化合物を基盤とした抗HIV化学療法剤の開発
課題番号
H22-政策創薬・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 雅雄(京都大学 ウイルス研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 信孝(京都大学大学院薬学研究科)
  • 大石 真也(京都大学大学院薬学研究科)
  • 村上 努(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 嶋田 泰宏(富士フィルム株式会社医薬品・ヘルスケア研究所)
  • 谷口 雅彦(富士フィルム株式会社医薬品・ヘルスケア研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染症に対する多剤併用療法は、HIV感染者の予後改善に大きく寄与している。しかしながら、長期服薬による薬剤耐性HIVの出現が大きな問題となっている。本研究課題では、新規標的に対する小分子化合物を基盤として既存薬剤耐性HIVの制御が可能な抗HIV化学療法剤の開発を目的とした。
研究方法
新規抗HIV化合物の構造活性相関研究では、アミジン環部位の修飾効果について検討した。得られた誘導体の抗HIV活性はMAGI法で評価した。抗ウイルススペクトル解析では、対象ウイルスとして、A型インフルエンザウイルス(FluA)、アデノウイルス(Ad)、ヒト単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)を用いた。新規CXCR4阻害剤の研究では、CXCR4阻害剤耐性HIV-1由来のEnv組換えウイルスを用いてコレセプター利用能を検討した。ウイルス感染5日目の培養上清を回収し、p24濃度を測定することでコレセプター利用性を解析した。
結果と考察
新規抗HIV化合物に関して、アミジン環の構造活性相関研究では、メチル基を導入した誘導体や、六員環の代わりに七員環としたアミジンにおいて活性の向上が認められた。この結果は、アミジン部位を五員環にすると活性に重要なベンゾチアジンイミン骨格に歪みが生じることで活性を消失させる一方で、六・七員環では歪みを生じないことを示唆している。また、これらの化合物はFluAやHSV-2の複製を抑制したが、Adの感染は抑制しなかった。Adウイルス以外はエンベロープウイルスであることから、本化合物はウイルスエンベロープを標的としている可能性が示唆された。新規CXCR4阻害剤の研究に関して、CXCR4阻害剤耐性HIVから得られたEnv組換えウイルスは、CD4/CXCR4発現細胞でのみ感染・複製が認められ、CD4/CCR5発現細胞では複製不能であった。以上の結果は、CXCR4阻害剤耐性HIV-1はコレセプター利用性の変化を引き起こさずに耐性化したことを示している。
結論
新規抗HIV化合物の構造最適化により、リード化合物に比べ、4倍強い活性を示す誘導体を得た。また、抗ウイルススペクトル解析により、ウイルスエンベロープあるいは関連分子/機構が標的である可能性が示された。CXCR4拮抗剤に関する研究では、コレセプター利用性解析により、CXCR4阻害剤耐性HIVの性質に関する情報が得られた。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201108013Z