国内未承認薬の使用も含めた熱帯病・寄生虫症の最適な診療体制の確立

文献情報

文献番号
201108011A
報告書区分
総括
研究課題名
国内未承認薬の使用も含めた熱帯病・寄生虫症の最適な診療体制の確立
課題番号
H22-政策創薬・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
木村 幹男(結核予防会新山手病院 診療技術部)
研究分担者(所属機関)
  • 春木 宏介(獨協医科大学 越谷病院 臨床検査部)
  • 古賀 道子(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター 感染症分野)
  • 太田 伸生(東京医科歯科大学 国際環境寄生虫病学分野)
  • 坂本 知昭(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
  • 大前 比呂思(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 加藤 康幸(国立国際医療研究センター 国際疾病センター)
  • 丸山 治彦(宮崎大学医学部 感染症学講座 寄生虫学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
20,309,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、国内未承認の熱帯病・寄生虫症治療薬を海外から導入し、臨床研究として投与し、それらのデータをまとめて今後の適切な治療のために生かすことを目指す。その目的のため、国内における寄生虫症の動向を把握し、治療の前に必要な診断について、新規かつ有用な方法の開発や検討を行い、流行地での治療成績の検討、動物モデルでの薬剤作用機序の検討など、多方面からのアプローチも行う。
研究方法
薬剤使用は、「臨床研究に関する倫理指針」を遵守して確立した全国的な体制の元で行った。本年度の薬剤の輸入、使用状況、副作用報告などをまとめ、パロモマイシン使用症例につき治療報告書をもとに、主に安全性を中心に解析した。また、同薬剤の品質試験に役立つことを目指し、アミノグリコシド系抗菌薬の一斉分析の開発を試みた。マラリア迅速診断キットを関係機関に配布して使用を依頼し、宮崎大学では多くの寄生虫診断依頼に対し、主に血清抗体測定を行った。また、幼虫移行症の虫種鑑別のため、組換えタンパク質を作成して血清との反応を検討し、阻害試験によって組換え抗原の特異的エピトープについて検討した。カンボジアで主にメコン住血吸虫症に対する薬剤の効果を検討し、住血吸虫感染マウスを作成してN-89の作用機序を検討した。また、研究班ホームページでの適切な薬剤情報のあり方を検討した。
結果と考察
本年度も抗マラリア薬の使用が多く、抗赤痢アメーバ薬パロモマイシンの使用は少なくなる傾向が見られた。薬剤使用症例の多くで効果が見られ、安全性について特別な問題は報告されなかった。アミノグリコシド系抗菌薬の一斉分析法を確立したので、パロモマイシンの品質検査に進歩が期待される。パロモマイシンの安全性と有効性に特別な問題はなく、我が国への導入が望ましいと思われた。マラリア迅速診断キットは優れたものであり、国内承認されて、顕微鏡法の補助手段として使われることが望まれる。幼虫移行症では二つの動物回虫由来組換え抗原を用いると、虫種鑑別可能例が増え、ブタ回虫由来組換え抗原は特異的エピトープを有していた。プラジカンテルによるメコン住血吸虫症の治療では、単回投与で効かなくても同じ総量の2分割投与で効果が見られた。N-89の抗住血吸虫作用は、ヘモグロビン分解吸収の阻害によると推定された。研究班ホームページの薬剤情報をより適切な形で更新するため、その原稿をほぼ完成させた。
結論
本年度も、国内未承認薬の使用は効果的かつ安全に行われ、この分野での診断や治療の発展に資する研究成果が得られた。国際化時代における国民の健康を確保するために、今後も研究を進展させる必要がある。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201108011Z