肺癌における抗癌剤抵抗性を誘発する因子の阻害剤探索のためのバイオ計測系の開発

文献情報

文献番号
201108010A
報告書区分
総括
研究課題名
肺癌における抗癌剤抵抗性を誘発する因子の阻害剤探索のためのバイオ計測系の開発
課題番号
H22-政策創薬・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
太田 力(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 多層オミックス・バイオインフォーマティクス分野)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 美徳(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,944,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肺癌の約8割を占める非小細胞肺癌に対する既存の抗癌剤の効果は未だ不十分であり、その原因に関してはよくわかっていなかった。最近、我々は転写因子Nrf2の異常活性化によって薬剤解毒酵素や薬剤排出ポンプ蛋白質の遺伝子が過剰発現され、抗癌剤抵抗性を示すことを見出した。従って、肺癌の抗癌剤抵抗性に関与する蛋白質の過剰発現を直接誘導している転写因子を分子標的とした阻害物質が開発出来れば、この阻害剤を補助薬として使用することで効果的な化学療法の実現と肺癌の予後延長および死亡率減少が期待される。そこで、本研究では肺癌の抗癌剤抵抗性に直接関与する転写因子Nrf2を分子標的とした阻害物質探索を製薬会社との共同開発を可能にするバイオ計測系の構築を目的とした。
研究方法
昨年度、転写因子Nrf2の異常活性化癌細胞株に、転写因子Nrf2の転写活性化能を計測できる遺伝子を導入し、短期間で転写因子Nrf2を分子標的とした阻害物質探索を行うことが可能と思われる細胞株の作成を行った。そこで、この細胞株を用いて、阻害効果のある物質がスクリーニングできるのか検証を行った。低分子化合物をそれぞれ培地に混ぜ、培地中のルシフェラーゼ活性を測定した。また、転写因子Nrf2異常活性化肺癌細胞株をマウスの皮下に導入し、移植可能か検証した。
結果と考察
転写因子Nrf2の転写活性化能をルシフェラーゼ活性を計測することで判定可能と思われる細胞株を用いて、細胞細胞毒性が低く、ルシフェラーゼ活性を低下させる化合物が見出された。次に、これら化合物を、転写因子Nrf2の異常活性化癌細胞株に作用させ、転写因子Nrf2の標的遺伝子の発現を抑制するのか検証した。その結果、これら化合物の一部に、転写因子Nrf2の標的遺伝子の発現を抑制する活性があることがわかった。また、転写因子Nrf2異常活性化肺癌細胞株3株をマウスの皮下に導入し、移植可能か検証したところ、1株は移植腫瘍が形成されたが、残り2株は形成されなかった。
結論
我々は転写因子Nrf2の転写活性化能をルシフェラーゼ活性を計測することで判定可能な細胞株の樹立に成功した。今後、この細胞株を用いた転写因子Nrf2の転写活性阻害物質の探索が可能と思われる。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201108010Z